東京・渋谷区:条例改正 公開請求制限に「時代に逆行」批判
毎日新聞 2013年10月28日 東京朝刊
そもそも、渋谷区の情報公開請求やコピーの交付枚数は増えているのか。区によると、昨年度の請求件数は167件とピーク時(09年度)の285件に比べ約6割に減少。交付枚数も1万9246枚と08年度の2万8986枚に比べ大きく減っている。区文書課は「07年以前に比べればまだ多い」と言うが、減少傾向の中での改正について説得力がある説明とは言えず、「特定の個人の動きを封じる目的があるのではないか」との臆測を呼んでいる。
特定の個人とは、市民団体「渋谷オンブズマン」出身の堀切稔仁(ねんじん)区議(無所属)だ。堀切区議は11年4月の区議選で初当選すると、情報公開請求を頻繁に利用して区政を追及し始めた。これに対し11年8月、区長からの要請を受けた前田和茂・区議会議長が各会派の幹事長に対し情報公開請求を控えるよう申し入れた。「議員は情報公開ではなく、議会の調査権で対応すべきだ」とのスタンスだ。堀切区議は取材に対し「他の議員には提供する情報を私には出さない。情報公開を使わなければ、区を監視できない」と反論している。
区民からも異論が出ている。自営業、渥美昌純(まさずみ)さん(40)もその一人だ。
渥美さんは9月13日、区長から審議会への諮問内容など改正案提出の根拠となった文書について、情報公開請求をした。規定では15日以内に開示するはずなのに、「事務処理に時間を要する」との理由で決定期間を延長され、開示決定を受けたのは条例が可決された3日後の10月11日。しかも、開示された約400枚の文書のほとんどは、各会派の幹事長が協議する「区議会幹事長会」の議事録や、審議会に区が提出した資料だった。渥美さんは「値上げで迷惑するのは区民。その理由があるのかないのか調べるために開示請求したのに、改正が決まるまで文書を出さないということか。納得できない」と不信感を募らせている。