今年のジャイアンツの開幕戦の視聴率は、去年の17.9パーセントを下回る13.5パーセントだったとかで、野球人気の低迷がますますひどくなったと騒がれている。このぶんだと、年間視聴率も、過去最低を更新した去年の12.2パーセントをさらに下回るのは確実と思われるが、ぼくはすこしも驚いていない。
去年のストライキ騒動以来、球団側、選手側ともに、口をひらけば、ファンのため、ファンのためといって、球場の観客席を改造したり、キャンプでサイン会をしたりして、ファンに顔を向けていることを示そうとしたが、結局効果がなかったのである。それも当然のことで、オフの間にプロ野球構造改革協議会をはじめとして、様々な会議がずいぶんおこなわれたが、ドラフトの完全ウエーバー化という問題ひとつとっても、球界はひとつにまとまれなかった。ばかりか、野球そのものをどう魅力的にするかということについては検討されなかった。ファンはバカではない。そうした経緯を見ていて、結局何も変わらないと思ったのだろう。
しかし、球界全体が一致団結し、総力をあげて試合時間を30分短縮すると宣言していたら、どうだったろう。高目のストライクゾーンを広げて試合時間の短縮を図ったのは2002年だったが、わずかに効果があったのは2年だけで、去年はすっかりもとに戻って、セ・リーグが3時間20分、パ・リーグが3時間29分と、ともに過去最長を記録した。どんなに気が長くても、そういう試合を見るのはもう限界なのである。
なぜ限界かを示すのに格好のデータがある。平均試合時間が2時間30分程度だった1967年のある試合の所要時間を、ストップウオッチで実測して分析したものだ。
それによれば、2時間39分の試合時間のうち、投球と投球の合い間が一番長くて1時間25分31秒(そのうち、打者が打席をはずしていた時間が25分11秒)。攻守交替に要した時間が34分36秒。ボールデッドになっていた状態が5分19秒。そして、打者が打ち、野手がそのボールを処理するのに要した時間が、全体の5分の1の33分。つまり5分の4の約2時間は、何もおこなわれない時間だった。
では、当時より平均で1時間ちかく試合時間が延びたいまは、どの部分が延びたということになるのだが、野球は昔も今も9イニングで、攻撃のルールも変わっていないのだから、打球の処理に要する時間がそんなに増えたとは考えにくい。ようするに、何もおこなわれない時間が1時間ちかく増えたのである。その原因はいくらでも思いつくが、イニングごとの投手交代、バッテリー間の複雑なサイン交換、ピッチャーのひんぱんな投球板外し打者の打席外し、それに無意味な牽制球の多さなどをあげれば足りるだろう。つまり、われわれは、3時間ちかくの試合時間のほとんどはそういうことを見せられているのである。やるほうはそれも野球のうちだというのだろうが、見せられるほうはたまったものではない。
ファンのためというのは、観客席の改造やサイン会も悪いことだとは思わないが、いい商品、つまり無駄のないキビキビした試合を提供することではないのか。そうすれば野球は再び輝きを取り戻し、ファンも帰ってくると、20年来考えているのだが、ぼくは野球界の人間でもコミッショナーでもないので、どうにもならない。そうして今年も、開幕から3時間半を越える試合が連日つづいている。
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