第27話 楽土
「なんなのだ、あの御子はっ!」
ズーグは休憩のためにあてがわれたテントに入るなり、罵声を上げた。牙をむき、肩を激しく上下させて荒い息をつくその様は、まさに怒れる猛獣そのものである。
それには氏族の同胞たちも恐れをなして、遠巻きに傍観するだけであった。
そんな同胞たちの中から、蜜柑色の毛のゾアンが進み出た。屈強な男たちの中にあって、頭ふたつ分は小さいそのゾアンは、鎧の胸元をわずかに膨らませているところから少女のようである。
「叔父上! 落ち着いてください」
恐れることなく張り上げられた少女の声に、ズーグの狂乱がピタリと止まった。
「シシュルか」
シシュルと呼ばれた少女の名前は、クラガ・ブヌカ・シシュル。
ズーグの姪にあたる少女だ。
歳の離れた姉の子供であり、ズーグとは8歳しか違わない。そのため、ズーグは姪と言うより妹のように接している少女である。
「母上が申しておりました。叔父上は族長となり、その責務から難しく考えるようになりましたが、根は単純な無骨者。すぐにぼろを出すだろうから、そのときは私が叱ってやれと」
幼い頃は歳の離れた姉が母親代わりであったズーグは、いまだに姉には頭が上がらない。その姉の言葉を聞かされ、ズーグはぴしゃりと自分の顔を叩いた。
「まったく、姉上にはかなわぬわ」
ズーグは、その場にどかっと腰を下ろした。
すぐさま同胞のひとりが、あらかじめ用意されていたお茶を淹れてズーグに差し出す。ズーグはそれを一息に飲むと、いまだに自分の中で荒れ狂う気持ちを吐き出すように、大きなため息を洩らした。
そうしてようやく落ち着いたズーグは、シシュルに問いかける。
「おまえから見て、あいつはどうだった?」
「余興とはいえ、さすが叔父上に勝った戦士。遠目でも、その強さをひしひしと感じました」
「ガラムのことではないわ」
嫌な思い出を掘り起こされ、ズーグは不機嫌になる。
「では、誰のことでしょうか?」
「あの、ソーマとかいう人間の小僧のことだ」
「取るに足りません。あのような者を重用するガラム殿の考えが理解できません。ましてや、『臍下の君』とするなど狂気の沙汰です!」
予想通りの反応に、ズーグは微笑を洩らす。
「皆、おまえの考えと似たり寄ったりだろう。おまえの言うとおり、あやつは取るに足らぬ凡夫にしか見えぬ。だが、それをガラムは重用しようとし、御子は『臍下の君』にした。これは、ただならぬことだ」
ズーグはどこか遠い目をした。
「シシュルよ。かつて、俺が同胞たちの反対を押し切り、村を木の壁で覆ったであろう」
シシュルはうなずいた。
それは、まだズーグが族長となって間もない頃の話である。
突如ズーグは近くの山から木を切りだし、それをもって高い防壁を村の周りに築くと言ったのだ。
もともと平原の民であるゾアンは、村の周りを壁で覆われることに拒否感が強く、大きな反対が巻き起こった。下手をすればズーグは族長の座から引きずりおろされかねなかったところを嫁いでいた姉が働きかけ、夫の家がズーグの支持に回ったことで事なきを得たのである。
「誇り高きゾアンが人間の真似事をするのかと、さんざん叩かれたものだ」
当時のことを思い出し、苦い笑いを浮かべた。
「俺はこのままではゾアンは人間に滅ぼされると考えている」
「叔父上……!」
一族の命運を預かる族長だけに、その言葉は軽いものではない。
「ゾアンが滅ぼされないためには、俺たちは変わらねばならぬ! 古いゾアンの戦い方を捨て、新しいものを学ばねばならぬ! 変わらねばならぬ! たとえ、それが人間の戦い方であろうとも、だ!」
それが村の周りに防壁を築いた理由であった。
しかし、ズーグは知らなかったが、それはかつて焼き払われた山を目にしたガラムが口にした言葉と酷似していた。
「ゾアンの誇りに拘泥し、変化を恐れる他の氏族など当てにはならん! 俺と俺の〈爪の氏族〉こそが、すべてのゾアンを束ねて人間を打ち払い、父祖なる地にゾアンの楽土を築き上げるのだ!」
ズーグは、顔の前まで持ち上げた右の拳をギュッと握りしめる。
そこに彼だけに見える何かを掴むかのように。
◆◇◆◇◆
「まさか、あれほどの騒ぎになるとは思わなかった」
反省しているどころか、楽しげに言うシェムルに、ガラムは頭が痛くなってきた。
「あの……ガラムさん。知らなかったんですが、なんだか大変なことになってしまって、すみませんでした」
ガラムに向けて、蒼馬は深々と頭を下げる。
まるで、恋人の父親に結婚の承諾をもらいに行く男の気分だ。まさかこの年齢で、こんな体験ができるとは、運命とはわからないものだと、つい悟ったようなことを思い浮かべてしまう。
しかし、それに対してガラムはあっさりと返す。
「いや。ソーマが謝ることではない」
「そうだ、そうだ。謝ることではないぞ!」
そうシェムルが茶々を入れるのに、ガラムはガッと牙をむいて威嚇する。
「ソーマが『落とし子』だということは聞いている。『臍下の君』が何であるかすら知らなかっただろう。それを言いだしたのは、この馬鹿からだということはわかりきっている」
馬鹿と言われ、再び食って掛かろうとするシェムルの前に、お婆様が割って入る。
「しかし、ガラムよ。決して悪いことばかりではないぞ」
「どういうことだ、お婆様?」
「シェムルは寝小便たれとはいえ、神の恩寵に与る御子じゃ。これを利用しない手はない」
それに「寝小便たれは余計だ!」と文句を言うシェムルをお婆様は無視する。
「わしに良い考えがある。すでに手を打っておいたので、もう間もなく来る頃じゃろ」
そこにタイミングよく、部屋の入り口の覆いの向こうから、品の良さそうな小さな咳払いが聞こえてきた。
「おお。お待ちしておりましたぞ。ささ、中にお入りくだされ」
お婆様の許しを得て入ってきたのは、〈目の氏族〉の巫女頭の妹シュヌパだった。
「これはシュヌパ様」
ガラムは居住まいを正すと、シュヌパに頭を下げる。
「いったい、どのような御用で? もしや、何か不作法でもございましたでしょうか?」
「いえ。共の者たちは、いずれも〈牙の氏族〉の方々のおもてなしにはいたく感謝しております。ここには、お姉様に呼ばれて参りました」
皆の視線を集めたお婆様は、ニカッと笑った。
「まずは、シュヌパ様にシェムルの刻印を確認していただきたいのじゃよ」
それだけでシュヌパはお婆様の意図を察し、ぱっと顔をほころばせる。
「なるほど。よろしゅうございます。――御子さま。恐れ入りますが、刻印を確認させていただきます」
「ああ。かまわないぞ」
シェムルはその場で胸鎧を脱ごうとする。
「ほれ、男どもは後ろを向いていろ!」
お婆様に牙をむいて威嚇され、蒼馬とガラムは慌てて後ろを向く。
「では、御子さま。失礼いたします」
シュヌパはそう断ってから、シェムルの左の乳房の毛をかき分け、刻印があることを確認する。
「確かに、拝見させていただきました。間違いなく、シェムルさまは御子でいらっしゃいます」
それに満足げに何度もうなずいたお婆様は、さらにシュヌパに頼んだ。
「では、シュヌパ様。もうひとつの刻印を確認していただきたい」
「もうひとつ、ですか? どなたか、新しい御子が選ばれましたのでしょうか?」
「言うより見てもらった方が早いじゃろう。ソーマ、その鉢巻を外してくれ」
シェムルが鎧を着なおしたのを確認してから、向き直っていた蒼馬はわずかに躊躇したが、お婆様に言われた通り、鉢巻を外した。
そのとたん、シュヌパの両目がカッと見開いた。
「まさか、これは……!」
ぶるぶると震える手で、蒼馬の額にかかる前髪を払いのけて額に手を添えると、わずかな偽りも見逃すまいとでもいうように、刻印を凝視する。
「アウラ! マグルナ=アウラ! マグルナ=アウラ!」
シュヌパは、悲鳴のような声をあげた。
「……やはり、間違いではなかったか」
そのお婆様の声にシュヌパは我に返ると、自分の晒した醜態に恥じ入る。
「大変失礼をいたしました。特に、アウラの御子さまに働きたる無礼。伏してお詫びいたします」
シュヌパは膝をついたまま下がると、その場に身体を投げ出すようにしてひれ伏す。それにかえって蒼馬は慌てた。
「やめてください。僕は何とも思っていませんから!」
「アウラの御子さまの寛大なお心に感謝いたします」
ようやく顔を上げたシュヌパは、悪戯っぽい表情を作るとお婆様をなじる。
「お姉様。最初から、私を巻き込むつもりでしたのね」
「はて? 何のことじゃろう」
空っとぼけるお婆様に、シュヌパは小さく笑いをこぼした。
「わかりました、お姉様。私ども〈目の氏族〉は、アウラの御子さまと〈牙の氏族〉を支持いたしましょう」
「おお! それは本当ですか?!」
シュヌパの思わぬ申し出に、ガラムは喜びの声を上げた。
祭祀をつかさどる〈目の氏族〉が支持に回ってくれたことは心強い。
「獣の神の御子が、アウラの御子を『臍下の君』とする。これも運命なのでしょう。運命を見守る〈目の氏族〉の巫女のひとりとして、すべてを見届けさせていただきたいと思います」
「僕からも感謝いたします」
そう言ってシュヌパに深々と頭を下げてお礼を言う蒼馬をシェムルは満足げに見つめる。それから左の手のひらに、右の拳をパシンッと当てる。
「これで、残るは〈たてがみの氏族〉と〈爪の氏族〉だな」
「そのことですが、バヌカ坊やに関しては……」ちらりとシェムルを見やる。「御子さまから一言声をおかけすれば十分でしょう」
「そんなことでいいのか?」
真顔で不思議がるシェムルに、シュヌパは苦笑いを浮かべる。
あれほど露骨に自分を売り込んでいたのに、まったく意識されていなかったバヌカのことが、少し哀れであった。
「そうなると、問題は〈爪の氏族〉とズーグということになるな」
あの粗暴な分からず屋をどうやって説き伏せればいいのか考えると、ガラムは眉間にしわが寄らずにはいられなかった。
「説得より、《猛き牙》が決闘でも申し込んで、叩きのめして言うことを聞かせた方が早いのではないか?」
シェムルが言うように、ゾアンの戦士が意見の対立を起こしたときは、決闘の勝敗によって片を付けることは、ままあることだ。
しかし、ガラムは首を横に振った。
「あいつを相手に、必ず勝つ自信はないぞ、《気高き牙》」
かつての余興のように、山刀の技量を競うならばともかく、決闘ともなればズーグはありとあらゆる手を使ってくるだろう。それに勝つことは至難の業だ。
「まったく! あの粗暴な分からず屋を言いくるめる方法はないものか」
シェムルの言葉に、その場にいるゾアンたちは一様に黙り込んだ。
しかし、その中にあってひとり蒼馬だけは別のことが気になっていた。
さんざん迷ったが、ここはみんなの知恵を借りるために、おずおずと自分が感じたことを言った。
「ズーグって人は、なんだか聞いていたのとずいぶんと違う気がします」
ガラムやシェムルたちから話を聞く限りでは、ズーグは後先考えない粗暴な男と言うものだった。
ところが蒼馬には、自分が紹介されたときに真っ先に立ち上がって糾弾したバヌカの方が、よっぽど単細胞に見えた。
それに比べてズーグは驚いてはいたが、蒼馬だけではなく、他の氏族がどう反応するか確認しているように見えたのだ。
さらにズーグは本当に怒りにまかせて席を立ったにしては、ガラムに呼び止められただけで足を止めるものなのか疑問に感じる。
本当に怒り狂っていたならば、ガラムが呼び止めたとしても取り合わずに立ち去るのではないだろうか。
また、たとえ足を止めたにしろ、その後にガラムのみならずその場にいた全員に向けて訴えかけたことも、落ち着いて考えると胡散臭く思えた。
「しかし、あのズーグが、そこまで考えているものか?」
そう言って苦笑するガラムをシュヌパがいさめる。
「ズーグ坊やは、確かに自分の力に頼る粗暴な子です。ですが、ひとつの氏族を預かる族長となれば、その重責から粗暴なままではいられません。ガラム坊やも、そう思われるでしょ?」
かつて、ガジェタが村を取り戻そうと強硬に主張したとき、族長の責務の重さを語ったことがあるガラムは何も言えなかった。
背負った責任の重さは人を成長させると言うことをガラムは身をもって知っていたのだ。
族長になってからは、常に氏族のことを考えていなければならない。おのずとひとりの戦士として戦っていたときより視野が広がり、先を見るようになっていた。
そうなった今にして思えば、族長だった父親にことあるごとに人間を蹴散らそうと迫っていた自分が、目先ばかりに囚われていた愚か者だったと恥じ入るばかりである。
まだ族長を継いで間もない自分ですら、そうなのだ。
自分よりはるか以前から族長の責任を背負ってきたズーグのことを軽く見ることはできないと、ガラムは自分を戒めた。
「やっぱり、ズーグって人は本心では僕たちと協力したいと思っているんじゃないかな?」
そう考えなければ、蒼馬に反発する態度を見せるくせに協議の場を去るどころか、むしろ他の氏族に自分の主張を訴えかけるズーグの行動が理解できない。
「だが、ソーマ。それならば、素直に協力を申し出てくるだろう?」
「それはないな、《気高き牙》よ」
ガラムはシェムルの考えを一言の下に否定する。
シュヌパに諭され、ガラムは同じ族長と言う立場でズーグの考えを読んでみた。
「俺とて逆の立場なら、同じことをしたかもしれん。砦をうまく落とし、平原を取り戻した後は、再び氏族の領域を定めねばならぬ。そのとき、ソーマの発言は決しておろそかにはできなくなっているだろう。そのソーマと一番親しい氏族が、ひいては平原でもっとも広い領域を手に入れる可能性が大きい。氏族を預かる者としては、それは決して軽く見ることはできないことだ」
平原における氏族の領域の広さは、単に力を示すものだけではない。氏族の生活の基盤であり、その後の氏族の発展に直結するものだ。どの氏族も、手のひらひとつ分でも広い領域を得ようと躍起になっている。
「なるほど。ズーグとしては、私たちとソーマを引き離すか割って入らねば、協力したくともできないわけか」
そこに、蒼馬が口をはさんだ。
「ガラムさん。あらかじめ言っておきますが、僕はどの氏族も平等に接したいと思ってます」
蒼馬としては、これは決して譲れないものだった。
ほぼ単一民族で構成されている日本で育った蒼馬には実感がわかないが、現代においても同じ地域に住む民族同士の対立による内戦や紛争のニュースはよく目にしていた。そのため、特定の氏族を優遇すれば後で大きな問題になることぐらいは蒼馬にも容易に想像できた。
特に今は勢力で勝る人間に、ゾアンが一致団結して戦わなくてはいけない時だ。
それを指揮することになる蒼馬は、すべての氏族を平等に扱うと言う態度を明確にしておかなければならなかった。
「さすが、我が『臍下の君』だ!」
すかさずシェムルが称賛する。
完全に蒼馬に惚れこんでいる妹の姿に、やや呆れ気味のガラムであったが、蒼馬の言うことは理解できた。
「だが、我らがそう言っても他の氏族の者は信じまい。いずれにしろ、まずはズーグを説得しないことには話は進まぬ」
ガラムの言うことも、もっともである。
「ズーグなら、おだてたり、挑発してみたりするというのはどうだ?」
「御子さま、それはおやめになったほうがよろしいと思います。ズーグ坊やは、やんちゃな頃から、そうした手合いには慣れていることでしょう。特に今は〈牙の氏族〉の出方を警戒しているのですから、かえって逆効果になるかと」
「では、シュヌパ様はどうしたらよいと思われるのだ?」
シェムルの問いに、しばしシュヌパは考え込んでから言った。
「むしろ、やりこめるぐらいがよろしいのではないでしょうか?」
その答えに、蒼馬は考え込んだ。
これから再開される協議において、まずズーグたちは間違いなく蒼馬が信頼に値するかどうか攻め立ててくるだろう。〈牙の氏族〉のときも経験したことだが、蒼馬は自分の外見がゾアンの戦士たちの信頼を得るどころか侮られるものであることは理解していた。
それでも〈牙の氏族〉のときは、自分がアウラの御子であることと、何よりも御子であるシェムルの支持があったため、戦士たちを説得できた。
だが、今回はいくらシェムルが御子であっても、対立する氏族が相手では説得は難しいだろう。少なくとも、ズーグは相手が御子だからと言って唯々諾々と従うようには見えない。
それならばシュヌパの言うように、実績を見せつけて、あっと言わせた方がいいかもしれないという考えに蒼馬の気持ちが傾いた。
「ガラムさん。今、〈牙の氏族〉で戦える人はどれぐらいいますか?」
「そうだな。今は、60名ぐらいだろうな。緊急の狼煙をあげたので、散っていた氏族の者たちも続々と戻ってきているので、待てばまだ増えるが」
蒼馬は視線を宙にさまよわせながら、思案した。
「今回は、それでも足りるかな……」
「今回?」
「うん。今回の砦攻めは、〈牙の氏族〉の人だけでやろうかと思うんだ」
蒼馬の発言に、皆は一様に目を見張った。
◆◇◆◇◆
それから蒼馬の提案を検討しているうちに協議を再開する時間になったため、シュヌパはいったん自分の氏族に戻ることになった。
それを見送りにきたお婆様は、周囲に人がいなくなったのを見計らい、シュヌパに問いかけた。
「シュヌパ様。このときに、我らゾアンのもとに死と破壊の女神の御子がやってきたことをどう観られるか?」
わざわざお婆様が見送りにきたのは、この問いのためであった。
お婆様は、蒼馬とシェムルが出会ったことは偶然ではないと考えていた。蒼馬は関与していないが、そこには必ず女神アウラの意図が隠されているはずである。
「おそらくですが……。この大陸に住まう7つの種族の中で、今一番苦境に置かれたのは我らゾアンだと思われます」
それはゾアンの生活圏が平原にあるためだ。人間の勢力が強くなるとともに急激に増える人口を支えるため、その食料の確保が急務となっている。そして、人間の主食である小麦などの穀類を育てるために適した平原に勢力圏を広げた結果、その一番の被害をこうむったのがそこに生活していたゾアンだったのだ。
「もし、アウラが死と破壊を求める女神であるならば、もっとも弱き種族を助け、もっとも強き種族を討つのが目的かと」
「やはり、そう思われますか……」
「はい。その方が、より多くの死と破壊が生まれますでしょうから……」
「ゾアンを助けて人間を討つために、ソーマはこの世界に下されたと……?」
「はい。あくまで私見ではございますが」
しかし、お婆様も同じ見解に至っていた。
それが正しければ、蒼馬に従うことこそがゾアンの生き延びる道になる。
「ですが、あの死と破壊の御子にお気をつけください」
シュヌパはことさら声を潜めて言った。
「ゾアンを助けて人間を討つためと申しましたが、必ずしもそうとは限りません」
「そう言いますと?」
「確かに、人間を討たせるためでしょう。ですが、それが必ずしもゾアンを助けるためとは限らないということでございます」
「もしや、シュヌパ様がおっしゃりたいこととは……?!」
「はい。人間のみならず、我らゾアンもまたアウラの御子によって滅ぼされるやもしれないということです……」
だんだん戦記っぽくなってきました(たぶん!)
いつかはジャンルをファンタジーから戦記に変えたいものだなぁと思う今日この頃。
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