2013年11月3日(日)
“通信傍受は民主主義脅かす”
国連総会に決議案提出
首脳が盗聴被害の独・ブラジル
【ワシントン=島田峰隆】米国家安全保障局(NSA)によって首脳の通信まで盗聴されていたことが判明したドイツとブラジルは1日、国際法の下で保障されているプライバシー保護の権利をすべての国が守るよう求める通信保護の決議案を国連総会第3委員会(人権)に提出しました。
(写真)米情報機関による通信傍受に抗議する集会に参加する米国民=10月26日、ワシントン(洞口昇幸撮影) |
決議案は米国を名指ししてはいませんが、内容は事実上、NSAによる世界各国に対する通信傍受を批判しています。米メディアによると、ドイツ、ブラジル両国は決議案作成にあたり欧州と中南米諸国と協議。フランス、キューバ、メキシコ、ベネズエラが共同提案国になる関心を示しているといいます。
決議案は、急速な技術進歩が「監視、傍受、データ収集の能力も高めており、それは人権を侵害することもある」と指摘。違法な監視や通信傍受などは「プライバシーと表現の自由を侵害し、民主主義社会の基盤を脅かす介入の行為だ」と厳しく非難しています。
さらに国連人権高等弁務官に対し、国内および国外でのプライバシー保護の状況を調査するよう要請。各国には「国際人権法上の義務に従った立法など、人権侵害を終わらせる措置を取る」ことや、「監視に関する手続き、実践、法律を見直し、透明性を確保し説明責任を明確にするために独立した監督機構を設けること」を呼び掛けています。
米国の国連代表部職員はロイター通信に、「決議案の長所、短所を検討中だ」と述べました。
決議案は11月下旬に委員会で採決に付される予定です。委員会で採択されれば12月には総会で採決にかけられます。
ドイツのメルケル首相は、NSAが同首相の携帯電話を盗聴していたとする報道を受けて、オバマ米大統領に電話で抗議。首相顧問らをワシントンに派遣しました。ブラジルのルセフ大統領も盗聴問題を受けて、信頼関係が失われたとして10月下旬に予定されていた公式訪米を中止しました。