電動アシスト自転車の価格が下がっている。標準小売価格で5万円を切る商品まで登場している。
電動アシスト自転車は、低迷する自転車市場で唯一といっていいほど売れ行きが伸びている商品。また、ある販売店の店主は「東京オリンピックの開催決定で自転車ブームが到来する可能性が高い」と鼻息も荒い。では、電動アシスト自転車の値下がりも、来る“自転車ブーム”に向けた意識的な値下げと思いきや、メーカー側は意外なことを語る。
「電動アシストまで、ママチャリの末路をたどり始めた」と、ある自転車メーカーの社長はため息を付く。ママチャリは、今や数千円で販売されるケースもあり、“安かろう、悪かろう”が横行している。半年でタイヤの側面が割れてパンクしたり、少し壁にぶつかった程度で泥よけがひどく曲がってしまったりといったことは当たり前だ。消費者にとってはまさに“安物買いの銭失い”、また、メーカーにとっては「大手のプライベートブランド以外は作れば作るほど赤字になる」(先のメーカー社長)商品となっている。
多くの消費者にとって自転車は近くのスーパーに買い物に行くときに使う程度の移動手段とはいえ、まさかの故障で大事故につながりかねない。にも関わらず、価格競争一辺倒でどんどん品質が悪くなってしまっているのは、「ひとえに、日本の法律が悪い」(同)ためだという。
実は、自転車には厳格な品質基準がない。もちろん、JASマークなど、品質保証規格を取得できる。しかし、法律上は、こういった規格を“取ることができる”、とあるだけで、取得が義務付けられているわけではない。極端な話、いくらでも品質を落とした商品を売ることができるのだ。
電動アシスト自転車も、「そう遠くない将来、ただ価格が安いだけで、半年も乗ればモーターが故障する粗悪品が市場を席巻するようになる」と、このメーカーの社長は断言している。
消費者も“たかが自転車”、“壊れても値段が値段なので仕方ない”、とあきらめる傾向があるのも事実。しかし、自分が乗っている自転車が品質保証さえないものである可能性があることにもう少し、注意を払うべきだろう。(編集担当:柄澤邦光)