日本郵政社長交代ではっきりした、郵政改革の終焉

2013年05月14日 18:36

 日本郵政の社長に西室泰三・郵政民営化委員長の起用が固まった。現在の坂篤郎社長は就任からわずか半年での退任になる。元財務相OBの坂社長が政権交代のどさくさに紛れた官僚主導による“抜け駆け”就任だったことに自民党が激怒したためという。官僚では本当の改革はできない、というわけだ。

 しかし、新聞報道によれば、「何がなんでも社長は民間から」と言う自民党の意向に反して、経済界からは誰も了解を得られず、止むを得ず西室氏の就任になったという。また、多くの経済関係者からは、今回の人事で「郵政改革は完全にとん挫した」という声さえ出ている。

 「郵政改革が完全にとん挫した」、といわれる最大の理由は、西室氏の就任そのものにある。西室氏といえば、東芝社長をはじめ、株式会社化した東京証券取引所の社長を勤めるなど、様々な肩書きを持つ人物。しかし、経営者としての実力を評価する声はほとんどない。

 確かに、西室氏が社長に就任した後の東芝は、半導体事業の不振といった事業の失敗をはじめ、総会屋への利益供与事件、米国でのフロッピーディスク装置訴訟など、不祥事だらけ。結局、東芝が事業の集中と選択を行い、なんとか復活の糸口を見出すまでの“長いトンネル”を作っただけという、経営者だった。

 東京証券取引所社長に就任した直後には、ライブドア事件が発覚、新興市場が壊滅的といえるほどの打撃を受けた。

 西室氏の能力に関していえば、大企業のサラリーマン社長らしい「バランス感覚」が評価される程度。たしかに、バランス感覚に優れた人物ならば、権力者=政治家にとっては、これほど使い勝手のよい人材はいないだろう。

 しかし、日本郵政は、自民党にとって小泉政権から「日本の構造改革」の本丸だったはず。今回の人事を見た限りでは、自民党の政治家たちも、既得権益を守ろうとする官僚と大差ないとしか言いようがない。(編集担当:柄澤邦光)