『アベノミクスがお客を減らした!』憤懣やるかたないカラオケ業界

2013年10月17日 18:47

 アベノミクス効果で2014年3月期の上場企業の営業利益が2ケタ増になるのではないかと一部の金融関係者の間で噂されるなか、まったく恩恵を受けていない業界もある。代表的な業種のひとつがカラオケだ。

 「正直言って苦戦」と、カラオケチェーン店を全国展開する、ある上場企業の社長がため息をつく。アベノミクス効果で景況感が回復するなか、売上も利益もほとんど伸びないからだ。

 一般社団法人の全国カラオケ事業者協会の推計によれば、国内のカラオケ店の市場規模は2012年度で約3,900億円。11年度に比べてわずか1.2%程度しか増えていない。

 また、あるカラオケチェーンが推計した、大手上場カラオケチェーン店の13年度の当期純利益予想は合計で約480億円。12年度比で5.3%の伸びに止まると予想している。

 さらに利益面では、外国人投資家が重視するROE(自己資本利益率)は、13年度は8.1%と、12年度に比べて0.2ポイント減少すると予想している。

 カラオケはもともと少子高齢化とアルコール消費の減少で市場は頭打ちと言われる業界。しかし、景況感が回復しているというのにレジャー産業の一翼を担うカラオケに恩恵がないのはなぜか。ある業界関係者が売上に関しては、こう分析する。

 「カラオケの潜在顧客となる中・低所得層のうち、景気が良くなったと実感しているのは、大手企業のサラリーマンくらい。そういう人たちは、今までカラオケ程度で我慢していたが、海外旅行など、もっと値の張るレジャーにおカネを使い始めた。反対に所得の増えない潜在顧客も多く、これらの人々は、カラオケに行く余裕さえなくなってきている。結果的にカラオケ人口はアベノミクスのおかげでさらに減ってしまった」

 また、資本効率の悪化は「光熱費の高騰」(前出の業界関係者)が原因。電気代の相次ぐ値上げが収益を圧迫しているという。「光熱費の増加で今年に入ってコストが約30%も増加したチェーン店もある」(同)そうだ。

 カラオケ業界も、アベノミクスが登場した当初は大きな期待を寄せていた。しかし、今は、それも幻想となりつつある。前出の業界関係者によれば、アベノミクスの足元の評価は、「お客になる中層以下の所得層に恩恵が行き届いていない。まだまだ中途半端な政策」(同)。

 この業界関係者は、「せめて電力料金くらいは、早く何とかしてほしい」と政権に注文している。(編集担当:柄澤邦光)