LINEを利用した「すごい仕事術」3つのポイント
横山 信弘 | (株)アタックス・セールス・アソシエイツ 代表取締役社長
LINE(ライン)はビジネスで利用できるのか?
スマートフォン用の無料通話、メッセージアプリの「LINE」は、2013年11月現在でユーザー数が2億5000万人を超えました。破竹の勢いで普及していくLINE。今回はこのLINE(ライン)を利用して、どのように仕事やマネジメントに役立てるかについて解説します。過去に取材を受け、雑誌に掲載された記事を心理学的に掘り下げて記述していこうと思います。
そういう私も当初、「LINEは軽いメッセージや巨大なスタンプを友だち同士でやり取りして楽しむもので、仕事で使うものではない」と思い込んでいました。「スタンプ」には可愛らしいものが多く、ビジネスの雰囲気にそぐわないように思えましたから。ところが試しに使ってみると意外とそうでもないのです。今では組織のマネジメントをするにあたって、LINEは手放すことのできないコミュニケーションツールになっています。
LINEでビジネス活用する機能は2つだけ
LINEで使っているのはメッセージ機能とグループ機能の2つです。部下と私とでグループを作り、そのグループ内で用件を短文メッセージに書いて送り合う。基本はこれだけ。グループは私たちが関与している商談、コンサルティング案件、セミナー企画など、プロジェクトごとに作っています。
当社のコンサルタントは4人しかいませんが、同時並行でかなりの数のプロジェクトを抱えているので、グループの数は結構あります。「人」単位ではなく、「グループ」単位でメッセージをやり取りすると、有益なことがたくさんあるからです。
それではLINEを仕事で使ううえでの、3つのポイントを最初に整理しておきます。
1)単純接触効果
2)エレベーターピッチ
3)備忘録
単純接触で信頼関係を構築する
テレビCMに代表されるように、人はある物事とシンプルな接触を繰り返すと、無意識下において刷り込まれていき、いつのまにかその物事と信頼を構築していきます。この心理効果を「単純接触効果」と呼びます。LINEの特徴は何といってもその手軽さにあります。すぐに、誰でも、簡単にメッセージを送ることができます。だからこそ使っているとコミュニケーション相手と単純接触効果が生まれやすいのです。電子メールとの差は、まさにここにあると言えるでしょう。
「東京駅を出ました。10時にエントランスで待ちます」
「はい。いま駅弁たべています」
「駅弁もいいけど、見積り資料は3部印刷した?」
「大丈夫です。私は9時半に到着予定。スタバで時間つぶします」
「どこのスタバ?」
「北口出てすぐ左です」
「ならスタバに寄ります」
「今日の商談、決めましょうね」
「もちろん。電車の中で提案書を見直しておきます」
こんなやり取りをスピーディにできます。電子メールで書く内容は、事務的用件に偏りがちで、かつメールの編集にはいろいろと決まりがあるため、メールを書くのにも時間がかかり、手軽とは言えません。受け取った相手が読んで読解するまでにも時間がかかります。
また、単純接触効果を生みだす重要なポイントは、アイコンです。自分のアイコンには、必ずご自身の写真を設定します。はっきりと顔が認識できるほどの大きさの、笑顔で撮影されたものにしましょう。ただ、写真設定を個人に任せると、皆さん恥ずかしがって写真を設定したがりませんので、リーダーが指示します。みんなで写真を撮影しあってもよいでしょう。
グループごとにアイコンを作成できるので、そのグループテーマ(プロジェクト)に合った写真や画像にすることも必要です。ある会社の商談に関するグループであれば、その会社のロゴをアイコンにしたり、中心メンバーの顔写真をグループのアイコンにする手もあります。こうするとアイコンを一目見れば、何のプロジェクトなのかすぐ判別できます。
スタンプも積極的に利用していきます。「受注できました!」「今日の仕事終了!」の一言に、涙を流しながら大声で叫んで喜んでいるキャラクターのスタンプが添えられていると、相手の気持ちが瞬時に伝わってきます。文章だけのメッセージ、あるいは記号で構成された顔文字とは比べものにならないほどのインパクトがスタンプにはあります。
ただ、あまりにコミカルなスタンプを使うと、心象を悪くする上司もいるでしょうから、LINE利用を始める前に、お互いで話し合い、スタンプを積極的に使うかどうかも決めておきます。
相手と信頼関係を築くためのコミュニケーションには、コミュニケーション内の情報をただのテキストデータで埋めず、非言語データの率を増やすことです。ですから写真やスタンプは有効なのです。ぜひお試しください。
短文がコミュニケーション能力を高める
2つ目のポイント「エレベーターピッチ」。
LINEのメッセージを書く際に意識していただきたいのが、短い文章を書くようにすることです。強制的に短くすると、一つひとつの文章にスピード感が出てきます。すると相手は読んだ後に「すぐ返信しなくては」という気持ちになりやすい。
スピード感のあるLINEのメッセージとは、例えば次のようなものを言います。
「A商事から問合せあり。大至急、部課長と打合せしたい。来週火曜の朝8時半からはどう? そこ以外スケジュール隙間ゼロ」
「エレベーターピッチ」という言葉を聞かれたことがあるでしょうか。エレベーターで目的の階に着くまでのわずかな時間(数十秒から1分以内)で、自身のビジネスプランの魅力、優位性を投資家に伝えることを指します。起業家がプロの投資家とエレベーターに乗り合わせた際、投資家が降りてしまうまでに、ビジネスプランを伝えられるか伝えられないかでビジネスの明暗を分ける、と言われたことに由来します。
短い時間でポイントを正しく伝えることの大切さを表現した言葉です。話が長い人ほど要点がわかりづらくなる、ということは確かにあります。また、文章を短くできない人は電話に頼ろうとします。伝えたいことを整理できないので、「話したほうが速い」と思い込むのです。LINEのメッセージを使って、頭を整理し、短い文章を書く力を鍛えましょう。
LINEはタスク管理にも使える
私がグループ内でやり取りするメッセージは、業務連絡や相談、指示などがメインです。しかし、たまにメモもあります。部下と面と向かって話し、そこで決定したことも「備忘録」としてメッセージを送ります。グループごとにメモやタスクを残しておけば、全員で共有できます。
たとえば「A商事のM商談」というグループがあったとして、その商談を管理するうえで部下と一緒に決めたことをメッセージで流しておくのです。
「11月17日までに決裁者プレゼン資料をS主任が作成。表紙・目次・背景・現状データと分析・課題まとめ・解決策・工程表・見積りの8ページ構成。19日までにN課長がチェック」
そうすると、グループ内メンバー全員にそのまま伝わりますので、「報・連・相(ほうれんそう)」を怠るミスも避けられます。
LINEのセキュリティは十分に配慮する
LINEというツールは便利ですが、両刃の剣でもあることは覚えておく必要があります。セキュリティの面もそうですし、LINEにはまりすぎてしまい、仕事と直接関係がない人とのメッセージ交換を増やしてしまう人が出てくることも問題です。当然、就業時間中は、控える必要があります。仕事以外の人との信頼関係が強固となり、逆に社内の人との関係が希薄になりかねないからです。
シンプルであるからこそ「単純接触効果」が働き、はまりやすいという罠があります。LINEを使って上司と部下とのコミュニケーションに「はまる」ことができれば、組織が活性化することも間違いないかもしれません。ぜひチャレンジしてみてください。