秘密保護法案:発言揺れる担当相 弁護士時は情報開示追及
毎日新聞 2013年11月06日 06時05分(最終更新 11月06日 07時37分)
国家機密を漏らした公務員らに厳罰を科す特定秘密保護法案を担当する森雅子少子化担当相の発言が安定しない。週2回の定例記者会見では答えに窮する場面もあり、政府関係者は「国会で下手な答弁をすれば法案は一発でアウトだ」と漏らす。ただ、森氏は弁護士出身で、金融庁職員時代にグレーゾーン金利を廃止する貸金業法改正に携わるなど実務能力への評価は高い。そんな森氏の発言の揺れに「特定秘密保護法案に弁護士として納得できない部分があるのではないか」(内閣府幹部)という同情論もささやかれている。
「私の議事録を取り寄せて、後ほどお答えする」
森氏は5日の記者会見で、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の交渉内容が特定秘密に該当するかどうかを巡って、同氏と菅義偉官房長官の発言が矛盾するのではないかと問われ、即答を控えた。
事の発端は10月29日の会見での森氏の発言。「TPPについては(特定秘密に)ならないと思う。(法案で特定秘密の範囲を定めた)別表に掲げる事項であれば、なる可能性もある」「いま私が(別表に)入るとか入らないとかいう判断はできない」と迷走し、菅氏が同日の会見で「基本的にTPPは入らない」と引き取った。
この点を5日、記者団から再度追及された森氏は、事務方が差し入れた自身の発言録を確認し、ようやく「矛盾するところはない」と言い切った。ただ、会見は質問者を残したまま打ち切られ、森氏側が神経質になっていることをうかがわせた。
森氏は10月22日にも、特定秘密保護法案の処罰対象になる取材行為について「西山事件(外務省機密漏えい事件)の判例に匹敵するような行為」と会見で述べ、一部報道で「法と倫理を混同」と批判された。同月25日の会見で「『西山事件に匹敵』と『西山事件の判例に匹敵』では意味が違う」と判例を引用して反論したが、当初の発言が説明不足だったのは否めない。
首相周辺は国会審議を前に「森氏には、丁寧に、かつ相手の土俵に乗らないように答弁するようアドバイスした」と明かす。別の首相官邸関係者は「(記者会見など)場外で転ぶうちはいいが、国会審議は要注意だ」と語る。