日本シリーズが終わった球界に波乱の予兆だ。一つはポスティングシステム(入札制度)によるメジャー挑戦が決定的な楽天のエース・田中将大(25)を三木谷浩史オーナー(48)が全力で慰留する意向を示し、移籍を容認している立花陽三社長(42)と火花を散らしているという。
常識外の連投で日本一を決めたマウンドから一夜明けた4日、田中は仙台市内の自宅で久々の完全休養を取った。今後は8日からの岡山・倉敷で行う秋季キャンプ、台湾で行われるアジアシリーズ(15日開幕)には行かず、千葉県内の施設でオーバーホールを行う予定。立花社長が「まだNPBとMLBの間で(新システムの)合意に至っていないので動けない。アジアシリーズまでには本人と話し合って意思を確認したい」と話しているように、近日中にも話し合いの場が持たれる。絶対エースはそこで球団側にメジャー挑戦の意思を告げる見込みだ。
現場サイドも既に“大エース抜き”のチーム作りをスタート。星野監督は来季の投手陣の構成に関して「田中がいないと想定するかって? 当たり前だろ!」と話しているほどだ。
その流れのなか、楽天グループの総帥である三木谷オーナーは本気で慰留するつもりでいる。同オーナーはシーズン中から「マー君はやっぱりすごいね。メジャー行っちゃうの? それじゃあ、引き留めないといけないね」と周囲に宣言。球団の顔の流出に危機感を募らせていた。実際、今年のドラフト会議で注目度ナンバーワンだった桐光学園の「ドクターK」松井裕樹投手を1位指名したのも「オーナーの鶴の一声があったから」(球団関係者)。スーパースター不在は球団の注目度に関わってくる問題だけに、気になるようだ。
もっとも、田中の評価は天井知らずで、一部米メディアは入札額は史上最高1億ドル(約98億5000万円)に達する可能性があると報じている。そのため、一部では「日本一の立役者をすぐに入札制度で米移籍させたのではファンは『金のために売ったのか』と猛反発する可能性もある。だから、(慰留は)ポーズなのでは」という冷ややかな見方もある。
しかし、球団関係者の話を総合すると「日本球界の歴代投手最高年俸を提示してでも全力で引き留める」とのこと。昨オフに結んだ3年12億円の複数年契約を見直し、横浜(現DeNA)・佐々木主浩の6億5000万円を超える年俸7億~8億円を提示する意向であるというから、その本気度はハンパではない(いずれも金額は推定)。
ところが、問題は現場を任されている立花社長が「本人の意思を尊重したい」と容認する方針であること。田中本人との交渉は社長が行うことになっており、関係者の間では大きな注目を集めている。
立花社長は三木谷オーナーから絶大な信頼を得ている。だが、慰留できなければ三木谷オーナーが「何をやっているんだ!」と怒りを爆発させても不思議ではない。そうなれば一蓮托生だった関係に溝ができてしまう可能性もある。田中のメジャー行きを巡る攻防は球団フロントの空中分解を招く危険性をはらんでいるのだ。
引き留めか、それとも容認か――。日本球界が誇るレジェンドエースのメジャー挑戦はすんなり決まりそうにない。
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