平成25年10月29日マルマライ・プロジェクト開通式典における安倍内閣総理大臣スピーチ
ギュル大統領閣下、チチェッキ国会議長閣下、エルドアン首相閣下、御列席の皆様、トルコ建国90周年を、心からお祝い申し上げます。
トルコの皆様は、歴史と、伝統を重んじながら、近代化という難題と折り合いをつけてこられました。
アジアの東端、長い伝統を持つ国から来た私たちには、アジアの西端にある皆様のご苦労が、よく分かります。トルコと、その人々に、とこしえの、栄光と、幸がありますように!!
そして今日、建国90周年の佳き日に、アジアと欧州を分かつ海峡を、鉄道で連結するという一世紀半の夢、1860年に、最初の設計図が描かれてこの方、諦めずに保ってこられた夢を、皆様はとうとう実現なさいました。ほんとうに、おめでとうございます!!
5月に、エルドアン首相とお会いした時、東京とイスタンブールは、オリンピック開催をめぐって競い合っていました。私たち二人はあの時、どちらが勝っても、一番にお祝いしようと約束しました。
9月7日、ブエノスアイレスで、開催地が東京だと決まった時、エルドアン首相は、誰より先に私のところへやって来て、祝福の抱擁を与えてくれたのです。エルドアン首相…、私はあの時、首相の勇気と友情に、心の底から感銘を覚えました。
今度は、私がエルドアン首相を祝福する番です。今年の5月、首相は身を乗り出しておっしゃいました。マルマライのプロジェクトが、いかに大切か、トルコにとって、その完成が、どれほど悲願であったかということを。開通式典に、ぜひ来てくれと、おっしゃいました。皆さん私は、名誉に思います。首相との、約束を果たすことが出来たのですから。
約60メートルの深さに、沈埋工法でトンネルをつくった前例など、ひとつもないのだと聞きました。水深によって流れを変える強い水流は、専門家という専門家に、「不可能に近い工事だ」と、言わせたとも聞いています。
トンネル工事を指揮したお一人、大成建設の小山文男さんという方は、それでも成功できたワケはなんだと聞かれ、「諦めないことだ」と答えています。「諦めないことが、成功への第一歩、そして、最後の一歩だった」という小山さんの言葉は、工事がどれほど難しかったか、すべてを語っているではありませんか。
工事に携わった、トルコ、日本、そして関係者、すべてのみなさん、みなさんのお仕事を、世界はいま、讃えています!!
いつまでも地図に載り、世代を継いで歴史に残る大事業のパートナーとして、トルコの皆様が、日本と、日本の企業を選んでくださったことに、改めて御礼申し上げます。
さあ次は、東京発イスタンブール、そしてイスタンブールからロンドンにつながる新幹線が走る夢を、一緒に見ましょう。
いまや力強い経済を獲得したトルコと、日本は、G20の仲間です。今年の5月、われわれ両国は、戦略的パートナーとして、外交面はもちろん、安保でも経済でも、対話と協力を深め、世界のため、ともに働くことを誓い合いました。
世界に平和と安定をもたらそうとして働くトルコと日本は、この、広いアジアを東西から支えるふたつの翼です。
皆様にとって150年来の夢が実現した日、東西を連結する偉大な都市イスタンブールの地を踏んで、私の脳裏には、しきりとそんなイメージが去来しました。
アジアに平和を。そして繁栄を。トルコと日本は、アジアを飛翔させるふたつの翼、両翼なのです。
テシェッキュル・エデリム。(ありがとうございました。)