百貨店虚偽表示:高島屋や大丸松坂屋のおせち料理でも
2013年11月05日
高島屋で発覚した主な虚偽表示
高島屋やJ・フロントリテイリング傘下の大丸松坂屋百貨店、小田急百貨店など大手百貨店各社が過去に販売したおせち料理で商品名と異なる食材を使う虚偽表示があったことが5日、明らかになった。いずれも仏高級食品店「フォション」ブランドのおせち料理のメニューで「車海老(くるまえび)のテリーヌ」とうたいながら実際はブラックタイガーを使っていた。日本百貨店協会(会長・茶村俊一J・フロントリテイリング会長)は同日、加盟各社に社内調査を要請した。阪急阪神ホテルズ(大阪市)での発覚を端緒とした食材虚偽表示問題は、「品質の高さ」が売り物の名門百貨店にも波及した。
虚偽表示の「車海老のテリーヌ」を含むおせちはフォションの日本でのブランド販売権を持つ高島屋の子会社が企画・製造したもので、京王百貨店や東武百貨店でも売られていた。価格は4万円程度で、高島屋は2010年以降、計578個を販売。他の百貨店各社も11年以降、それぞれ十数個から二十数個販売していた。各社とも購入者に一部返金などの措置を検討している。
また、高島屋ではこのほか、店舗にテナントとして入居するレストランで「ステーキ」として提供した料理が牛脂を注入した加工肉だったことなども判明。同レストランのチェーン店は他の大手百貨店にも出店しており、こちらの虚偽表示もさらに広がる可能性がある。5日記者会見した高島屋の増山裕常務は「(原材料の確認など)業者任せのウエートが大きかった」と釈明した。しかし、子会社が手掛ける「フォション」の商品はもちろん、業務を委託している外部の総菜業者やレストランについても、消費者は「大手百貨店だから安心」と信頼して利用している。それだけに相次ぐ虚偽表示問題発覚は百貨店のブランドを大きく傷つけそうだ。
しかも、地下食品売り場「デパ地下」の総菜や正月用おせち商品の充実などグルメ路線は近年、百貨店の集客の原動力となってきた。消費者は「品質が間違いない」との前提でスーパーなどに比べて割高な代金を払っており、その信頼を裏切るような食材の虚偽表示の波紋は大きい。
高島屋によると、食材の虚偽表示が確認されたのは、東京・日本橋▽新宿▽横浜▽岡山▽柏(千葉)▽新横浜の計6施設の計10レストラン・売り場の計62メニュー・商品。04年から今月まで販売額はフォションのおせちも含めて総額3億円程度にのぼるという。高島屋では利用者に代金を返還する方針。増山常務は会見で「(テナントも含めた)管理体制の甘さを反省している」と述べた。
一方、大丸松坂屋百貨店は5日、松坂屋名古屋店▽同豊田店▽博多大丸福岡天神店で昨年、虚偽表示の「車海老のテリーヌ」を含むフォションのおせちを計19個販売したと発表。今年も同じテリーヌの入ったおせちの予約を受け付けていたが、中止した。三越伊勢丹ホールディングスや、そごう・西武グループもデパ地下やレストランなどで提供している食材の虚偽表示の有無を調査中だ。【西浦久雄、神崎修一】
◇フォションのおせち 4百貨店でも販売
仏高級食品店「フォション」はパリに本部がある世界的ブランド。日本では高島屋の子会社がブランドを販売する代理店契約を結んでいる。今回、食材の偽装表示が判明したおせち料理など総菜は高島屋のグループ会社が企画・製造し、フォション本部の承認を得て販売。おせちは他の大手百貨店にも供給していた。
高島屋によると、「フォション」ブランドで06年から販売が始まったテリーヌは、販売価格などを考慮し、当初の商品企画段階から食材に車エビではなくブラックタイガーを使うことが決まっていたという。しかし商品名は「車海老のテリーヌ」として発売。10年には委託先の製造業者から指摘され原料表示は修正した。しかし商品名は「車海老」のまま変更されなかったという。