インタビュー - 羽生 結弦
——ジャンプ力については、かなり自信がついたのでは?
僕のジャンプの原点はアクセルです。昔はアクセル(1回転半)を回りすぎて、調子がいいとダブルアクセルになっていた位です。アクセルは他のジャンプとは違って前向きに踏み切るし、これを跳べたら格好良いと思うんですよね。今はトリプルアクセルを確実に決められるから得点が伸びていて、底支えになっています。
——世界的にみて、今自分はどんな立ち位置にいると思いますか?
僕は今、技術力の選手でしょう。今年の世界選手権で銅メダルを獲れたのも、ジャンプを跳べたからです。今季のショートが歴代最高得点になったのも、技術点のおかげです。でも、今季は演技構成点が思ったより出ていて、これはプログラムがすごく良いものだって事と、ジャンプを降りた後の流れが良くなったことだと思います。
——ジャンプ以外の魅力が一気に増したように思いますよ。オフに練習拠点をカナダに移したことも大きな影響なのでは?
やはり世界選手権で3位になって、これをきっかけに自分のスケートを強くしないと、格を身に付けないと、と思ってカナダに行くことを決意しました。今はまだ、スケートの基礎の練習ばかりです。去年まではジュニアの滑りで、若さとパワーで滑っていたんです。でも世界のトップと争うには、大人のスケーティングが必要だと感じてます。
——オーサーコーチの方針で基礎からやり直していますね。
まだ全部やり切れていないです。でも今までと違って、毎日スケーティングしたいな、と自分から思うようになりました。ターンとかストローク(前に滑る)だけでも、受けている風の感触とか、氷を押している感じが心地良いんです。あとグッと伸びる瞬間とかも出てきました。それにジャンプに余裕が出てきたのも、基礎の影響です。重心がしっかりしていれば助走が安定して、ジャンプの安定につながっている。それは自分にとって大きなメリットです。だからしっかり練習して感覚を身に付けたいです。
——基礎の練習時間が少なかったのでしょうか?
今まで(仙台)は足りなかったと思います。以前はジャンプの練習に終始してて、ジャンプは目に見えて成長するのでトントン拍子にここまで来ちゃったんです。でも今になって、自分の上限を伸ばすために、基礎を鍛え直している。ブライアン(コーチ)に『ファンデーション、ファンデーション』って毎日言われます。でも僕としてはまだ化粧水の段階って感じ。化粧水があって、乳液があって、やっとファンデーションにたどり着く……という感じ。
——基礎のもっと手前って感じですね。
そうです。火山で言えば、マグマが溜まるコアの部分を作っている。コアがしっかりあるから吹き出せる。今までは上辺だけで演技してた感じ。今年はそれを痛感しました。スケートアメリカのフリー、ガタガタの演技を体験して、あれで痛感しなかったら俺は本当にダメな奴ですよ。
——フリーが失敗した理由は、やはりスタミナですか?
スケートアメリカもNHK杯も、ボロボロになったのは、スタミナ、精神面、集中力などの問題で、技術面の問題ではありません。4回転ジャンプを2発入れるのは、やっぱりしんどいですから。後半にジャンプが5つあるのも大変だし。若いのにどうしよう。でも、たくさん練習して慣れるしかないです。自分としては大分練習したんですけど、結果を見る限り、まだ足りないことが証明されてしまいました。