インタビュー - 羽生 結弦
——NHK杯優勝、おめでとうございます。10月のスケートアメリカのショートで世界歴代最高点を記録し、今回もまた更新。手ごたえは?
地元宮城の試合で成長した姿を見せられたのは良かったです。スケートアメリカと同じようにショートでいい演技が出来て、マグレじゃないってことが嬉しいですね。フリーも、4回転ジャンプ2発を何とかまとめられたのが、成長した点です。
——スケートアメリカでは、フリーでジャンプミスが連続して総合2位でした。今回、まとめられた理由は?
スケートアメリカの時点では、フリーはまだ不安が大きくて、色々なことが精いっぱいでした。練習でもパートごとに成功していても、全部通してノーミスの演技は出来ていなかった。アメリカの後はすごく練習してきたので、まだ完ぺきでは無いですが、心の余裕が少しだけありました。
——ショートで歴代最高得点を出してから、精神面はどうコントロールしましたか?
アメリカでは歴代最高点っていうのをどう処理したらいいか分からなくて、「喜んじゃいけない、まだ明日があるから冷静に」って感情を抑え過ぎちゃったんです。結果として、フリーの6分間練習の直前に、溜めこんでいた気持ちの蓋がパコっと開いてしまって、頭が真っ白になって、どうしようってなってしまった。その状態のまま試合になり、ボロボロでした。だから今回は、ガッツポーズもして、すごく喜んでおきました。
——ショートでいったん喜んでおいて、ショートのことを忘れようということですね。
そうです。すべてを受け入れて、しっかりフリーに切り替えようと。前回は嬉しい気持ちを抱えたまま抑えていたので、重たくなっていたんです。今回のやり方は成功しました。自分の中で落ち着いてフリーを出来たし、最初の4回転ジャンプが決まったのは大きかったです。決して調子が良かった訳じゃない中で、まとめられたと思います。
——フリーの4回転は、トウループは成功、サルコウはステップアウト。2種類の4回転というのは、かなり難しいのでは?
4回転サルコウは本当に難しいですよ。まだ調子の差が激しいです。でも今挑戦しないでいつやるの、という感じなので、2種類挑戦しています。4回転サルコウはそう簡単に跳べるものじゃないので、今回は取りあえず立った、というだけで十分です。今のところ、4回転トウループの方が、助走から跳ぶタイミングまですべての軌道がイメージとして見えていて、自分の中のルーティンが出来ている状態。でも4回転サルコウは違う。自分としては同じイメージのつもりなんですが、ブライアン(コーチ)からは『毎回違うフォーム、違うタイミングで跳んでいる』と言われます。イメージがもっとコンスタントになれば成功率がどんどん上がると思います。
——羽生選手は、ジャンプをイメージで跳ぶタイプでしたね。サルコウは、ビデオに撮影して見たりしていますか?
そうですね。僕は跳ぶ直前に、バッって頭の中に成功する軌道とかのイメージが湧いて、そこに身体を乗っけていって跳ぶ。だから口で指導されてもダメ。視覚で伝わってくるものが良いんです。ビデオとかを繰り返し見て、イメージを記憶します。でも自分が成功したサルコウは、アイスショーの公式練習のビデオぐらいしかなかったので、今は(同門生の)ハビエルを参考にしています。