天安門車両突入:死亡家族暮らすウイグル たびたび暴動も
毎日新聞 2013年11月02日 07時00分
首都・北京から約3500キロ、中国最西部に位置する新疆ウイグル自治区カシュガル。付近の農村では、ウイグル族の住む古い家屋が地元政府によって次々と取り壊され、近代的な住宅に置き換わっている。その過程で、土地収用を迫る漢族の公務員と、受け入れを拒むウイグル族の間で、たびたび小競り合いや暴動が起きていた。北京・天安門前の歩道に突入して死亡した家族3人が暮らしていたアクト県も、その一つだった。【カシュガル隅俊之、北京・井出晋平】
カシュガル地区郊外を車で走る。道路沿いには「富民安居」と書かれた新築住宅が建ち並ぶ。地元住民は「ここは、かつてウイグル族が暮らしていたレンガ造りの住宅があった」と話す。
中国政府は現在、農村の都市化政策を進めている。農民の生活水準を向上させ、拡大する格差を解消する狙いとされる。中国政府は52・6%(2012年時点)の都市化率を20年までに60%に引き上げる目標を掲げる。
新疆ウイグル自治区でも同様に、「富民安居」(住民を豊かにし安住させる)を掲げて農民の移住と農業の近代化を進める。特に発展の遅れたカシュガル地区は中央政府の支援を受けて集中的に資金を投入されており、中国メディアによると100億元(約1600億円)を投じて500カ所以上の団地が建設され、14万戸の農民が近代的な住宅に移住した。
ただ、こうした中で地元政府が企業に土地を転売して利益を上げるために土地を強制収用するケースも各地で発生している。地元住民の証言によると、実際にアクト県でも、地元政府が山東省などの企業に土地を強制収用したうえで転売しており、それに反発する住民と漢民族の地元政府職員との間で小競り合いが、たびたび起きていたという。容疑者家族3人が土地や家屋を収用され、区政府に陳情していたのも、同じ背景にあったとみられる。