元徴用工訴訟:日本での強制執行は困難 損賠勝訴でも
毎日新聞 2013年11月01日 21時28分(最終更新 11月01日 22時57分)
日本の植民地時代に軍需工場で働かされた元女子勤労挺身(ていしん)隊の韓国人女性らへの損害賠償を命じた1日の韓国・光州地裁判決を受け、三菱重工業は「国家間の正式合意で完全に解決している問題と理解している。誠に遺憾だ」と強い不満を示し、控訴する意向を明らかにした。今後も上級審で訴訟が続く見通しだが、仮に原告勝訴が確定した場合、賠償の行方はどうなるのか。
三菱重工が賠償金の支払いに応じなかった場合、韓国内に所有する資産が差し押さえられる可能性がある。しかし同社によると、韓国には現地法人の営業拠点がある程度で大規模な資産はない。他の法的手続きでも、原告が強制的に賠償金を得るのは困難とみられる。
韓国側が日本の裁判所を通じ、強制執行を求める手続きもあるが、他国の判決内容と訴訟手続きが日本の「公の秩序」に反しないことなどが要件になる。原告は日本の裁判所に同種訴訟を起こして敗訴が確定しており、強制執行が認められる可能性は低い。
三菱重工を巡っては、植民地時代に広島三菱重工造船所(当時)で働かされた韓国人の元徴用工5人の遺族らが未払い賃金や損害賠償の支払いを求めた訴訟でも、韓国・釜山高裁が7月、原告1人あたり約700万円の支払いを命じる判決を言い渡している(三菱重工側が上告中)。韓国でのビジネスへの支障も懸念されるが、同社は「支障が出ているとは聞いていない」としている。【和田武士】