在外被爆者:医療費助成引き上げへ 上限超えても支給
毎日新聞 2013年11月01日 12時19分
在外被爆者への医療費支給を巡り、支給申請を却下した大阪府の処分を違法とした大阪地裁判決(10月24日)を受け、田村憲久厚生労働相は1日、在外被爆者への医療費助成の上限額を引き上げる方針を明らかにした。上限を超えた場合についても、日本で医療を受けた場合の費用に換算して支給し、負担軽減を図る。新たな上限額などを年内に決め、新制度を導入する。
国内の被爆者には被爆者援護法に基づき医療費の自己負担分を全額支給しているが、在外被爆者は対象外となっている。厚労省はその代替として、同法とは別の予算事業に基づき、約18万〜19万円を上限に在外被爆者の医療費を助成してきた。上限額は国内の被爆者に支給される医療費の平均から算出している。
大阪地裁は在外被爆者の医療費についても援護法が適用されると判断したため、厚労省は見直しを検討、援護法は適用しないものの予算事業を改めることを決めた。助成の上限額は引き上げ、上限の範囲内であれば、従来通り領収書を提出するだけで助成が受けられる。
また、上限額を超える医療費がかかった場合は、具体的な診療内容の分かる書類の提出を求め、日本で治療を受けた場合の医療費に換算した額から、在住国の医療保険の給付を控除した額を支給する。海外で治療を受けた国内在住の被爆者に対する医療費支給方法を定めた援護法の規定を参考にしたという。
米国など国によっては同じ手術でも日本より高額な医療費がかかるケースがあり、田村厚労相は「日本の被爆者と比較し公平性を担保できる制度に見直したい」と述べた。
厚労省によると、在外被爆者は3月末現在で38カ国・地域に約4500人おり、昨年度は約3100人が制度を利用した。うち約950人が事業の上限額を超えたという。【桐野耕一】