水俣病:熊本県が認定へ 国の審査会「逆転裁決」の男性
毎日新聞 2013年11月01日 15時00分
熊本県の蒲島郁夫知事は、水俣病認定申請を棄却した県の処分を取り消し「認定が相当」とした国の公害健康被害補償不服審査会の裁決を受け、同県水俣市の下田良雄さん(65)を水俣病患者として認定する方針を固めた。蒲島知事は1日夕、水俣市内で下田さんと会い、方針を直接伝えるとみられる。裁決書は1日、下田さんに届いた。
行政不服審査法は不服審査会の裁決の拘束力について、行政庁は不服審査会の裁決の趣旨に従って改めて処分しなければならないと規定している。県は認定審査会を開いて再検討することもできるが、蒲島知事が職権で下田さんを認定することを決断したとみられる。
現行の認定基準は、複数の症状を要件としている。しかし今年4月の最高裁判決が、魚介類を介した水銀の摂取がはっきりしていれば、症状が一つでも認定できると明示した。下田さんは山間部の出身だが、行商人を通じて魚介類を食べていたうえ、手足のしびれなどの感覚障害があった。県の認定審査会は「複数症状がない」として棄却したが、今回の裁決は最高裁判決を踏襲し「認定が相当」と結論付けた。
司法だけでなく、行政においても事実上、複数症状の要件が崩壊したことになり、改めて現行の認定基準の見直しが迫られる形になった。【笠井光俊、松田栄二郎】