初音ミク:開発に藍綬褒章 「ネットは地方に福音」
2013年11月02日
◇初音ミクの音楽ソフト開発、伊藤博之さん(48)
今年の秋の褒章(3日発令)で、北海道内からは黄綬4人、藍綬24人の計28人が選ばれた。バーチャルアイドル「初音ミク」の音楽ソフト開発で知られる札幌市のIT会社「クリプトン・フューチャー・メディア」社長の伊藤博之さん(48)は藍綬褒章を受章し、「褒章は『大御所』が多いと思うので、不思議な感じ」とはにかんだ。【伊藤直孝】
「未来から来た初めての音」。そんな意味を込めた初音ミクは2007年誕生。音符と歌詞を入力し、透き通った声で歌わせる音楽ソフトは、業界では異例の10万本超を売り上げた。非営利での2次利用を広く認めたため、初音ミクを題材にした独創的な楽曲や画像、動画がインターネットにあふれた。「良い作品は世界中でシェアされる。お金にならなくても人に見てもらうだけでうれしい。人って案外クリエーティブなんです」
釧路湿原が広がる標茶町生まれ。高校卒業後、国立大職員の傍らパソコンで効果音を作り続け、米国雑誌に三行広告を出して販売したことから始まり、1995年に会社設立。18年間で年商20億円の企業に成長させた。
8月には英語版の初音ミクを発売。世界的企業になりつつある今も、ローカルへのこだわりが強い。「誰もが情報発信できるようになったインターネットは地方にとって福音。東京に出なくても地元で創作活動ができる、そんな基盤づくりに取り組みたい。アイデアはたくさんあります」。北の大地に根を下ろし、初音ミクに魅了された世界中のクリエーターを支援するつもりだ。