”ネット戦略”を導入する侍ジャパンの挑戦

 これも旧態依然のNPBが変革しようとしている現われなのか。
 侍ジャパンは、小久保裕紀を新監督に迎えて再スタート。11月8日から台湾で台湾代表と3試合親善試合を戦うが、侍ジャパンを統括しているNPBの新部署が、画期的なネット戦略を仕掛けている。

ニコニコ動画で生中継を実施

 先月26日に侍ジャパンの公式サイトを立ち上げたが、その小久保監督が初めて指揮を執ることになる台湾戦では、ニコニコ動画と組んでネットでの生放送を試みる。台湾との3連戦は、1戦目、3戦目がテレビ朝日、2戦目がTBSという地上波が、放映するが、1戦、3戦は放映時間が決まっていて、もし試合展開が伸びることになっても放送延長がされない。そういう事情も手伝って、第1、3戦に限って“ニコ生”で、地上波の終了後に無料放送するものだ。プロ野球では、高視聴率が期待できなくなってコンテンツとしての魅力を失って以来、放映の延長が減り、試合のクライマックスで「それでは皆さん!」と放送が途中で打ち切られることが増えたが、小久保ジャパンの初陣は、ネットを通じて、最後の結末が見ることができるようになった。

 すでにパ・リーグは、数年前からパ・リーグTVという有料サイトを立ち上げて、ネット配信を開始しているが、侍ジャパンのゲームが、ネットで動画生配信されるのは、もちろん初。今回の仕掛けは、NPBサイドからニコニコ動画へ持ちかけたもので、その理由には、侍ジャパンが掲げるビジョンとプロ野球界が抱いている危機感がある。

■2つの侍ジャパンの目的

 「侍ジャパンの目的は2つあります。アマチュアの各世代を通じて世界一となる野球界の底上げと強化。そして、侍ジャパンを通じて、ライトな野球ファンをひきつけることです。侍ジャパンで活躍した選手から、次に、その所属チームに興味を持ってもらうことなど、野球ファンの掘り起こしと蘇生が目的のひとつです。そのためには、試合を見てもらうタッチポイントを増やしたい。今回、ネット配信を実験的にやることしました」とは、NPB関係者の話。彼らが、独自に日本シリーズやオールスターなどのテレビの視聴率の中身を調査した結果、50代以上のゾーンが占める割合が非常に多いことが判明した。1970、1980年代にプロ野球を楽しんだ世代が、そのまま、年を取って野球を支えているのである。