『九死に一生、淫魔に転生』01
アンケートにご協力いただいた皆様、ありがとうございます。
集計の結果は、
18)九死に一生、淫魔に転生 ……4.5票
1)執務官補佐は自重しない!……1票
13)レディ・レッスン……0.33票
19)学園QUEEN……0.66票
7)極楽先生よこし(マ)……1.5票
4)炎のように……1票
12)今日からお姉ちゃん……0.33票
ということで、オリジナルは18)、二次創作は7)から掲載させていただきます。
(その他の票が入ったものも、「ニーズがある」と解して優先的に掲載するつもりです。
まぁ、「サギタリウス・マギカ」みたく突発的に書いたモノを載せる場合もあると思いますけど)
……というわけで、本日の更新は堂々の一位を獲得した『九死に一生、淫魔に転生』、略して「九死転生」です!
集計の結果は、
18)九死に一生、淫魔に転生 ……4.5票
1)執務官補佐は自重しない!……1票
13)レディ・レッスン……0.33票
19)学園QUEEN……0.66票
7)極楽先生よこし(マ)……1.5票
4)炎のように……1票
12)今日からお姉ちゃん……0.33票
ということで、オリジナルは18)、二次創作は7)から掲載させていただきます。
(その他の票が入ったものも、「ニーズがある」と解して優先的に掲載するつもりです。
まぁ、「サギタリウス・マギカ」みたく突発的に書いたモノを載せる場合もあると思いますけど)
……というわけで、本日の更新は堂々の一位を獲得した『九死に一生、淫魔に転生』、略して「九死転生」です!
『九死に一生、淫魔に転生』
最後の記憶にあるのは、ド派手なデコレーションを車体や荷台のアチコチに施した、いわゆるデコトラ。最近では貴重な演歌の消費先であるソレが、ちょうどガードレールの途切れた場所から歩道にいる自分に突貫してくるトコロだった。
となると、スーパーマンでも超人ハルクでもない一介の高校生が、4tトラックとタイマン張って、なおかつ奇襲を受けて1ターン無駄にしたうえで勝てるかどうか……いや、生き延びられるかどうかすら、言わずもがなで。
──星河丘学園高等部二年生、野村真人(のむら・まこと)、享年16歳と8ヵ月。(チーーーン!)
第1話.ぼくはしにました?
目が覚めた時は、最悪の気分だった。
「う、うーーーーん……」
なんだろう。妙に頭が重い……だけじゃなくて、全身がダルい。
「ようやくお目覚めね。いえ、むしろそれだけの変化の末に、よくも半日足らずで目が覚めた、と言うべきかしら?」
? なんだ、誰か部屋にいる!?
重たい身体を無理やり起こして声のする方に目をやると、そこには僕と同年代くらいの女の子が、お行儀悪く椅子の背もたれに向かって座っている。
そして、幸か不幸か、僕は、その相手に見覚えがあり過ぎるほどあった。
「え……あれ、もしかして、同じクラスの阿久津真子さん?」
ん? なんか僕の声がおかしいような……風邪かな。
「ふーん、わたしのフルネーム、覚えてたんだ」
僅かに目を細めて僕の顔を品定めでもするかのように見る阿久津さん。
「う、うん、一応これでもクラス委員だし……」
……まぁ、本当は「ちょっと気になる女の子」だから知ってただけなんだけどね。
阿久津真子(あくつ・まこ)さんは、1年の3学期になって転校してきた、物静かな女の子だ。
ちょっと小柄で、どちらかと言うと控えめな性格だけど、意外と文武両道な優等生。しかも、どこか凛とした雰囲気のある美少女とくれば、僕のような平平凡凡たる地味男子としては憧れずにはいられなかった。
「そ。まぁ、名前の件はどうだっていいわ。どうせ偽名だし」
! あ、阿久津さん、何か今スゴいことサラリと言わなかった?
それに、私服姿は初めて見たけど、意外に大胆と言うか……。
両肩から胸元近くまでがむき出しの袖の無い上着と、ちょっと腰を曲げただけでパンツが見えちゃいそうな赤いプリーツスカートを着ている。黒いオーバーニーソックスとの絶対領域が目に眩しい。
キュート&パンキッシュって言うか、何だか、ずいぶん教室で見た時とは雰囲気が違うような……。
「ああ、アレは演技よ。この国の教師って適当に優等生してたら生徒に過度に干渉して来ないからね。
──ところで、キミ、何か気がついたことない?」
え? いきなりそんなコト言われても……って、あれ、阿久津さん、その背中にあるのってコウモリの羽根? もしかしてコスプレ?
「フフ、どうかしらねぇ。作り物がこんな風に自由に動かせるかしら?」
に゛ゃっ!? い、いま、阿久津さんの背中の羽根がバサバサって動いた!
それだけならまだしも、羽根の動きに合わせて阿久津さん自身、ふわって浮いてたような……。
「ええ、それはそうよ。羽根って普通、空を飛ぶためにあるものでしょう?」
ニィッと笑った阿久津さんの口の端からは、「八重歯」と言うには少々尖り過ぎてるような気がする白い犬歯、いや「牙」が覗いている。
それに瞳の色も、日本人というか普通の「人間」にはあり得ないルビーみたいな真っ赤に変わっている。
もしかして……。
「ま、まさかと思うけど、阿久津さんって……人間じゃないの?」
馬鹿げたことを言ってる自覚は自分でもあったんだけど、相手はアッサリ肯定する。
「うふっ、正解。わたしの本名はメルヴィナ・ストライア・フェレース。由緒正しき魔界の十三伯爵家がひとつ、フェレース家の長女よ。
魔界では、「プリンセス・オブ・サッキュバス」と言うほうが通りはいいかしらね」
げげっ! RPGとかで見たことあるけど、サッキュバスって確か女淫魔のことだよね?
もしかして、僕、阿久津さんにエッチなことして精気を吸いとられちゃうの!?
そ、そりゃあ、僕だって男だし、密かに憧れてた阿久津さんが相手というのは、正直嬉しい気がしないでもないけど。
で、でもダメだよ! 僕、まだ未経験だし、せめて最初くらいは恋人と!!」
「──えーーと、野村くん、声に出てるわよ?」
はわっ!?
「し、死にたい……」
もうダメだぁ。憧れてた子に、こんな情けない本音を聞かれるなんて……。
「あら、ダメよ。せっかく苦労して生き返らせてあげたんだから」
……へ!?
「それにしてもニブいわねぇ。普通は身体に違和感を感じてすぐ気がつくものなんだけど。
あるいは、それだけその身体との相性がよくて、すでに完全に馴染んでるのかしら」
えーーっと……何だかさっき以上にイヤな予感がするんですけど。
「フッフーーン……ほら、鏡よ」
阿久津さん(本人いわくメルヴィナさん?)がパチッと指を鳴らすと、僕の目の前にいきなり高さ150センチくらいの姿見が現れた。
けど、魔法みたいなその出来事に驚いている余裕は僕にはなかった。
なぜなら、その鏡に映っている自分の姿が──瞳や髪などの僅かな色の違いを除いて──目の前にいる阿久津さんとソックリになっていたからだ。
「ええぇぇぇーーーーーーーーっっっ!?」
* * *
「それで、僕の今の状態って、阿久津さんが関係してるんだよね?」
あのあと、いったん思い切り大声を出して騒いだせいか、一段落するとかえって僕は冷静なれたみたい。
立ち直った僕をまたも意外そうな顔で見つめながら、彼女はひととおりのことを説明してくれた。
彼女──メルヴィナさんは、魔王の許可を得て魔界から人間界に正式に「留学」に来ていること。そして、それは人間界(こちら)の裏の人間(退魔組織とか魔法協会とか)の上層部にも、話が通っていること。
「このあたりの詳細は、あとでまた説明するわ」
そして、今日の昼過ぎ、街角を散策していたところ、クラスメイトの僕が交通事故で瀕死になっているのを偶々見つけたこと。
なんでも、そのままでは余命はせいぜい数分──何せ腰から下がグシャグシャに潰れていたらしい──だったので、「このまま死ぬくらいなら」と自分の使い魔として再生すべく、魔術で連れ去ったということ。
「どうせなら、僕の体を治すという方向は考えなかったんですか?」
「魔族に何期待してんのよ。仮にそうしたくても、わたし、治癒系の術は得意じゃないし」
で、初めての術だったが大成功し、僕は無事に蘇生、いや転生した……そうなのだが、ちょっとばかし問題があった。上手く行き過ぎたのだ。
「魔術触媒用のコウモリの羽を、術者であるわたし自身の羽で代用したのが原因かしらね~」
本来、メルヴィナさんの目論見では、使い魔となった僕は、本性こそ魔の眷属らしい角や尻尾があるものの、普段は生前と変わらぬ姿に擬態できるはずだった……らしい。
しかし、彼女が無精して触媒を変え、初めての術だけに魔力(きあい)を入れすぎ、さらに僕の体が魔力と異様に親和性が高い体質だったという、3つの偶然が重なった結果、術の方向性が斜め上に変化した。
「単なる使い魔、最下級魔族じゃなく、かなり上級の──それこそわたしと比べても遜色ないくらいの高位魔族に転生しちゃったみたいなのよね。その証拠に……えいっ!」
突然、ブンッと、大ぶりだが剣呑そうなパンチを放ってくるメルヴィナさん。
僕はあわててのけぞり、かろうじてそれをかわす。
「な、何するんですか!」
「ホラね? 魂に絶対服従が刻み込まれた使い魔なら、主の折檻を避けようという意思すら持てないはずだし、そこらの下級魔族なら、手加減したとはいえ、わたしの拳をやすやすとはかわせないわよ」
「そ、そー言えば、確かに」
運痴でケンカの類いがてんでダメな僕とは思えぬ反射神経だったけど……。
「詳しいことは、逆十字病院あたりで精密検査しないとわからないけど、外見からしても、たぶん野村くん、わたしと同じハイサッキュバスになってると思う」
ハイサッキュバスって……多分、「ハイエルフ」とか「ハイプリースト」とかと同様「上級淫魔」って意味なんだろうなぁ。
「すると、僕の体が女の子になってるのは種族的な特性ってヤツですか?」
「当たり。サッキュバスには女性しかいないからね」
や、やっぱり……。
「それと、後回しにしてた魔界その他についても簡単に説明しておくわね」
メルヴィナさんいわく、この世界──人間界以外にも、天界や魔界と呼ばれる世界があって、そこの住人はそれぞれ神族・魔族と呼ばれているらしい。
おっと、この場合、「住人」というのは「人間」と同じような意味で、その世界においてイニシアチブをとっている種族を指す。あるいは「霊長」なんて呼び方もするんだって。
つまり、天界や魔界にも、こちらで言う動物や植物に相当する生き物はいるってことだね。
で、人間の一般的なイメージにたがわず、天界と魔界──神族と魔族は仲が悪い。ただ、位相的に(って言われてもよくわかんないけど)、両世界の間に人間界があるため、これまで大規模な直接衝突は避けられてきたんだそうな。
そうなると、当然人間界を戦場にしようという考えがあってしかるべきなんだけど……世界そのものの性質の都合で、神族も魔族も人間界では100%実力を発揮できないらしい。
また、人間が自然放出する「精神エネルギー」というヤツも、両種族にとっては魅力的だし、その多種多様な文化文明も、比較的シンプルな社会構造を持つ両種族にとっては(主に知的好奇心の面から)興味の対象となった。
そこで、有史以来、人間界の根本は揺るがさずに、なんとか自分たちの陣営寄りにしようと、両種族の選ばれし者たちが人間界へと出入りし、さまざまな干渉をしてきたんだそうな。
ところが、近年──って言っても100年程前に、人間界も含めた三界の優秀な予言者がこぞって、「このまま神魔が争い続けていると、遠からず三界に壊滅的な打撃をもたらされる」と言う予知をもたらしたんだ。
「──で、慌てた三界の上層部は協議して、ハルマゲドン的な破滅を回避するために、「とりあえず表面的にでも仲良くしましょう」的な政策を打ち出したの」
「なるほど、だから人材交流のための「留学生」ですか」
「そういうこと……ふーん、野村くん、案外と頭の回転も速いのね」
メルヴィナさんは「あら、見直したわ」といった風な目で僕を見ている。
うぅ……できれば、単なる1クラスメイトだった頃にそういう視線を向けてほしかったデス。
「はは……で、諸々了解したうえで聞きますけど、僕はこれからどうしたらいいんでしょう?」
メルヴィナさん側の事情や、こうなった経緯も大事だろうけど、僕としては、それが一番の問題だ。
幸い僕はこのアパートにひとり暮らししてるから、出入りにさえ注意すれば、この部屋で暮らしていくこと自体は不可能じゃない。
けど、さすがにこのまま学校に行っても、絶対「野村真人」と言う男子生徒としては絶対認識してもらえないだろう。
「へぇ……状況を把握したうえで、それでも善後策を考える、か。驚いたわ。見かけより、ずっとポジティブね」
「これでも少なからず落ち込んではいるんですけどね。ただ、ここまで非日常的なことに巻き込まれると、「むしろ命があっただけ、めっけもん」という気分になりまして」
それに、僕はそう簡単に死ねない、死ぬわけにはいかない理由もあるし。
ふと、横を見ると、メルヴィナさんが何だか楽しげに頬を上気させている。
「……(度胸も意思も合格ね。シクったわぁ。こんな原石、なんで男のコの時に気がつかなかったんだろ)」
なにやらブツブツ言ってるけど、大丈夫かな?
「メルヴィナさん、何か心配事? それとも、慣れない術を使って体の調子が悪いとか?」
「え? い、いえ、なんでもないの(うわ、この状況で他人のことを心配できるんだ。ますます、イイわぁ~)。
フフフ……使い魔作成に失敗したときは、ちょっとガッカリしたけど、コレはむしろ結果オーライかしら♪」
まぁ、僕としても、元の姿に擬態できるとは言え主人に絶対服従の使い魔とやらよりも、女になったとは言え自由意思がしっかりある今の状態の方が、いくらかマシではあるかな。比較の問題だけど。
「うん、今後の身の振り方よね。ちょっと待ってね」
そういったメルヴィナさんは、懐からケータイを取り出して、どこかへ電話してる。
「あ、ママ? わたしわたし……ヤダ、詐欺じゃないわ。わ・た・し。メルヴィナよ。うん、ちょっと急きょ相談したいコトが出来たんだけど、ママの幻体、人間界(コッチ)に送れる?」
なんだろう。何だか大ごとになってる予感……。
-つづく-
───────────────
とりあえず、第一話はこんな感じ。支援所投下時の原題は「支援所流・ツイて☆ナイ」で、同名のTSラノベに触発された作品でもありました。
ちなみに本作も地味に「星河丘学園」シリーズのひとつだったり。どこかで見たような名前が出てくるかもしれません。
最後の記憶にあるのは、ド派手なデコレーションを車体や荷台のアチコチに施した、いわゆるデコトラ。最近では貴重な演歌の消費先であるソレが、ちょうどガードレールの途切れた場所から歩道にいる自分に突貫してくるトコロだった。
となると、スーパーマンでも超人ハルクでもない一介の高校生が、4tトラックとタイマン張って、なおかつ奇襲を受けて1ターン無駄にしたうえで勝てるかどうか……いや、生き延びられるかどうかすら、言わずもがなで。
──星河丘学園高等部二年生、野村真人(のむら・まこと)、享年16歳と8ヵ月。(チーーーン!)
第1話.ぼくはしにました?
目が覚めた時は、最悪の気分だった。
「う、うーーーーん……」
なんだろう。妙に頭が重い……だけじゃなくて、全身がダルい。
「ようやくお目覚めね。いえ、むしろそれだけの変化の末に、よくも半日足らずで目が覚めた、と言うべきかしら?」
? なんだ、誰か部屋にいる!?
重たい身体を無理やり起こして声のする方に目をやると、そこには僕と同年代くらいの女の子が、お行儀悪く椅子の背もたれに向かって座っている。
そして、幸か不幸か、僕は、その相手に見覚えがあり過ぎるほどあった。
「え……あれ、もしかして、同じクラスの阿久津真子さん?」
ん? なんか僕の声がおかしいような……風邪かな。
「ふーん、わたしのフルネーム、覚えてたんだ」
僅かに目を細めて僕の顔を品定めでもするかのように見る阿久津さん。
「う、うん、一応これでもクラス委員だし……」
……まぁ、本当は「ちょっと気になる女の子」だから知ってただけなんだけどね。
阿久津真子(あくつ・まこ)さんは、1年の3学期になって転校してきた、物静かな女の子だ。
ちょっと小柄で、どちらかと言うと控えめな性格だけど、意外と文武両道な優等生。しかも、どこか凛とした雰囲気のある美少女とくれば、僕のような平平凡凡たる地味男子としては憧れずにはいられなかった。
「そ。まぁ、名前の件はどうだっていいわ。どうせ偽名だし」
! あ、阿久津さん、何か今スゴいことサラリと言わなかった?
それに、私服姿は初めて見たけど、意外に大胆と言うか……。
両肩から胸元近くまでがむき出しの袖の無い上着と、ちょっと腰を曲げただけでパンツが見えちゃいそうな赤いプリーツスカートを着ている。黒いオーバーニーソックスとの絶対領域が目に眩しい。
キュート&パンキッシュって言うか、何だか、ずいぶん教室で見た時とは雰囲気が違うような……。
「ああ、アレは演技よ。この国の教師って適当に優等生してたら生徒に過度に干渉して来ないからね。
──ところで、キミ、何か気がついたことない?」
え? いきなりそんなコト言われても……って、あれ、阿久津さん、その背中にあるのってコウモリの羽根? もしかしてコスプレ?
「フフ、どうかしらねぇ。作り物がこんな風に自由に動かせるかしら?」
に゛ゃっ!? い、いま、阿久津さんの背中の羽根がバサバサって動いた!
それだけならまだしも、羽根の動きに合わせて阿久津さん自身、ふわって浮いてたような……。
「ええ、それはそうよ。羽根って普通、空を飛ぶためにあるものでしょう?」
ニィッと笑った阿久津さんの口の端からは、「八重歯」と言うには少々尖り過ぎてるような気がする白い犬歯、いや「牙」が覗いている。
それに瞳の色も、日本人というか普通の「人間」にはあり得ないルビーみたいな真っ赤に変わっている。
もしかして……。
「ま、まさかと思うけど、阿久津さんって……人間じゃないの?」
馬鹿げたことを言ってる自覚は自分でもあったんだけど、相手はアッサリ肯定する。
「うふっ、正解。わたしの本名はメルヴィナ・ストライア・フェレース。由緒正しき魔界の十三伯爵家がひとつ、フェレース家の長女よ。
魔界では、「プリンセス・オブ・サッキュバス」と言うほうが通りはいいかしらね」
げげっ! RPGとかで見たことあるけど、サッキュバスって確か女淫魔のことだよね?
もしかして、僕、阿久津さんにエッチなことして精気を吸いとられちゃうの!?
そ、そりゃあ、僕だって男だし、密かに憧れてた阿久津さんが相手というのは、正直嬉しい気がしないでもないけど。
で、でもダメだよ! 僕、まだ未経験だし、せめて最初くらいは恋人と!!」
「──えーーと、野村くん、声に出てるわよ?」
はわっ!?
「し、死にたい……」
もうダメだぁ。憧れてた子に、こんな情けない本音を聞かれるなんて……。
「あら、ダメよ。せっかく苦労して生き返らせてあげたんだから」
……へ!?
「それにしてもニブいわねぇ。普通は身体に違和感を感じてすぐ気がつくものなんだけど。
あるいは、それだけその身体との相性がよくて、すでに完全に馴染んでるのかしら」
えーーっと……何だかさっき以上にイヤな予感がするんですけど。
「フッフーーン……ほら、鏡よ」
阿久津さん(本人いわくメルヴィナさん?)がパチッと指を鳴らすと、僕の目の前にいきなり高さ150センチくらいの姿見が現れた。
けど、魔法みたいなその出来事に驚いている余裕は僕にはなかった。
なぜなら、その鏡に映っている自分の姿が──瞳や髪などの僅かな色の違いを除いて──目の前にいる阿久津さんとソックリになっていたからだ。
「ええぇぇぇーーーーーーーーっっっ!?」
* * *
「それで、僕の今の状態って、阿久津さんが関係してるんだよね?」
あのあと、いったん思い切り大声を出して騒いだせいか、一段落するとかえって僕は冷静なれたみたい。
立ち直った僕をまたも意外そうな顔で見つめながら、彼女はひととおりのことを説明してくれた。
彼女──メルヴィナさんは、魔王の許可を得て魔界から人間界に正式に「留学」に来ていること。そして、それは人間界(こちら)の裏の人間(退魔組織とか魔法協会とか)の上層部にも、話が通っていること。
「このあたりの詳細は、あとでまた説明するわ」
そして、今日の昼過ぎ、街角を散策していたところ、クラスメイトの僕が交通事故で瀕死になっているのを偶々見つけたこと。
なんでも、そのままでは余命はせいぜい数分──何せ腰から下がグシャグシャに潰れていたらしい──だったので、「このまま死ぬくらいなら」と自分の使い魔として再生すべく、魔術で連れ去ったということ。
「どうせなら、僕の体を治すという方向は考えなかったんですか?」
「魔族に何期待してんのよ。仮にそうしたくても、わたし、治癒系の術は得意じゃないし」
で、初めての術だったが大成功し、僕は無事に蘇生、いや転生した……そうなのだが、ちょっとばかし問題があった。上手く行き過ぎたのだ。
「魔術触媒用のコウモリの羽を、術者であるわたし自身の羽で代用したのが原因かしらね~」
本来、メルヴィナさんの目論見では、使い魔となった僕は、本性こそ魔の眷属らしい角や尻尾があるものの、普段は生前と変わらぬ姿に擬態できるはずだった……らしい。
しかし、彼女が無精して触媒を変え、初めての術だけに魔力(きあい)を入れすぎ、さらに僕の体が魔力と異様に親和性が高い体質だったという、3つの偶然が重なった結果、術の方向性が斜め上に変化した。
「単なる使い魔、最下級魔族じゃなく、かなり上級の──それこそわたしと比べても遜色ないくらいの高位魔族に転生しちゃったみたいなのよね。その証拠に……えいっ!」
突然、ブンッと、大ぶりだが剣呑そうなパンチを放ってくるメルヴィナさん。
僕はあわててのけぞり、かろうじてそれをかわす。
「な、何するんですか!」
「ホラね? 魂に絶対服従が刻み込まれた使い魔なら、主の折檻を避けようという意思すら持てないはずだし、そこらの下級魔族なら、手加減したとはいえ、わたしの拳をやすやすとはかわせないわよ」
「そ、そー言えば、確かに」
運痴でケンカの類いがてんでダメな僕とは思えぬ反射神経だったけど……。
「詳しいことは、逆十字病院あたりで精密検査しないとわからないけど、外見からしても、たぶん野村くん、わたしと同じハイサッキュバスになってると思う」
ハイサッキュバスって……多分、「ハイエルフ」とか「ハイプリースト」とかと同様「上級淫魔」って意味なんだろうなぁ。
「すると、僕の体が女の子になってるのは種族的な特性ってヤツですか?」
「当たり。サッキュバスには女性しかいないからね」
や、やっぱり……。
「それと、後回しにしてた魔界その他についても簡単に説明しておくわね」
メルヴィナさんいわく、この世界──人間界以外にも、天界や魔界と呼ばれる世界があって、そこの住人はそれぞれ神族・魔族と呼ばれているらしい。
おっと、この場合、「住人」というのは「人間」と同じような意味で、その世界においてイニシアチブをとっている種族を指す。あるいは「霊長」なんて呼び方もするんだって。
つまり、天界や魔界にも、こちらで言う動物や植物に相当する生き物はいるってことだね。
で、人間の一般的なイメージにたがわず、天界と魔界──神族と魔族は仲が悪い。ただ、位相的に(って言われてもよくわかんないけど)、両世界の間に人間界があるため、これまで大規模な直接衝突は避けられてきたんだそうな。
そうなると、当然人間界を戦場にしようという考えがあってしかるべきなんだけど……世界そのものの性質の都合で、神族も魔族も人間界では100%実力を発揮できないらしい。
また、人間が自然放出する「精神エネルギー」というヤツも、両種族にとっては魅力的だし、その多種多様な文化文明も、比較的シンプルな社会構造を持つ両種族にとっては(主に知的好奇心の面から)興味の対象となった。
そこで、有史以来、人間界の根本は揺るがさずに、なんとか自分たちの陣営寄りにしようと、両種族の選ばれし者たちが人間界へと出入りし、さまざまな干渉をしてきたんだそうな。
ところが、近年──って言っても100年程前に、人間界も含めた三界の優秀な予言者がこぞって、「このまま神魔が争い続けていると、遠からず三界に壊滅的な打撃をもたらされる」と言う予知をもたらしたんだ。
「──で、慌てた三界の上層部は協議して、ハルマゲドン的な破滅を回避するために、「とりあえず表面的にでも仲良くしましょう」的な政策を打ち出したの」
「なるほど、だから人材交流のための「留学生」ですか」
「そういうこと……ふーん、野村くん、案外と頭の回転も速いのね」
メルヴィナさんは「あら、見直したわ」といった風な目で僕を見ている。
うぅ……できれば、単なる1クラスメイトだった頃にそういう視線を向けてほしかったデス。
「はは……で、諸々了解したうえで聞きますけど、僕はこれからどうしたらいいんでしょう?」
メルヴィナさん側の事情や、こうなった経緯も大事だろうけど、僕としては、それが一番の問題だ。
幸い僕はこのアパートにひとり暮らししてるから、出入りにさえ注意すれば、この部屋で暮らしていくこと自体は不可能じゃない。
けど、さすがにこのまま学校に行っても、絶対「野村真人」と言う男子生徒としては絶対認識してもらえないだろう。
「へぇ……状況を把握したうえで、それでも善後策を考える、か。驚いたわ。見かけより、ずっとポジティブね」
「これでも少なからず落ち込んではいるんですけどね。ただ、ここまで非日常的なことに巻き込まれると、「むしろ命があっただけ、めっけもん」という気分になりまして」
それに、僕はそう簡単に死ねない、死ぬわけにはいかない理由もあるし。
ふと、横を見ると、メルヴィナさんが何だか楽しげに頬を上気させている。
「……(度胸も意思も合格ね。シクったわぁ。こんな原石、なんで男のコの時に気がつかなかったんだろ)」
なにやらブツブツ言ってるけど、大丈夫かな?
「メルヴィナさん、何か心配事? それとも、慣れない術を使って体の調子が悪いとか?」
「え? い、いえ、なんでもないの(うわ、この状況で他人のことを心配できるんだ。ますます、イイわぁ~)。
フフフ……使い魔作成に失敗したときは、ちょっとガッカリしたけど、コレはむしろ結果オーライかしら♪」
まぁ、僕としても、元の姿に擬態できるとは言え主人に絶対服従の使い魔とやらよりも、女になったとは言え自由意思がしっかりある今の状態の方が、いくらかマシではあるかな。比較の問題だけど。
「うん、今後の身の振り方よね。ちょっと待ってね」
そういったメルヴィナさんは、懐からケータイを取り出して、どこかへ電話してる。
「あ、ママ? わたしわたし……ヤダ、詐欺じゃないわ。わ・た・し。メルヴィナよ。うん、ちょっと急きょ相談したいコトが出来たんだけど、ママの幻体、人間界(コッチ)に送れる?」
なんだろう。何だか大ごとになってる予感……。
-つづく-
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とりあえず、第一話はこんな感じ。支援所投下時の原題は「支援所流・ツイて☆ナイ」で、同名のTSラノベに触発された作品でもありました。
ちなみに本作も地味に「星河丘学園」シリーズのひとつだったり。どこかで見たような名前が出てくるかもしれません。