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『泳げ、チハヤちゃん!!』 その1

 本日から、2ちゃんの「立場交換」スレに投下した作品、「泳げ、チハヤちゃん!!」を微修正しつつ掲載。
 この話は、私のα世界線での物語のひとつで、「入学案内 ~ようこそ、星河丘学園へ~」のメインキャラのひとり、天迫星乃の十年後の姿も登場します。



泳げ、チハヤちゃん!!』 その1


[第一話.恩師と卒業生

 夏休みを間近に控えた7月のとある日曜日。
 とある小学校の教師をしている女性、天迫星乃(あまさこ・ほしの)は、外出先からの帰路で見覚えのある少女と顔を合わせた。
 「「あ……」」
 ほんの一瞬、お見合い状態になってしまったが、そこは年長者だけあって、星乃の方から、優しく声をかけた。
 「こんにちは、武内さん。お友達とプールかな?」
 彼女とその連れが手にしているビニールカバンから推測して、そう尋ねてみる。
 「あ、はい。えっと、お久しぶりです、星乃先生」
 昨年度担任したクラスの女生徒は、そう言ってペコリとお行儀よく頭を下げた。
 じゃじゃ馬と言うより腕白と評した方が良さそうな、元気で活発な娘だったのに、たった1年足らずでここまで変わるとは……。
 小学六年生と中学生一年生では、それだけ大きな違いがあるということなのだろう。彼女が進学した中学(実は星乃の母校)がそれなりに名門校であるという点も、いくらかは関係しているのかもしれない。
 「そう。武内さんのことだから、もう心配ないと思うけど、気を付けてね」
 「はい、わかりました。あの……星乃先生、水泳とか色々、ありがとうございました!」
 心から感謝していることがよくわかる、シンプルだが素直な言葉だった。
 「ふふ……いいのよ。先生は武内さんの担任だったんだし、それに一生懸命頑張る子は、先生、大好きだから」
 「いろんな意味で」という言葉は心の内に留める。
 学生の頃からいわゆる百合系の傾向が強い彼女だが、さすがに元教え子、それも13歳にもならないような娘相手に自重するくらいの分別はあった。
 「じゃあ、お友達を待たせては悪いから、先生は帰るね。さようなら、武内さん」
 手を振り颯爽と歩き去る彼女を、元教え子の少女とその連れの女の子が、憧れるような眼差しで見ているのを感じる。年下の子達からそんな目で見つめられるのは、照れ臭くもあるが、やはり嬉しいものだ。
 (それにしても……)
 心の中で、先程の少女──武内ちはやに関するある秘密を思い出して、星乃はクスリと微かな笑みを漏らした。
 (まさかたった1年で、あのコがあんな風に「ローティーンの少女」としての暮らしに完全に馴染むとはね~)
 まぁ、私も他人のコトは言えないけど……と、僅かに苦笑の混じった述懐を抱く星乃。

 やや小柄で多少童顔気味ではあるが、どこから見ても魅力的な若い女性である天迫星乃だが、高校1年生の頃までは「星児」という名でごく普通の男子だったという経歴を持っていたりする。
 高1の秋に、とある事情(事故?)から女性、それも遺伝子レベルで完璧にSEX:Femaleになってしまい、色々人に言えない苦労も体験してきた。
 もっとも、10年近く経った今では完全に女性としての生活に馴染んでいる。性自認も「女」になって久しいし、とりたてて不満もないのだが。

 そんな彼女が先程会った「少女」ちはやも、またいささか特殊な事情を抱えている子だった。簡単に言えば、「彼女」もまた1年前までは、「武内千剣破」という16歳の少年だったのだ。
 ──いや、この表現は正確ではないだろう。「彼女」は、星乃とは異なり、少なくとも肉体的に見れば、いまだ「男性」のままのはずなのだから……。
 信じられないことに、ちはやは、神様に頼んで妹と立場を交換した結果、自分達以外の周囲の人間から「現在の立場」にふさわしい人間として扱われるようになった……らしい。
 「らしい」と言うのは、当時の星乃の目からも、「彼女」が自分の担任するクラスの女生徒にしか見えなかったからだ。
 ただ、星乃の場合は自らの経験もあるし非常識な知り合いが多いこともあって、ちはやの不審な行動から、何か事情があることに気づいて、やんわりと問いただしてみたのだ。
 結果、秘密をひとり(いや、妹も含めてふたりか)で抱えることにストレスを感じていたちはやはアッサリ真相を告白し、半信半疑ながらも彼らの「立場交換」をフォローすべく星乃はいろいろ面倒をみることになった。

 そして、ちょっとした大騒動の末、その「立場交換」を解除する手段が一時的に焼失してしまい、以来、元兄と元妹は、現妹&現兄として暮らしている……というワケだ。
 「一時的」と表現したものの、あの様子では1年経った今も復旧していないのだろう。今の状態が長引くようなら、いっそこの先も入れ替わったままの方が幸せかもしれない……と、星乃は夢想したりもするのだった。



[第二話.兄と妹と神様と

 事の始まりは、至極ありふれた兄妹の雑談だった。

 歳の近い兄妹と言えば、幼い頃はともかく、それなりの年齢になってくると、普通はどこかよそよそしくなるか、あるいは兄が妹に過保護になるかの二択だろう。
 その点、彼ら──武内家の兄妹、千剣破(ちはや)とかおるは、兄が16歳、妹12歳になっても、非常に仲が良く、いい意味で「親しい友達」のような関係を保っていた。
 これは、ふたりとも「明るく元気でアウトドア派」という基本的な性向が一致していたのに加え、兄にやや子どもっぽいところがあり、妹はボーイッシュな面が強かったため、よりいっそう趣味や嗜好、思考が近かったことが理由だろう。
 兄妹は無論同級生達と遊ぶことも多いが、家に帰ればふたりでゲームしたり、休日は一緒にサイクリングに行ったりと、共に過ごす時間も多かった。

 6月も終わり、そろそろ梅雨もあけるという時季のある日曜日。何気なく話をしていたふたりは、来週からプール開きだと言う話題になった。
 「はぁ~、今年もユウウツな季節が来たよ」
 実は、この兄妹、スポーツ好きで運動神経も悪くないのに、泳げないのが泣き所だった。
 溜め息をつく千剣破に対して、かおるはどこか得意そうだ。
 「あれあれ~、お兄ちゃん、まだ泳げないのぉ?」
 自分と同じくカナヅチであるはずの妹の余裕に、千剣破は不審を覚える。
 「! も、もしかして……」
 「へっへーん、ボク、もう泳げるようになったもーん!」
 なんでも、去年そして今年のかおるの担任である先生は体育大卒で、学生時代に水泳の選手だったこともあって泳ぐのが非常に上手く、昨年の水泳の授業で見事に妹のカナヅチを直してくれたらしい。

 「かおるの担任って、こないだ家庭訪問に来たあの若い女の先生だよね。美人だし優しそうだし、羨ましいなぁ」
 「うん、ホッちゃん──星乃先生は、学校でも人気あるし、ボクも大好きなんだ。お兄ちゃんも、先生に習えば、すぐに泳げるようになるよ!」
 「はは、本当にそう出来たらよかったのにね。ふぅ……」
 元気がない兄に不審を覚えたかおるが詳しく聞いてみたところ、実は夏休みにクラスの親しい男女数人と海に遊びに行く予定があるのだという。
 「はぁ……このままじゃあ、桐生院さんにも笑われちゃうだろうなぁ」
 密かに憧れている少女にカナヅチがばれるのが、どうにも気が進まないらしい。
 「そうなんだぁ。お兄ちゃんも先生に習えればよかったのにね」
 兄想いな妹が気の毒に思ってそんな事を呟いた瞬間。
 『話はすべて聞かせてもらった! その願い叶えて進ぜよう!』
 ふたりがいる座敷の天井付近一角にこしらえられた神棚の辺りがピカーと光った。
 「「! もしかして……!?」」
 『呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーーン!』
 今時の子供は知らないような口上ととともに、ポンッ! 身長15センチほどの小さな女の子が宙に姿を現す。
 明らかに人間ではないこの少女の名は、須久那御守(すくなみかみ)。
 武内家の守り神で、本人いわく超有名な神様の分霊──分身みたいなものらしいが、子どもの頃に偶然彼女の存在を知ったこの兄妹は話半分くらいに思っている。
 「ナミちゃん、久しぶりだね~」
 「2年ぶりくらいだっけ。どしたの急に?」
 その証拠に、彼らの語りかける言葉はあたかも「何年かぶりに会った幼馴染」に対するもののように気安い。
 「──いや、自分で言うのも気が引けるけどさ、汝ら、自分ん家の守護神である我をもっと敬おうよ」
 そろそろ子どもじゃないんだからさぁと、ガックリ肩を落とすナミこと須久那御守だが、言われた兄妹の方は、「何言ってんの、コイツ?」みたいな不思議そうな目をしている。

 「ま、まぁよい。ところで……話はすべて聞かせてもらった!」
 「話って……お兄ちゃんが未だ泳げないコト?」「おふぅ!」
 妹の悪気のない言葉に密かにダメージを受ける兄の千剣破。
 「うむ。千剣破は早く泳げるようになりたい、かおるはそれに出来れば協力したいと思っておる。そうであろ?」
 兄妹は顔を見合わせ、揃ってコクンと頷く。
 「話によれば、かおるの師は水練の達人らしいではないか。要は千剣破がその師に直接泳ぎを習えば問題は解決するのではないかえ?」
 「まぁ……」「そう、かな」
 「なれば簡単じゃ!」
 そして、そのための「方策」をナミから聞いた時、ふたりはさすがに驚いたが、好奇心旺盛(と言うか、歳のわりに子どもっぽい)千剣破が妙に乗り気になり、かおるとしても興味はあったので、ナミの提案は受諾されることとなった。
 「よしよし。それでは、ふたりとも神棚の前に立つがよい」
 神棚にちょこんと腰かけたナミは、キリリと顔つきを引き締め「キエーッ!」と気合を入れると、手にした大幣(おおぬさ)をふたりに向かって振りかざした。
 大幣から、細かい滴のようなようなものが飛び散ったかと思うと、千剣破たちの頭に振りかかる。
 「あ……れ?」「なんか……身体が」
 興味津津でナミのすることを見つめていたふたりだが、身体に違和感を感じたのもつかの間、そのまま眠るように気を失ってしまった。

  * * *  

 ちはやが意識を取り戻したのは、それから1時間ほどしてからのことだ。
 「あ、ちぃちゃん起きた?」
 どうやら、馨の方が先に目を覚ましていたらしい。ふたりでデートに出かけている両親が、まだ帰って来てないようなのは幸いだった。
 ボンヤリした状態のまま身を起こすと、すぐそばの座卓の上には、ナミがコースターを座布団代わりに正座して、ポリポリとスナック菓子をかじっていた。
 「あ……えっと、あれからどうなったの?」
 実はふたりとも、ナミからは「我の神術でふたりの立場を入れ換え、ちはやが小学校に、馨が高校に通えるようにする」としか聞かされていなかったのだ。
 できればもっとキチンと説明してから実行して欲しいとは思うものの、やってしまったものは仕方がない。泥縄だが、ナミに詳しい解説をしてもらった結果、以下のようなことが判明した。

 一、現在のふたりの立場──武内家の長男&長女、兄と妹、高校一年生と小学六年生……といった諸々が、すでに入れ替わっているということ。ただし肉体そのものと名前は元のままである。
 二、この術の効果が及ぶのは、現在はこの家の中だけだが、今夜には町内、明日の朝になればこの街全体に広がり、以後も少しずつ広がっていくこと。
 三、術に伴って発生する種々の不都合を極力軽減するため、ふたりの身長を160センチにならして統一したこと。
 四、ちはやが25メートル泳げるようになれば、その日の夜に術を解除すること。

 「一と二はわかるけど、三はなんで?」
 母親似の千剣破は男子高校生としては小柄な163センチ、大柄な父に似たかおるは逆に女子小学生としてはかなり長身の158センチだが、それでも5センチ程の差があったのだが。
 「あくまで立場を入れ換えただけじゃからな。逆に聞くが、あまりに背が低い男子や高過ぎる女子は、変に目立つし不都合もあるであろ? 衣服の問題もあるしの」
 確かに、元のままの千剣破がかおるの服を着るのはサイズ的に無理があり過ぎる。逆も然り。
 術を解いて元に戻れば背丈も戻ると聞かされ、せっかく伸びた身長を減らされてしまったちはやも不承不承了解した。

 「納得したようじゃな。それでは、ふた親が戻る前に、お主らの着物を取り換えておくがよい」
 「ちょ……「うん、わかったよ」……って、ええっ!?」
 ちはやが抗議しようとする前に、馨があっさり頷いてその場でTシャツに手をかける。
 そのまま、ピンクのロングTシャツ、デニムのホットパンツ、さらにはショーツまでも、パパパッ!と脱ぎ捨ててしまう。いっそ気持ちいいくらいの脱ぎっぷりだった。
 「わわっ、ちょ、ちょっと、兄さん!」
 真っ赤になって慌てるちはやは、自分が馨のことをごく自然に兄呼ばわりしたことも気づいていない。
 「ん? 何?」
 対して、スッポンポンな馨の方が、ごく自然体のままだ。
 (お、落ちつかないと。ぼくはロリコンじゃないんだから、馨兄さんのはだかなんて見たって……うぅ、やっぱりなんかはずかしい)
 矛盾した感情を抱えつつ、何とか呼吸を整え、自分もその場で服を脱ごう……として結局果たせず、風呂場に掛け込んでTシャツとショートカーゴパンツ、トランクスを脱ぐちはや。

 裸のままでは落ち着かず、無意識にレモンイエローの(本来はかおるが使っていた)バスタオルを身体に巻いて、胸元までしっかり隠してから、脱いだものを抱えて座敷に戻る。
 そのまま互いの服を交換すると、馨の方は躊躇いもなくトランクスに脚を通し始めた。
 (こ、こんなの絶対おかしいよ!)
 対するちはやの方は、顔を赤くしたまま目をそむけ、交換に渡された衣類を抱えて再び風呂場の脱衣所へ戻り、自らの裸身を恥じるようにそそくさと少女の服を身に着ける。
 本来なら、いくら仲の良い妹とは言え、年下の女の子がついさっきまで着ていた服を下着に至るまで平気で身に着けることには、大いにためらったはずなのだが……。
 どういうワケか、この時のちはやの脳裏からは、そういった意識がスッポリ抜けていた。
 「はぁ~、やっと落ち着いたかも」
 元より夏場と言うこともあって軽装だし、フェミニンな服装を好まないかおるの着ていたものだ。むしろ中性的と言っても差し支えのない格好ですらある。
 しかしながら、ちはやは、鏡に映った姿──少女向けブランドのロゴの入ったピンク色のロングTシャツと、ほとんど太腿の付け根までむき出しのホットパンツ姿の自分から目を離せなかった。
 中性的とは言え紛れもなくそれは「少女」の装いであり、それを自分が着ていることに違和感を感じずにはいられないはずなのだが、その感覚はごく僅かで、むしろフィット感と言うか、今の状態こそしっくりくるような気がしたのだ。
 そんな自分に気づくと、フルフルと頭を振り、ワザと乱暴に洗面台で顔を洗ってから、ちはやは馨達が待つ座敷へと戻った。

 「ねぇ、ナミの術って、ぼくと馨兄さんの「立場」を入れかえただけなんだよね? 記憶とか性格とかは、いぢってないよね?」
 多少落ち着いたところで、心配になったので聞いてみる。
 「うむ。基本的にはその通り。しかし……記憶と言うか一部の知識については、交換してある。いくら何でも小学生レベルの知識で、まともに高校生活を送れるとは思わぬであろ?」
 「それは……うん、しかたないかも」
 体育以外の成績があまり芳しくない千剣破と異なり、かおるは学業面でも秀でた文武両道な子だったが、さすがにそのままでは高校の授業についていけまい。
 「代わりに汝には「小六女子には必須の基礎知識」が備わっておる。その点は心配は無用」
 これまでもミナは(時には突拍子もないことをしでかすとは言え)、基本的には武内家の守り神らしく千剣破達のことを色々と気遣ってくれてきた。今回のコレも、千剣破の願いを汲んでのことなのだから、悪いようにはすまい。
 そう考えると、ちはやも幾分気が楽になった。
 「そうだよね。じゃあ、めったにできない経験なんだし、なりゆきにまかせて楽しんでみよっかな!」
 いつもの楽観思考を取り戻して一気に顔色が明るくなった「妹」の様子に苦笑しつつ、馨は密かに心の中で呟いていた。
 (でも、それにしては、僕もちぃちゃんも、随分元の「ボクたち」とは性格とか変わってるような気がするんだけどなぁ……)

 ──そう、確かにミナは直接的にふたりの性格に干渉したワケではない。
 しかし、立場を交換したことによって、ふたりはそれぞれ「もし自分が女(男)だったら、どうするか」と言うシミュレーションを無意識に行い、その結果に基づいて行動してたりするのだが……それに気付いている者は、この時点ではまだ誰もいなかった。

-つづく-

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この作品大好きです( '∇^*)^♪
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Author:(KCA)
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