[追記(2010/10/14):生産年齢人口が減るとデフレ? その2を投稿しました]
要約:
通貨・準通貨増加率と物価上昇率の間には高い相関がある。
一方、人口増加率、15-64歳人口比率の変化は、物価上昇率とは無相関。
通貨・準通貨増加率と物価上昇率の間には高い相関がある。
一方、人口増加率、15-64歳人口比率の変化は、物価上昇率とは無相関。
@YoichiTakahashi氏のTweet
デフレは人口減少のためだと信じ込んでいる人がいる。最近10年間の人口増加率平均と物価上昇率平均を世界各国で散布図を作って見る。通貨増加率平均と物価上昇率平均も作って見る。世銀サイトで小一時間でできる。前者は無相関、後者は正の相関なので、冒頭の誤解がなくなる。http://twitter.com/#!/YoichiTakahashi/status/26993801691
何とかさんの反論でなく、学生への課題でやってみただけです。世銀データがただで使えてエクセルの勉強になるのは素晴らしい。そのオマケに反論になるなら、さらにいい。ついでに課題ネタですが、非生産人口比率の増減も無相関です。それも反論になるなら、どうぞ。http://twitter.com/#!/YoichiTakahashi/status/27203549840
が気になったので、世界銀行Databank(http://data.worldbank.org/)のデータを使って相関係数を出してみました。
(※通貨増加率、人口増加率と物価上昇率については、すでに@sakak氏がこちらで計算されてます*1)
今回はR(http://cran.r-project.org/)を使って計算しました。使用したコードはこちらです。
今回使用したのは以下のデータです。
- 年間通貨・準通貨(M2)増加率:(Money and quasi money growth (annual %))
- 年間物価上昇率(消費者物価):Inflation, consumer prices (annual %)
- 年間人口増加率:Population growth (annual %)
- 15-64歳人口比率:(Population ages 15-64 (% of total))
- (参考)年間物価上昇率(GDPデフレータ):Inflation, GDP deflator (annual %)
サイトに掲載されている全ての国を対象としました。
2000-2009年のデータの平均値を計算し、物価上昇率に対して散布図をプロット、相関係数を計算します。
15-64歳人口比率については、前年との差をとりました。なお、上記のデータの少なくとも1種類が10年間で1年分も無い国、およびジンバブエは除いています。
通貨・準通貨増加率と物価上昇率とで散布図をとると、以下のようになります。相関係数は+0.6213.
人口成長率と物価上昇率との散布図は以下の通りです。相関係数は+0.0719.
最後に、15-64歳人口比率の差分と物価上昇率の散布図です。相関係数は-0.0517.
人口増加率、15-64歳人口比率の変化は、物価上昇率とは無相関のようですね。
一方で、通貨・準通貨増加率と物価上昇率の間には高い相関があるようです。
なお、相関係数の一覧は以下のようになりました。
通貨・準通貨増加率 | 人口増加率 | 15-64歳人口比率(前年差) | 消費者物価増加率 | GDPデフレータ | |
---|---|---|---|---|---|
通貨・準通貨増加率 | 1.00 | 0.03 | 0.03 | 0.62 | 0.67 |
人口増加率 | 0.03 | 1.00 | 0.09 | 0.07 | 0.10 |
15-64歳人口比率(前年差) | 0.03 | 0.09 | 1.00 | -0.05 | -0.03 |
消費者物価増加率 | 0.62 | 0.07 | -0.05 | 1.00 | 0.97 |
GDPデフレータ | 0.67 | 0.10 | -0.03 | 0.97 | 1.00 |
付
上の散布図だと外れ値が多いんでない?という人もいらっしゃるかと思ったので、Spearmanの順位相関係数も求めておきました。これは、2変数の間でそれぞれの順位を比較する相関係数で、
- それぞれの順位が一致しているほど1に近くなる
- それぞれの順位が逆になっている場合は-1に近くなる
- 関係なければ0に近づく
数値は以下の通りです。貨幣の増加率と物価の変化率との順位相関係数は+0.70です。一方、人口増加率や15歳-64歳人口比率の変化と物価変化率との間では、それぞれ+0.05,+0.03となりました。結果はピアソンの相関係数と大差はないようです。
通貨・準通貨増加率 | 人口増加率 | 15-64歳人口比率(前年差) | 消費者物価増加率 | GDPデフレータ | |
---|---|---|---|---|---|
通貨・準通貨増加率 | 1.00 | 0.12 | 0.09 | 0.70 | 0.73 |
人口増加率 | 0.12 | 1.00 | -0.03 | 0.05 | 0.13 |
15-64歳人口比率(前年差) | 0.09 | -0.03 | 1.00 | 0.03 | 0.09 |
消費者物価増加率 | 0.70 | 0.05 | 0.03 | 1.00 | 0.81 |
GDPデフレータ | 0.73 | 0.13 | 0.09 | 0.81 | 1.00 |
注
*1@sakak氏の計算と数値が異なるのは、15-64歳人口比率のデータが無い国を省いているためです。
参考
生活の記録 2010-10-12 人口減少とデフレ
東京大学教養学部統計学教室編(1991)『統計学入門(基礎統計学)』
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