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三陸鉄道けん引 出発進行 5年ぶりに新人運転士誕生
 | 初めての列車運行に臨む小松さん=1日午前10時20分ごろ、三陸鉄道久慈駅 |
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東日本大震災で被災し、一部区間の休止が続く第三セクター三陸鉄道(岩手県宮古市)に1日、5年ぶりに新人運転士が誕生した。震災直後の4月1日に入社した小松翔さん(20)=大船渡市出身=で「地域に愛される運転士に」と歩み始めた背中を、先輩社員や乗客が温かく見守っている。
午前10時20分、久慈駅(久慈市)。帽子を直して息を整える。発車のベルが鳴ると、小松さんは緊張した面持ちで、しっかりと指さし確認した。
「出発、青、進行」
初めて任された列車は潮騒と紅葉の中を、田野畑駅(田野畑村)に向けて走り抜けた。
大船渡市の実家は津波の被害を免れたが、就職が内定した三鉄は大きな被害を受け、担当者としばらく連絡がつかなかった。一時は内定取り消しも覚悟したが、無事、4月に入社できた。三鉄にとっては12年ぶりの新卒新入社員だった。
震災後の混乱で、先の見えない日々が続いた。入社後、2週間はがれき拾いが仕事だった。運転士志望ではなかったが、運転も乗客への対応も丁寧な先輩運転士たちの姿に憧れるようになった。
運転士の国家試験に向け、仕事の後、1日2時間の勉強を重ねた。ことし6月に運転免許を取得し、10月には社内試験にも合格した。独り立ちが決まり、1日の辞令交付式で「運転士 小松翔」と書かれた名札を受け取った。
指導責任者の米沢務運転総括は「式中、涙が出そうだった。彼は人一倍、三鉄や地域の復興に意気込んでいる。頑張ってほしい」と目を細める。
久慈−田野畑駅間約35キロを2往復。心配だった停車も問題なくこなし、ようやくほっとした。
小松さんは「緊張したが、自分では合格点。お客さまに安心を届け、三鉄を引っ張っていく運転士になりたい」と話した。
来年4月上旬には南北リアス線が全線開通する。小松さんの運転区間も久慈−宮古駅間に広がる。
2013年11月02日土曜日
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