その他

五輪決定の陰で「2度目の立ち退き」、国立競技場の建て替えで

2013年 09月 19日 17:59 JST
 
  • Mixiチェック

[東京 18日 ロイター] - 国立競技場近くの公営団地に住む甚野公平さん(79)が広げた白黒の写真には、都心にあった自宅の前で記念撮影する家族の姿が写っている。しかし当時の自宅はもうない。

1964年に開催された東京五輪の施設建設のため、立ち退きを迫られ、取り壊されてしまったのだ。そして2020年に再び五輪が東京にやってくるのを前に、甚野さんはまたも立ち退きを迫られている。

前回の東京五輪で、開会式と閉会式を行った国立競技場は現在、建て替えが予定されている。それに伴い、甚野さんと妻が暮らす国立競技場近くの公営団地は取り壊しの対象となってしまった。

甚野さんは五輪との「つらい縁」を感じたという。「国にとってはいい縁かもしれないが、わたしにとっては、ここから離れるのはいやな思い出になる」と甚野さんは胸の内を明かした。

甚野さんは現在の国立競技場の近くで生まれた。第2次大戦中に自宅を焼失した甚野さん一家は、元の家があった場所から20メートルほど離れた場所に居を構え、そこでたばこ店を始めた。

しかし64年の東京五輪開催が決まると、他のおよそ100世帯とともに立ち退きを求められた。たばこ店を続けられなくなった甚野さんは、狭い部屋で妻と2人の子供たちと暮らしながら、洗車の仕事でどうにか生計を立てていた。65年に現在の団地に移り、たばこ店も再開することができた。

それからおよそ50年、甚野さんは再び立ち退きを告げられた。

住み慣れた家を離れなくてはならないということは、甚野さんにとって「宝物がなくなる」のと同じことだという。「五輪のために地域とのつながりがなくなってしまう不安、寂しさ、つらさ」を感じると甚野さんは話す。

来月80歳になる甚野さんは次に住む場所の当てもなく、途方に暮れている。甚野さんの団地にはおよそ200世帯が居住しているが、多くは高齢者で同じような悩みを抱えているという。

「100年に1回なら我慢もする。100年に2回なんて言うのはとんでもないこと。こんなことはなくていい」と甚野さんは憤りを隠さない。

 
写真

接近する米中の「思惑と打算」

米国はスパイ行為や中東政策で同盟国との関係に亀裂が入っている一方、習近平体制の中国とは接近しつつある。
  記事の全文 | 特集ページ 

注目の商品

9月18日、国立競技場近くに住む甚野公平さんは、1964年の東京五輪開催のために自宅の立ち退きを迫られたが、2020年の東京五輪を前に再び立ち退きを迫られている。写真は以前の自宅前で撮った家族写真を見せる甚野さん(2013年 ロイター/Issei Kato)
写真

東北楽天ゴールデンイーグルスは初の日本シリーズに進出。優勝した場合の仙台への経済効果は約52億円と推定されている。

外国為替フォーラム

最新ニュースのほか、ブログやコラム、スライドショーなどの最新情報をお届け