「橋下維新」に公明・創価学会が嫌悪感
「右旋回」の維新に食い込む「幸福の科学」。公明党大阪市議団も「アンチ橋下」にポジション変え。
2013年5月号 POLITICS
とはいえ公明の協力なしでは橋下市政は暗礁に乗り上げ大阪都構想も瓦解しかねない。そこで、6月に予定される東京都議選(定数127)での両党の協力の可能性が探られたという。維新は都議選でも攻勢に出て現有3議席から一気に過半数を狙い64人以上を擁立しようとしている。一方、公明党・創価学会にとって都議選は特別な重みがある。都議選の候補者調整と大阪市議会での協力がバーターできないか。ところが、維新の候補者調整の主導権を握ったのは旧太陽系。「都議会での勢力拡大が最優先」と大阪のローカル事情などには見向きもしない。「みんなの党との調整は進んでいるが、公明とはもうガチンコでいくようですね」と大阪の維新関係者はため息をもらす。
さらに、維新と公明は国政でもさや当てを演じている。石原が改憲に消極的な公明に触れて「自民党と公明党の連帯っていうのはどうなるんですかねえ」と露骨にあてこするなど、憲法改正を梃子に連立の座を入れ替わろうと言わんばかりの動きを公明は苦々しく見ている。
西田譲議員の「仰天」主張
そこへ、思わぬところで公明が顔色を変えるできごとが起きた。3月13日の衆院予算委で維新の西田譲議員が「福島第一原発事故では微量のセシウムが飛散しただけだ。低線量のセシウムは人体に無害だ。医学や科学に反する強制避難を直ちに全面解除するべきだ」と仰天の主張を繰り広げたのだ。西田の論法は幸福の科学の機関誌「ザ・リバティ」や幸福実現党の矢内筆勝党首が主張する内容そのまま。「維新には幸福の科学が食い込んでいるのか」という衝撃が広がった。
先の衆院選で幸福の科学の信者や幸福実現党の候補者が維新の公認を受けて議席を得たのではないかとの噂が絶えない。西田は小林興起前衆院議員の元秘書で、自民党の千葉県議だった人物だが、図らずも噂を裏付けた格好だ。維新の関係者が声をひそめて打ち明ける。
「他にもいるし、まだ増えそうです。維新は参院選では3千万円もの選挙費用の自己負担を求めているので候補者が集まらない。幸福実現党が松井一郎幹事長らのところへ持参金付きで話を持ち込んでいるらしいですよ。松井さんだけでなくて東軍(旧太陽系)も受けているようですがね……」
創価学会と幸福の科学は犬猿の仲。「維新が信用ならないのは、橋下の手法もあるが議員の質が余りにもひどいからだ。西田の質疑はその典型だ」と学会の幹部は嫌悪感を隠さない。
参院選でせめぎあい、中央での不信も高まる中、このところ公明党大阪市議団の態度が目立って変わってきた。市立幼稚園の民営化、市営地下鉄・バスの民営化、水道事業の統合、と橋下市長肝いりの政策がどれも公明が反対に回って動かない。公明党市議は「我々は市民の利益に本当になるのかを考え、是々非々で対応する」と涼しい顔だが、橋下は少数与党の悲哀を味わわされている。
「改憲」を前面に押し立て威勢はいいが、旧太陽の党との妥協と安倍自民党への接近で「維新らしさ」も「野党色」も見えなくなり、維新の存在感は薄れる一方だ。公明党との関係がこのままこじれれば、大阪市政もお先真っ暗。橋下の行く手は全く見通しが立たなくなってきた。(敬称略)
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