ここは椎名系赤松系作品を主とする特定の二次創作支援投稿サイトです。
トップページ > 神代ふみあき書庫 > 非赤松椎名系作品 > 歌う恋姫無双物語 > エピローグ
大陸全体を覆いつくすような熱気は、無形の方向性を有形のモノに変えつつあった。
それは治安の上昇であり、流通の正常化であり、平和への強い願いであった。
自分たちの子供に、平和な世界を送ろう。
そんな合言葉が、誰のも胸の内に生まれた。
辛いとき、苦しいとき、苦難の時間にあると、其れは擦り切れそうに成るが、しかし、だかしかし、楽器爪弾く歌謡の声を聞けば思い出す。
そう、あの時の熱気を、あの時の熱意を、あの時の決意を。
歯を食いしばり耐えるときもある。
肩を組み耐えるときもある。
衆人全員で跳ね返すときもある。
そう、見つめる先に未だ来ない明日があると信じているから。
桃香様の放浪癖は本能に違いない。
幼かった私がつき従ったあの日々のような毎日を、常に求めている人だから。
もちろん、桃香様は桃香様自身の責任を忘れる人ではない。
でも、楽器を片手にふらりと消えるのは、本当に毎度のことすぎた。
いち早く、桃香様の異変に気づいたものだけが手元の仕事を終わらせてついて行くのだが、手元の仕事に切れ目のない文官連中は一度もついてゆけなくて歯噛みしているだろう。
その点、基本お姫様業の私は公式行事以外での仕事切れがよく、追従率が高い。
まぁ、姉二人が経妊婦なので譲ってくれているという面もあるけど。
この放浪生活で必ず歌う歌がある。
それは「天声歌」と名付けられた歌。
朝焼けの大陸にも夕闇の大陸にも、星空の大陸にも似合う歌。
音楽じゃ伝わらない、声でも伝わらない、天からの歌声。
それがみんなの胸の内側に溢れている限り、心が変わり考えが変わり、それでも平和を望む限り、私たちの大陸に平和が続くと。
桃香様は行く先々で歌い、そして称賛を浴びるときもあり、石を投げられるときもある。
この偽善者め、と蔑む人もいる。
そうだね、そのとおりだね、と涙を流す人もいる。
まさに言葉でも音楽でも伝わらない真理。
まさに言葉でも音楽でも伝わらない心。
それでも桃香様は歌い続けている。
それが何時か伝わり染みてゆくものだと信じて。
「さぁ、シャオちゃん。次の町に行こうか」
「はい、桃香様」
昔より、頭二つは大きくなった桃香様は、見た目小娘だったのが、麗人ってかんじになって、こう、きゅんってくる。
桃香様と第二子以降を生んだ方々も、そんな桃香様にキュンキュンきてがんばった影響としれる。
というか、桂花様って五人も生んでるのよねぇ。
ちょっと頑張りすぎじゃないかしら?
逆に軍師組で朱里だけがなぜか当たらない。
雛里に当たりがでて、本気で自棄酒あおっていたものねぇ。
で、今回あんまりにも不憫だったので、途中で朱里が合流できるように情報を流している。
さすがに可哀想すぎるもの、ねぇ?
だって、後追いで入ってきた諸葛瑾の方が先に妊娠してるって、もう、悲劇以外の何者でもないし。
実際、口さがない豪族なんか、愛がないのでは?とかバカな話まで言い始める始末。
その分、自分の娘たちに機会を与えてくれれば、孫呉の礎になりましょうとか、本末転倒なことを言っていたものだから本気で怒ろうかと思ったら、それを聞いていた桃香様が怒った。
あの怒りは本物で、未だその豪族は桃香様への接近すら許してもらえていない。
加えるに、桃香様の身内への接近も禁じたものだから出自もできないということで、職務まで罷免されてしまった。
桃香様が権力を横暴に使うなんて思いもしなかった私たちだったけど、それ以上に朱里が大切だったという事を思わされた。
この話を聞いた曹孟徳、華琳様はにこやかにほほえんで「首をなぜ跳ねなかったのかしら?」とか言っていたのは本気で怖かった。
だって、一瞬、さわっても居ないのに「絶」が鳴ったんだもの、キンッって!
まぁバカでも身内、速攻で首を跳ねるのは仁義が通らないので、即時実行が施工されないだけなんだけど。
背負いかごに衣類を入れて、楽器を担いで。
時々誰もいないけど歌う。
人が居ても歌う。
畑の真ん中でも歌う。
盛大な滝の前でも歌う。
山よ、海よ、俺の歌をきけ、である。
単純な動作やリズム動作は機械化しやすい。
いわゆる「なれ」である。
しかし、これに歌が入ると一変する。
動きに意志が乗る。
動きに力はこもる。
動きに意味が染み渡る。
共感を呼ぶことモア反感を呼ぶこともある。
声援を受けることも罵声を受けることもある。
歌など腹の足しにならないと言われることもあれば、心が温かくなったと喜ばれることもある。
~angel voice FIER BOMBER
大陸の夕闇、大陸の夜明け。
四季の折々にこの歌が似合う。
さすが熱気バサ○が「クジラ」に向かって歌った歌だ。
シャオちゃんと一緒になってついてくるパンダも白虎も「うおーうおー」してくれるのがうれしい。
「さ、桃香様。そろそろお時間ですよ?」
「ん、わかったよ」
すがりついてくるシャオちゃんと共に、この道を行く。
何に目的もない旅と違って、なんとなく行き先のある旅は、今の立場を思わせるモノがあり、すこし息苦しいけど、それでも歌いながら、歌を歌いながら過ごせるこの生活は最高だ。
「そうだ、今度みんなで赤壁で野営して、みんなで歌おう!」
「桃香様、そういう企画をするときには、朱里か雛里を通して、祭りにしてください」
「・・・えー、家族だけじゃだめ?」
「庶人からの暴動を招きたいのでしたら止めませんけど」
さすがに暴動はいやかなぁ、うん。
「じゃ、また赤壁の戦いの時のように、浮き舞台を作って、派手にやろっか!」
「賛成です、桃香様♪」
じゃららーん、と手に取ったギータ12号をかき鳴らす。
「よっし、じゃ、景気付けに、一曲行くよ!!」
楽器は一本の弦楽器のみ。
でも、心から、心の底から力を振り絞れば、その声は届く。
「おまえのために、帰ってきた、はるか・・・・」
~弾丸ソウル FIER BOMBER
歌う恋姫無想物語~完
(2,350文字)
OU:1人
UA:11,499人
このコメントは、管理者と作家ユーザーに公開されています。
このコメントを閲覧する権限がありません。
完結、おめでとうございます。
これからも、作品を楽しみにしてます。
とうとう終わったのですね……すっっっっごく面白かったです!!この作品のように面白く笑える勘違い作品を楽しみに待ってます。
権限がありません
このコメントは、管理者と作家ユーザーに公開されています。
このコメントを閲覧する権限がありません。