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第二十六話 鳴らされちゃって・・・

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お待たせしました。

とうとう「鳴」りますw

第二十六話 鳴らされちゃって・・・

 桃香に直接訓練された工兵達は、見る見る間に仮設の陣地と舞台を作り上げていった。
 ここは物見台であり、歌姫姉妹が戦意高揚の歌を歌う舞台でもある。
 見た目は華奢だが、戦艦が正面から衝突しても崩壊しないのを確認している。
 ただ、歩兵の段階となるとすり抜けるので、出来るだけ川に迫り出す形で構築されている。


「周総軍師様、対岸でも陣地構築がされています!」
「ふん、向こうでも戦意高揚をしようと言うのだろう、かまわん、気にするな」
「は!」


 影で見る限り、同等の出来だろうが、全くご苦労なことだ。

 今や都の後押しで軍内の人気を誇る「三頭竜姉妹」とやらが歌うのだろう。


 「無位無冠」の「楽士」が。


 この意味を、本当にわかっているのか?都の老害達よ。
 もし本当にわからないのならば、すでに勝負は見えたぞ?









 もう、三時間は歌っている。
 対岸の「天河の歌姫姉妹」と私たち「三頭竜姉妹」は、始め、お互いの歌をつぶしあうように歌っていた。
 が、あまりにも見苦しかったので、交互に歌うことを提案したところ、紅組頑張れ白組頑張れ的な歌合戦になってしまった。
 まぁ、向こうが歌っている間休めるのは、三人しかいないこっちには有利なんだけどね。


「そろそろ向こうが終わりますわよ?」
「うむ、では準備せねばな」
「お姉さま方、行きましょう!」
「「おう!!」」


 手をはずしていた楽器に気持ちを込める。
 背筋を伸ばして前を見る。

 未だ冷めやらぬ向こうの兵と、少し気持ちを持って行かれた兵達に声を響かせる。


 向こうの方が人数が多い?
 向こうの方が有名?
 そんなもん、ひっくり返す!








~「チャイナ気分でハイテンション!」ネネ(高垣彩陽)








 なんというか、頭の悪い曲だった。


 ただ、民という物を考えれば、深い言葉や考えなど必要ない。
 そういう意味ではバカバカしいまでに民衆向きの歌だろう。
 下世話な庶人媚び、その日暮らしに生きるような楽士にはちょうど良い話だろう。
 そういう意味では「天河の歌姫姉妹」は不味い。
 人々に考えを起こさせ、そして行動を起こさせる何かがある。
 いわば、闇に隠れた国家転覆の意志を感じる、というものだ。
 表だって公表は出来ないが、そんな存在の筆頭が男だというのだから、都は荒れた。
 なんとしてでも手に入れろと、十常侍は騒ぎ、そして勅命もなく出兵を指示してしまった。
 これは、あからさまな反逆である。
 しかし、その件で彼らが裁かれることはない。
 すでに身代わりを準備しており、実行犯として処刑済みだからだ。
 いや、処刑済みだという形で書類処理がされているので、同じ罪が問えない、そんな機構を老婆たちが作り上げてしまったのだ。
 なんとも恐ろしい、何とも汚らわしい話だ。


「張譲さま、書が・・・」


 送り主は、「曹操」、か。
 ただの挨拶ではないことは間違いあるまい。


「しかし、頭の悪そうな歌だな」
「・・・私が好きですよ?」


 侍女の言葉に、苦笑いしかでてこなかった私だった。










 二つの姉妹の歌合戦は、深夜に及び、兵たちも異常な熱気に朦朧としているようだった。
 そんな中、三頭竜姉妹の歌の順番なのに、両姉妹の舞台から同時に音楽がなり始めた。


 それも、全く同じ曲が。


 響きわたる大太鼓。
 掻き鳴らされる弦楽器の数々。
 それは波のようにさざめいて。
 それは津波のように高まって。


 瞬間、音が消える。


 兵たちが無言で、両舞台に視線を走らせた。


 今までまぶしいぐらいに当てられていた篝火の光が、三頭竜姉妹の舞台に当てられる。
 兵たちは首を振り見てみたが、違和感を覚えた。


 あれ、私たちから結構離れてねぇ?


 明るさや暗さのせいで失っていた距離間が混乱を生む。
 その混乱の波の中、三頭竜姉妹三女、「桃竜」が艶やかな声を響かせる。
 白竜も、金竜も、被せてゆく中で、さらなる声が被さる。
 それは厚みのある、頼りになる声。


 関雲長、槍の三姉妹が一人。
 張翼徳、槍の三姉妹の末。


 五人による艶やかな声は、加わる声に後押しされる。


 張角、天河の歌姫姉妹が一人。ほんわかおねえちゃん。
 張宝、天河の歌姫姉妹が一人。暴走小悪魔っこ。
 張梁、天河の歌姫姉妹が一人。しっかり三女。

 もって生まれた才能と、積み重ねられた声圧が静かな歌に厚みを加える。
 すべての将兵に、すべての人々に訴えかけるような歌の中に聞こえる詩が、言葉が、想いが、これから始まる何かを予感させた。


 唸るような呻くような声にあわせ、三頭竜姉妹の仮面が投げ捨てられた。


 そこに現れた顔を見て、声もない、いや、誰かも解らない都の兵に比べ、孫呉の兵の士気は爆発的に高まった。

 そして、呻きの歌の途切れとともに、歌い手たちは一斉に指さす。
 天を、天河を、未来を、明日を!!






「「「「「鐘(GONG)を鳴らせ!!」」」」」








 そのとき初めて、彼らは気づいた。
 時は今、夜明け前。









~「GONG」JAM project














 響きわたる「ジャン」。
 全方向から鳴り響く「ジャン」に、20万に達するであろう筈の都兵は、軍の体を失っていた。

 津波のような動揺。
 叫び声が、怒声が、混乱の極みにあるかのような状況が視界に広がっていた。
 船を組み合わせた移動櫓を組み合わせた三頭竜姉妹の舞台が今、天河の歌姫姉妹の舞台に隣接し肩を並べた。
 最前線の兵ほど混乱し、その情報が上がらない影響で後方がさらに混乱しているのが手に取るように解る。


「公孫家より伝令!」
「かまわないわ、読み上げなさい」
「『当方、反対側を押さえた。後方は別隊あり』」
「あら、西涼かしら?」


 いいえ違うわね。
 西涼は都を強襲してるはずですもの。
 天子の治める都に西涼が攻め込むというのはおかしな話だけど、その言い訳が「悪しき官卑から天子を救う!」だったかしら?
 どこから美味しい言い訳を持ち出したのやら。

 ならば?

「伝令!!」
「いいわ、ここで聞く」
「都軍後方より軍勢5万!」
「牙門旗は?」
「『劉』『厳』『魏延』『黄』でございます」

 あら・・・。
 劉璋、間に合ったのね。
 ずいぶんな行軍だけど、大丈夫かしら?

「上流より船団多数!!」
「牙門旗は?」
「・・・『馬』『董』、西涼連合です!!」

 これで、やっと数で同等ってところね。
 まったく、何で船なのかしら?騎兵に船を乗せて何の得があるのやら。



 でも、頃合い。




「牙門旗をあげなさい、季衣!!」
「はい、華琳様!!」

 立ち上げられた「曹」の旗。
 我が将達が、次々と旗をたなびかせる。


「これより我らは、正しき天下のために武器を取る。奇々怪々な都政治に巻き込まれれば、生涯の栄達は難しかろう。だが、聞けい!! 都での栄達は難しくとも、この曹孟徳がとりあげよう、この曹孟徳が評価しよう、これより先の世の明かりを灯す我がソナタ達を認めよう。これに不満がなければ武器を取れ! これより修羅の季節をくぐり抜け、ともに栄達を作ろうではないか!!!」


 轟音ともいえる反響とともに、私は前にでる。





「兵、前へ。将前へ、全軍すすめーーーー!!」




 さぁ、桃香。
 この大陸を「孵」しましょう!!




というわけで、歌う~でした。

皆さんの予想通りに「鐘」は「GONG」となりました。

というか、これ、場面にばっちりすぎてはずせないっすよ。

逆に、はずすためにいろいろと画策しましたが、まったくダメw

悪あがきでした。


・・・白蓮、やっぱいい嫁w
 

(2,934文字)