戦力外の谷、トライアウト受験！１８年目来季へ「野球がしたい」

ふっきれた表情で帰京する谷。現役続行を希望し新たな活躍を誓った

　今季限りで巨人を退団する谷佳知外野手（４０）が、トライアウト受験を視野に入れていることが４日、分かった。この日、球団が来季の契約を結ばないと発表。日本シリーズの行われた仙台から帰京したベテランは、残り７９本に迫った通算２０００安打やスタメン出場への思いを封印。「代打からでいい。自分がまだやれるということを証明したい」と現役続行への強い思いを明かした。

　ペンを走らせていた谷の手が止まった。仙台駅で女性ファンからサインを求められた時だった。

　「あっ…“ＧＩＡＮＴＳ”って書いてしまった。もう、これからは違うんやな。慣れないとアカンな。でも、きょう一日だけは、許してな」

　寂しそうな横顔でサインを書き終えた。退団を知ったそのファンから「ずっと応援してます」と声をかけられると、小さく手を振り、帰京の新幹線に乗った。

　前夜、試合後の宿舎で戦力外を告げられた。プロ１７年という経験豊富なバットマンでもなりふり構ってはいられない。

　「まだまだ走れる。打つことも守ることにも自信がある。（４０歳という）年齢が問題視されてしまうかもしれないけど、受けようと思っているトライアウトで力を証明したい」

　ポストシーズンではベンチ入りし、試合前の打撃練習で左翼席に打球を何度も運んだ。外野で１０本近く短距離ダッシュを行うなど体のキレは失われていなかった。

　「完全燃焼はしていないんだ。２０００安打への思いがないといえばウソになるが、今はそんなこと言える立場ではない。控え、代打…。どんな役割でもいい。試合に出たい。野球がしたい」

　今季は１３試合出場にとどまり、２８打数７安打。大半をファームで過ごした。それでもファンの声援が支えだった。

　「７年間、応援してくれてありがとうございました。今年の日本シリーズ（第４戦）で、代打で出た時の大歓声は感激しました。期待に応えたかったけど（長谷部から）ストレートの四球だった。バット振りたかったね（笑い）」

　それが巨人での最後の打席になった。他球団からのオファーがなければ、１０日に静岡・草薙球場で行われるトライアウトを受ける。今後はジャイアンツ球場などで練習をする予定だ。

　「みんなにきちんとお礼のあいさつをしないといけない。チームメートには感謝の気持ちでいっぱい。７年中、５度も優勝できた。強い巨人というチームで戦えて幸せな時間だった」

　野球人生の岐路に立ったベテランは感謝の思いを力に変え、次のステージへ進む。

　◆原沢代表「判断迷った」
  巨人の原沢敦代表兼ＧＭ（５７）が４日、仙台市内で取材に応じ、谷を自由契約とした理由を明かした。

　「功労者であるし、もちろん来季、我々の戦力としてどうなのかと考えれば、（日本シリーズの）４０人枠に入っていたわけだから、非常に判断を迷うところだった」と心境を吐露。その上で、「本人が試合に出る機会を求めたいという気持ちが強いので、我々として取れる手続きを取ったということです」と説明した。

　谷は、残り７９本に迫っている通算２０００安打を達成したい気持ちが強い。一方で、若返りを図るチーム事情も理解している。球団側も、谷を功労者として認めており、大記録達成へ後押しする形を選んだ。

　◆谷　佳知（たに・よしとも）１９７３年２月９日、大阪府生まれ。４０歳。香川・尽誠学園高から、大商大、三菱自動車岡崎を経て、９６年ドラフト２位でオリックス入団。０１年にはプロ野球記録となるシーズン５２二塁打。０２年には盗塁王、０３年は最多安打のタイトルなどを獲得。０６年１１月にトレードで巨人に入団。１７３センチ、７７キロ。右投右打。家族はシドニー、アテネ両五輪柔道女子４８キロ級金メダリストで参院議員の亮子夫人と２男。