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第二十三話滑り込んじゃって・・・

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第二十三話 滑り込んじゃって・・・
 桃香からの申し出は仕方ないものだった。
 なにしろあの桃香の子供をねらって、都の禁軍が動きを見せているという情報だったから。

 今まで「待ち」の姿勢だった桃香も、これには腰を上げざるえなかった。
 いや、たぶん、この期を待っていたのだろう。

 世論を見ず、世相を読まず、ただ自分の欲望を国勢にすり替えて、老害たちが腰を上げるのを。

 そのための流行歌であり、扇動歌。

 なんて恐ろしい話なんだろう。
 桃香は、劉玄徳は、この西涼に向かう段階で反攻の時期を読んでいたのだ。
 そうでなければ、歌の浸透と自らの侵攻を併せるだなんて計画は浮かびはしないだろう。


「詠ちゃん」


 わかってる、わかってるわ、月。
 私は、私と月は、得難いものを、あり得ないものを桃香から送られた。
 馬騰も馬超も、そして西涼に出入りする全てのものたちはその恩を受けた。
 これは、私たちが感じている恩の数十倍に膨れるはずの恩。
 土砂降りの雨よりも、黄河の流れよりも深く激しい恩。
 これを忘れることなどできない。

「琥珀様、よろしいですね?」
「かまわないわ。今まで得た利益なんて全部つぎ込んでしまっても良いぐらいよ」

 にっこりほほえみ合う私たち。
 そう、いま、西涼連合は一つの目的を得た。


 それは天河に輝く星を守ること。







 また偽姉妹が現れたという。
 まぁ、毎日のように酒場や街角に現れているのだが、今日は毛色が違うらしい。
 偽姉妹の中でも異色とされる西涼上手。
 楽士の中の楽士と言われる西涼楽士で頂点を極めたという噂の三人組だそうだ。

 はやりの扇動曲を全く歌わないと言う点で官軍の覚えめでたく、各地を渡り歩いているとか。

 おもしろそうだ、ということで、春蘭と共に城下にでてみると、本当に変わっていた。


 いや、本当に、この子は・・・








~「花の巴里」メル・レゾン/シー・カプリス






 三人で歌う、「花の陳留」は、こう、この陳留の栄華とあこがれを歌いあげる、そんな歌だった。
 ただ、この歌には「想い」があった。
 憧れるばかりではなく、この地を想う、この地を共にするものに対する想い。
 恋、と一言でまとめられているのに、去来するのは今までの全て。
 愛しさも悲しさも、うれしさも楽しさも、全て、全て、全て。

 ああ、まったく、この子は。

 離れていても、声が届かないほど遠くに行っていても、こんな思いを忘れさせないのね。

 突然私と、桃色の髪の乙女、桃竜の視線が絡み合う。

「春蘭、あの三人を城に招きなさい」
「はい、華琳様」







 ふむ、このような怪しげな格好であったとしても、桃香ほどの歌上手ならば、華琳様も興味があるものなのか、そう感心していたのだが、城中で桂花と出会って流れが変わる。

「・・・あ、ああああああ!」

 指を指し、わなわなと震える桂花。

「あー、桂花。この者たちは華琳様に招かれて・・・」

 だから怪しいものでは、そう言いかけたところで、桂花が大量の涙を流していることに気づいた。
 何事か、と思っている瞬間、桂花が、桃竜なる者に抱きついた。

 ふむ、どうやら知り合いのようだな。
 深い関係であればあるほど、この乱世で再会した喜びは深かろう。


「桃香、桃香、とうかぁーーーーー!」
「桂花さん、おひさしぶりです」


 って、なにぃ!?
 こ、この桃竜が、桃香だとぉ!?

「おかしかろう!?」
「なんでよ!! こんだけ丸ワカリで、何で気づかないのよ!」
「だって、この者、胸があるぞぉ!?」
「付け胸よ、きまってるじゃない!! だから後で貸しなさいよ、桃香ぁ!!!!!」


 ぶんぶんと、武官顔負けで桃竜、いや桃香の肩を揺さぶる桂花は、ここ最近に無い喜びに溢れた顔をしている気がした。









 さすがに驚いたわね。
 白竜、趙雲子龍は音に聞こえた武芸者であり、金竜がまさか麗羽だったとは思わなかったわ。
 それも、領地運営を公孫伯珪に丸投げして、西涼にいるであろう桃香を追いかけたって、どんだけよ、麗羽。

「おほほ、でも、かなり楽しい旅ですわよ?」

 まぁ、桃香と一緒に根無し草なんて生活が楽しくないわけがないでしょうけどね。

「でも、それが目的じゃないんでしょ?」
「あははは、まぁ、はい」

 私のところにも、いえ、この大陸全土に響きわたる楽士たちの決起歌。
 そして名を変えて姿を変えて南下する桃香。

「つまり、孫呉に乱あり、ってところかしら?」
「はい」

 にこやかな笑みで答える桃香。

「・・・ここで捕縛されるって何で思わないのかしらね、桃香は」
「華琳さんがそんな事するわけないのぐらいわからないで、文官はしてられませんでしたよ」

 なにかしら、ちょっとジンと来たわね。

「とりあえず、孫呉は、けして譲れない戦いをせざるを得なくなりました」
「・・・そう」
「そしてその火種は確実に私。その火種が遊んでるわけには行きませんからね」
「だから、帰るのね?」
「はい」

 決意を秘めた、そんな笑みだった。

「そう、じゃ、ここには何しに来たのかしら?」
「未払いの給金を頂に来ました」


 さすがに崩れた私を誰も責められないと思うわ、ええ。








 
 ま、間一髪、と言ったところだろう。


 麗羽に桃香の書庫を開放した後、いやな予感がしたので全て地下書庫へ写し、処理済みの竹簡に入れ替えておいたのだが、それが良かったようだ。
 初日は盗賊が入り、翌日には監査が入り、三日目には官舎に放火が起きた。
 何にしろ、本当に、心底あきれる。
 ここまであからさまだとため息しか出ん。

 噂に聞こえた桃香の竹簡をせしめようとバカが動いて、それで下手を打ったから官職にある者を動かして、それでもうまく行かないから放火。
 ほとほとあきれたぞ、玉無しども。

 正直、つきあいきれん。

 が、さすがにまだ決起の時ではない。
 まだだ。
 我がともの鐘の音は鳴っていないのだから。

 あの鐘を鳴らすのは「庶人あなた」なのだから。
 しかし、「夜明け」は近い。
 そう、夜明けは近い。

実は嫁も感染してたというw

20120618 一部修正
 

(2,362文字)