第二十話 道連れちゃって・・・
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第二十話 道連れちゃって・・・
自分に見合う主を捜す、そういって旅にでた趙子龍が私の元を訪ねてきたのは先日のことだった。
何も、私を主にしたいという話ではない。
そんなことを夢にでも思うほど私は夢想家ではない。
今回私の元にきたのは相談だそうで、主としたい存在はいたのだが、どこにいるかがわからない、というモノだった。
私ならその情報があるのではないかと頼ってきたそうで、よくよく聞けば「あいつ」のことだった。
まぁ、なんというか、あいつはモテるなぁ。
思わず苦笑い。
とはいえ、相手も真剣なのでこっちも真剣に答えることにした。
「あいつからは、定期的な文が届く。そろそろくる頃だから、それを待ってみるか?」
「ありがたい!!」
喜色に溢れるその笑顔をみて、再び苦笑いを浮かべてしまったわけだが、そうこうしているうちに袁紹、麗羽が接触してきて、手紙が来て、そして、決めた。
「子龍、あいつの手がかりを渡す代わりに、一人の同行者を認めてくれ」
「・・・だれですかな?」
「袁本初」
「・・・なんと!」
ニコニコと笑顔で立っているその存在が、まさか麗羽だと思わなかったらしく、ひどく驚く子龍。
「袁の領内はよろしいのですかな?」
「白蓮さんにお任せしますわ」
「・・・だってよ」
そう、麗羽のやつ、本気で全部捧げるとか言い出して、領主代行権とかいって、印綬まで渡しやがった。
説得して私財までは手放させなかったけど、本気で全部を手放そうとしやがったからな、心底驚いた。
「ふむ、さすが、未来の我が主。その影響力はすばらしいですな」
「あら、あの方に御仕えしますの?」
「ええ、それを望んでの旅になりますな」
「まぁ、すてき」
なにが素敵なのかは解らんけど、一応、歌姫姉妹の矛組に話を通せよ。
「うむ、実は先日呉にお邪魔したときに、書状と一緒に仮許可を得ましたぞ」
「手回しいいな」
「ふふふ、私が本気となれば、この程度は」
その調子で、なんでうちの客将してるときに書類やってくれなかったんだよ、全く。
まぁ、いいさ。
二人に加え、こっちの商人を何人かつけるから、向こうへの商隊として向かってくれ。
そうすれば、結構メクラマシになるだろ?
「白蓮さん、ありがとうございます」
「伯珪どの、いずれこの恩には報いさせていただきますぞ」
あー、はいはい、期待しないで待ってるぞ。
劉璋からの密使がきたときには何事かと思ったけれど、実におもしろい提案だった。
密書を読んだ私は、思わず笑ってしまったぐらいだから。
眉をひそめた秋蘭が首を傾げたので、手にした書状を見せると、秋蘭ですら頬をゆるめた。
「これは、実に、こう、独特の絡め手ですね、華琳様」
「ええ、実に愉快よ」
書状には、先日私の町に現れた「偽」歌姫姉妹を借りたいというもので、劉璋領内で公演させたいというモノだった。
勿論、本物と偽るのではなく、「偽物」として大々的に公演させたいというモノだった。
何の目的で、と読み進めてみれば、なんと劉璋にとって桃香は命の恩人なのだそうだ。
直接手を取られたわけではないし、手を引かれたわけでもない。
それでも彼女にとって、桃香こそが命の恩人なのだという。
それゆえに、桃香との縁が深いであろう私に、協力を申し出てきてくれたのだ。
そう、桃香捜索の妨害のために。
「華琳様」
「なに? 秋蘭」
「ことが露見しますと、我らは重き罰を受けることとなりますが?」
「あら、露見なんかしないわよ」
だって、表向きは「偽」歌姫の追放。
そして流浪の末に劉璋に認められての仕官。
さらに、もてる能力を使っての慰撫。
その話を聞きつけた大陸の楽士達が一斉に偽歌姫姉妹を名乗って活動開始。
その勢いは・・・
「この、『歌』に示されてるのね」
恐ろしい話だわ。
この「あの鐘を鳴らすのはあなた」という曲。
まるで今の大陸の行く末を見つめているかのように、見据えたかのような時期で蔓延し始めた。
単純に聞けば、心に訴えかけるだけの歌。
しかし、これを優秀な軍師が聞けばこう答えるだろう。
「民衆による一斉蜂起を行う、準備せよ」
・・・そう書いてあると。
時期や規模までは読み切れていないようだけど、まるで大陸全てを包囲して進行し、そして合流した上で「鐘」をならせ、それをならすのは「あなた(庶人)」である、と。
心の中に押し固められた不満の力は、鐘の音を聞き、そしてそれを知るだろう。
歌われたその時がくる、と。
勿論、都の軍師達も気づいている。
だから行軍をふやし、従軍時期を延ばし、そして大陸全土を探している。
が、その無理が、その無茶が、ジクリと傷になってゆく。
心の楔、望郷というなの毒が。
この不幸は歌姫姉妹のせいであるとした老婆達の言葉なんか誰も聞いてはいない。
そう、この無為の出征は、ただ単に都の老婆達の我欲によるモノであることが、すでに一兵卒に至るまで知られていたからだ。
加えて歌から分析された「払暁夜襲」指令とその警戒。
彼ら官軍は、すでに限界にきていることが明白だった。
「さすが桃香、ですね」
黒い笑いの桂花と、苦笑いの秋蘭。
季衣や流琉には少し難しいみたいね。
「ここまで性悪だとは思わなかったわ」
「まぁ、追いつめられたがゆえに、と言ったところでしょう」
「そうね、あの子、首根っこ押さえられるのが一番嫌いみたいだし、ね」
そんな桃香を二年以上占有できたというのだから、私もたいしたものじゃないかしら?
最近、私のいないところで、私以外の人たちが、私のことで盛り上がっている。
んー、なんかちがうんだよねー
歌って、聞いてほしい存在があるモノで。
理解してほしい存在であって。
誤解してほしい訳じゃない。
いや、誤解の余地のある選曲だって言うのが問題かもしれないけど。
でもなー、うん。
ボロン、とギータ三号を鳴らす。
周りには誰もいない。
練習だからと荒野にでたのだ。
んー、とひとのびして、詩策に戻る。
英語の部分を、こう、なんかクリティカルな言葉にするために。
これも一種の逃避かなぁ、という疑問を飲み込んで。
「そういえば、最近偽姉妹って流行ってるって話だよね・・・」
とまぁ、さすが初代「嫁」。
主人公と何気に連絡が密でした、という話。
そんなわけで、感想で「桔梗」・「猫」ぐらいしか逃げ先が無いんじゃないの? という斜め上を提示しました。
修羅道「袁」ルートw
20120505 名前の修正 障>璋
(2,557文字)