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第十九話 いろいろと影響しちゃって・・・

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今回、主人公の出番はありませんw


第十九話 いろいろと影響しちゃって・・・


 奇跡というものは様々な形での意志が積み重なったものだといえる。







 都主導の「ガンダーラ狩り」によって、旅芸人たちはガンダーラを歌わなくなった、いや歌えなくなったが、その抑圧が楽士たちの反骨精神を呼んだ。

 そう、選曲の上で必ず「友よ」を組み込むようになったのだ。

 加え、この「友よ」自体が覚えやすく、ふし回しも単純であることから、庶人でも歌えるもので、「友よ」を楽士がつま弾くと庶人も一緒になって歌うようになった。
 人が集まる町ならば、どこでもかしこでも「友よ」が歌われ、そして合唱された。

 歌で繰り返し歌う人間の中で、故郷にその歌を持ち帰るもの、別の町に持ち寄るものなど様々だが、当然のように大陸にあふれることになる。

 町で、村で、川辺で、海辺で。

 誰かがどこかで歌っている。
 そんな歌になってみても、都からの反応はなかった。

 そう、全く興味がなかったのだ。

 それを参内した公孫賛伯珪は、そら恐ろしいものとして感じていた。
 ガンダーラのような直接的な詩ならば理解できるが、「友よ」程度のひねりで判らなくなる。
 今の都の政治はその程度になってしまったのだ、と。

 このほどの漢中出征とて、曖昧な情報を鵜呑みにして(情報自体は間違っていなかったが判断や行動がおかしい)、莫大な予算を使って出征してみれば、長きに渡って打ち捨てられた寺院があっただけという結果だった。
 詳細を知らされずに出征させられてみれば、なんと「ガンダーラ」の歌い手を捕らえるために、というばかばかしい理由だったことまで露見。
 はっきりと嫌悪で老婆たちをにらんでしまった。




 一応、引き続き調査せよ、と指示は出てるけど報酬はなし。
 とはいえさすがに糧食はとられ、無報酬では倉が干上がるということで交渉して、どうにか幾分の報酬は得られた。
 が、今後の調査については結果次第という曖昧なもの。


 かぁ、本当に面倒を起こすよな、あいつ。


 思わず頭をかいていると人の気配。
 振り返らなくても、この気配なら誰だかわかる。


「・・・白蓮さん、お時間よろしくて?」
「ん? 麗羽か。なんか用か?」

 振り向くと、みたこともないような麗羽がたっていた。
 そう、自信なさげな雰囲気の麗羽って、ドンだけだよ!!

「ど、どうした、麗羽! なにかあったのか!!」


 思わずぶんぶん前後に振ってしまった私は悪くない、うん悪くない。
 目を回した麗羽も私を責めなかったし。






 とりあえず、町の茶屋で話を聞いてみて、本気で驚いた。
 あの麗羽が、袁本初が、私に頭を下げたのだ。

「ぜひ、白蓮さんのご友人をご紹介してほしいのです」

 どうやら麗羽、庶人ではやる曲なんて興味なしって感じだったんだけど、ガンダーラ狩りに引っ張り出されて仕事で聞いたそうだ。

 で、その歌詞、その曲、そしてその知識。

 全てで感動してしまったそうだ。
 一流は一流を知る、ということで、様々なつてを使い、ガンダーラの曲調と天河の歌姫姉妹に共通のものがあると感じた麗羽は、自分の人脈では絶対に会えないことに絶望したそうだ。
 が、そんな中、部下の一人、顔良が、天河の歌姫姉妹筆頭と私が幼なじみだという噂を聞いたと発言。
 有り余る人脈を使い、その確信を得て、今日に至ったそうな。

「一応言うけど、あれ、今、都が全力で追いかけてる存在だぜ?」

 言外、その情報で都になにをするつもりか、と匂わすと、麗羽の目がつり上がる。

「・・・白蓮さん、試すようなことは仰らないで下さいます? この袁本初、偽勅かどうか程度は判りますわよ? それに、これほどの詩文を書ける方を老婆たちに差し出す? あり得ませんわね」

 私は、その瞳に、袁本初の本質をみた。
 だから、私は苦笑いで口を開く。

「悪いな、麗羽。あれもずいぶん敵が多くてな。水際戦略もやむなしって感じなんだよ」
「判りますわ、あれほどの才能ですもの。妬む方も多いでしょう」

 うんうんとうなずく麗羽。
 なんかこう、いつもと空気ちがわね?

「あ、そうそう、昔、あいつがうちの城にいたとき、たぶん詩文の思索だと思う書き留めを結構残してるんだけど読むか?」
「是非とも!!!」


 なんつうか、若い文学少女みたいな目の色になった麗羽を、実に新鮮に思える私だった。













 それを聞いたのは偶然だった。


 孫家を討ち漏らすばかりか戦術的に敗北が決定したあのとき。
 部下にも家臣にも打ち捨てられ、戦場を放浪していたあのとき。




 あの歌を聴いた。




 その身に染みる歌。
 心に凍みる歌。
 手足に力がみなぎる歌。




 結果、私は戦場から戻り、そして家臣や部下を粛正した。
 すでに自分が死んだものと振る舞っていたバカどもの罪状を読み上げ、そして罪を数えさせた。
 戦場の罪、政策の罪、そして賄賂横領、全てを。


「お嬢を戦場に連れだしたのは、これが目的でしたか」


 最後まで出兵に反対していた厳顔に私は謝る。


「よいのですよ、お嬢。今回の一件、この厳顔も油断がございましたしな」


 とはいえ、戦場を抜ける前に救援に来てくれたのは厳顔と黄忠だけだった。

 今私に残された、最後の杖ともいえる。


 乱れたこの領を、あの歌に恥じないように立て直す、そうあのとき誓った。



 しばらく経って、あの歌が天河の歌姫姉妹筆頭の歌声と知った。
 たしかにあれは天上の歌声だと確信する。
 私に心の力を、心身に力を与えることができたのだから。
 その事を厳顔にはなすと、実におもしろそうな顔をする。

「ならばその筆頭殿は、お嬢の恩人でございましょうな」
「うん、絶対に恩返しする」
「ならば、この案件も頭の痛い話やもしれませんな」

 そういいながら、ニヤリと笑って見せたのは勅命。
 旅歌「ガンダーラ」の出生をしらべよ、というものだった。

 このたび歌は何度も城下で聞いているけど、かなり異質でかなりすごかった。
 その感覚は「筆頭」の感覚。
 いや、まちがいなく天河の歌姫姉妹筆頭が絡んでいると確信した。

 そしてこの「偽」勅。
 少なくとも、劉姓の者が書いたはずのないモノだった。

 筆頭様が、恩人様が偽勅を発する者達に追われている、そういうことなのだ。

「厳顔、いや、桔梗」
「は」

 すっと息を吸い込み、そして背を伸ばす。

「ソナタの主として命じる。我が大恩を返すために協力せよ」
「は、我が主、劉璋様の名において必ず」


 胸を張り、そして見つめる空。
 私は一歩踏みだそう。












 そこは宝物庫でした。

 旧友公孫賛伯珪、白蓮さんの書庫に集蔵された「それ」は、まさに天河の詩集といえるほどのキラビヤカな輝きを放っていました。
 愛を歌うもの、恋を歌うもの、友を歌うもの、そう、今まで自分がしたためた詩文が全て吹き飛びました。
 そして、これこそが天河の歌姫姉妹の根幹なのだと涙してしまいました。

「ああ、ああ、すてきですわ、白蓮さん。こんなすばらしいものを見せていただけるだなんて、この袁本初、この先の人生すら捧げる覚悟すらできましたわ」
「まてまて、私に捧げてどうする。捧げるなら、あいつだろ?」

 あああああああああ、なんてうらやましい。
 家名でも名でも字でもなく、真名でもなく「あいつ」なんて呼び方!!

「なぁ、麗羽」
「・・・・なんですの?」



「そんなにあいつが好きなら、生で聞きにいくか?」




 ・・・・え?


というわけで、着々と網が広がっていて、逃げ場がなくなりつつあります。

ああ、主人公よ、どこに、・・・・いける?w

20120505 名前の修正 障>璋
 

(2,963文字)