第十五話 発端が根付いちゃって・・・
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歌う恋姫とかいいつつ、歌シーンが詳細に書き込めないジレンマw
エロシーン割愛の18禁みたいな!?
第十五話 発端が根付いちゃって・・・
正直、西涼なめてました。
シルクロードの入り口ってだけのことがあって、すごく西洋文化が入ってきてる。
私が試しにアベマリアなんかをギータ三号で歌ってみると、彫りの深い商人達が、スタンディングオベーションで大歓声。
泣きながらハグを求めてきたりする。
思いの外、歌が通じやすい。
そんなわけで、ぶっつけでアリアとかも歌ってみせると、そのままひれ伏したりなんかして。
歌のお礼としていろんな宝石とか小物をくれるのがありが珍だけど、楽器まで渡して演奏を求められるのはいただけない。
なにしろ、それに集中しちゃうから。
「桃香! 休憩時間終わり!!」
「えー、もう一曲だけ、ね? 詠ちゃん」
「くぅ・・・もう一曲だけだからね!」
「へぅ」
というわけで、董卓こと月ちゃんをお供に酒場の流し活動をしていたわけだったわけで。
この活動にも意味がある。
一番に情報収集。
この怪しげな三国志っぽい世界と私の知っている世界との互換性があるかどうか、とか。
第二に、これも情報収集。
都や周辺の政情情報やら商業情報やら。
なにが代われているかを調べるだけで、なにが起きているかがわかると言うもので。
そういう意味でみれば、今、都周辺で飼い葉と糧食が集中しているということで、何らかの大型遠征が計画されていることに相違ない。
というか、ばれた?
と、思わないでもないけど、商人達の話では禁軍は動いていない様子。
私が目当てなら、その場を押さえるために最大権力者たちがでてくるだろうし、そうなれば禁軍も動く、と。
では、いかにも軍が動きますよーという準備は何なのか。
確たる情報はないけれど、それなりに準備は必要そうだと言うことだけは理解できた諜報活動だった。
桃香がしてる酒場活動は好評だった。
娯楽に乏しい西涼では大いに受け入れられ、我も我もと集まってきているほどだった。
あの馬超も、三日に一度は現れて、桃香の歌に聴き入っている。
お目付け役の馬岱が、徐々にやつれてきているのが涙を誘うというかなんというか。
聞けば馬一族の若者も挙って交代でやってきているそうで、砂塵の尽きぬ日はないという風にすら思える話だった。
まぁ、一度聞いた人間が向こうで宣伝してうらやましがらせて、くやしいから聞きに来たら好きになると言う繰り返しらしい。
そんな中、馬超、いや、翠から「ウチでも公演してくれ」と半泣きの申し入れがあった。
さすがにそろそろ辛いらしい。
その事を桃香に言ってみると、腕を組んでウンウン唸っている。
さすがに嫌かな? と思っていたんだけど、急に楽器をつま弾き始めた。
~「ガンダーラ」 ゴダイゴ
よくある楽園を歌いあげた歌だった。
でも、なぜかこの西涼で聞くと別物に思える。
どこかにある「楽園」。 何かを願い旅する人々やその土地で暮らす人たちには麻薬のような歌。
・・・これ、まずくないかしら?
切迫した政情、うまくいかない生活、極端に女性中心の大陸。
加えて、交易の入り口の西涼からの流行歌。
まずい、本気でこれまずいわね。
この歌、流行っちゃまずいわ。
「どう? なんか、西涼って感じの歌でしょ?」
あー、純粋にそう思って歌ってるわね、桃香。
確かに感覚的に正しいけど、まずいわ、うん。
「いい曲だよね、詠ちゃん」
「うん、ほんと、いい曲よね、月」
うん、いい曲いい曲。
僕はこのときの判断を少しだけ後悔することになるんだけど、それは未来の話。
翠ちゃんところのお誘いで馬一族の領内に公演に行ってみると、スゴいことが起きた。
城門をくぐった途端大歓声で、ガンダーラを大熱唱。
私もシャオちゃんもビックリだったけど、にっこり微笑んで、ギータ三号と四号を引っ張り出す。
ジャカジャカと音を出すと、その音の広がりと同時に静寂が広がる。
すぅっと息を吸い込んで、そして声を張り上げた。
「やってきました西の果て。やってきました東の入り口。初めまして西涼、こんにちわ西涼、・・・・よろしく、みんな!!」
わっと盛り上がる空気の中、望まれた曲「ガンダーラ」をつま弾くと、音に合わせた合唱が、場内で響きわたる。
西遊記の歌が、この西遊記よりも過去の世界で歌われるというこの感動。
私は我知らず涙を流していた。
「桃香様、こういうのもいいよね」
「うん、この感動は、歌ウタイにしかわからない感動だね」
「うん!」
そこから始まった城門前公演は、歌姫史上1・2を争う盛り上がりになって、日が暮れるまで私たちは歌いまくった。
桃香たちの歓迎の宴は、普段気鬱げな母上、馬騰すら笑顔にするものだった。
周辺豪族との折衝、西涼連合の取りまとめ。明らかに武人としての母上の仕事とはかけ離れたものだけど、それでもまとめなければならない立場がそれをさせていた。
私もその後継者として求められているけど、正直、向いていない。
こういうときは、董卓、月みたいに折衝用の人員を配置すべきなんだろうけど、そういう文官の仕事は、ウチの人間たちに向いていないのが泣けるところだ。
「なに! ならばお前が、かの『美周朗』の認めた文官救世主なのか!?」
母上が何か焦ったかのような声で立ち上がった。
「そうなんですよー、うん、冥琳なんか泣きながら縋ったぐらいですし」
シャオちゃんもご機嫌で母上と話していたんだけど、なぜか桃香様が逃げ出そうとしていた。
「・・・まて、まてよ? そういえば、曹孟徳の出世も・・・」
「はいはい、それにも噛んでる算盤天使です」
桃香の首根っこを押さえつつ、異次元的な算術手法と算盤を発明した桃香と、それを見いだした曹操がことの発端であることを語りだす。
算術の町を育て上げた後、帰郷の旅の中で歌姫姉妹が結成され、そして呉に渡り、そして今に至る、と。
「つまり、だ。武官ばかりではなく文官としても優秀、と?」
シャオちゃん曰く、私には劣るけど、蒲公英に勝る武、だそうだ。
加え、あの曹操の元で筆頭文官と筆頭軍師補佐をしていたそうだ。
・・・只の旅芸人じゃすまねーな、うん。
そんなことを思ってると、母上が私の両肩をたたいた。
「翠、いいか。おまえは今日から桃香殿に文官仕事を習え」
「・・・え?」
「二度は言わん。桃香殿に師事しろ。これは命令だ」
えええええええええええ!?
今日から私は桃香さまの嫁ーーー!?
「お姉さま、酔ってるね?」
よめーーーーーーーーー!!!
えー、文官仕事を任されるのは流れ的に理解できますが、今は何と翠ちゃんこと次期領主の文官教育係にされています。
難しいことが苦手、という翠ちゃんをなだめてすかして簡単なことからはじめさせて、うまくいったら一曲的なご褒美を入れたところ、結構ハッスルしています。
私たちも歌の練習ができるし、いいかーと思っていたら馬騰さま、琥珀さまに怒られてしまった。
他の文官の仕事のじゃまだって。
じゃまかー、と落ち込んだら、
「違う違う、自分たちの目の前でも演奏させてくれと泣きつかれて困るんだ!」
あー、そういうこと?
じゃ、お昼にでも演奏会でもしましょか?
で、課題の仕事が終わらなかったら翠ちゃん参加不可で。
「ええええええええええ!」
「おお、それはいいな」
にこやかな笑みの琥珀さま承認で、城の演舞舞台が即席の歌唱舞台になったのだった。
もちろん必死で終わらせた翠ちゃんと蒲公英ちゃんも最前列にいたりする。
ではでは、最近のお気に入りなんかを披露しましょう。
いろいろと歌詞を変更したけど、これはこれで味わいがある歌になったなぁ・・・。
~「Winners」 G・GRIP
それは初めて馬に乗ったことを思い出させる歌。
それは初めて友と早さを競った時を思わせる歌。
それは朝霧のなかを、夕闇の中を走る時間を思い出させる、速さという贈り物。
ガンダーラは想いを掘り起こす歌。
でも、これは、思いを抱かせる歌だった。
すべての初めてを思い起こさせる歌。
西涼の馬使いすべてに捧げる歌。
私には理解できる。
いや、私たちには理解できる。
馬と共に生き、そして生き続ける私たちだからこそ理解できる。
劉玄徳、珠玉の歌い手である、と。
占有できなくてもいい。
しかし、独占されてはいけない存在だ、と。
この存在は、蒼天の下になければならない、その確信が私たちに根付いていた。
GW更新かと思わせて通常の週末更新の歌うでしたw
じわりと進む何か。
ちょっとやばい歌詞のガンダーラ。
気になる人はiTuかなにかでw
いやー、某一揆のなかった歌う恋姫世界。
どうなっちゃうのかなー(棒読み)
20120428 小修正
(3,456文字)