参院の許可を得ずに北朝鮮へ強行渡航した「日本維新の会」アントニオ猪木参院議員(70)について、参院議院運営委員会は5日の理事会で処分を検討する。1日に出国した猪木氏は事前に参院に渡航許可を求めたが、同理事会は具体的な日程の説明がないとして不許可。院の決定に反して渡航するのは異例で、猪木氏は政治生命の危機にも直面しかねない。
猪木氏が“闘魂外交”で“暴走”する中、元文部科学副大臣で日本体育大学の松浪健四郎理事長(67)は4日、スポーツ交流を目的としたバスケットボール、サッカー部の選手62人を引き連れ、平壌へ向け出発した。
昨年11月の遠征に続き、2度目の訪朝。出発前に本紙の独占直撃に応じた松浪氏は、2020年に東京で開催される夏季五輪に触れ、「五輪を開催する国は全ての国とスポーツ交流しなければいけない。(訪朝に)政治を絡ませるつもりは全くない」と遠征の意義を説明した。
一方で、猪木氏の訪朝については肩を落とす。
「悲しい。国会には国会のルールがある。猪木氏が民間人なら訪朝もいい。でも、国会議員バッジを付けた公人ですから、ルールを守らなければいけない。現地で合流したら、帰国後どんな処分が待ち受けるか伝えるかもしれない」
猪木氏の帰国予定は7日。元政治家の経験を踏まえ、松浪氏は猪木氏の処分について「院内の秩序を乱し、懲罰が与えられる行為を行った懲罰事犯の扱いに該当するだろう」と指摘する。
「参院議院運営委員会の理事会の委員長は、参院議長に猪木氏の訪朝を報告して処分を求めなければならない。猪木氏の懲罰についてだが、一定期間の登院停止。これは30日を超えることができない。政治家として一番重いペナルティーです。もしくは除名。参議院の規則では『議院を騒がし又は議院体面を汚し、その情状が重い者』が除名の対象になる。猪木氏はこのいずれかだ」
所属する「日本維新の会」も対応に苦慮している。松浪氏は「相当怒っているはず。たぶん党除名の処分が下るとみている」との見解だ。
猪木氏の訪朝について議運委関係者は「目的がはっきりしない」と言うが、同氏はスポーツ交流が目的と表明している。
7月の前回訪朝から帰国した際、猪木氏は「今年は師匠の没50周年でイベントの話もさせてもらった」と明かした。師匠の力道山は1963年12月15日に他界。今回の訪朝はそのイベントの打ち合わせもあるかと思いきや、そうではなかった。
「その話はないでしょう。北朝鮮で興行をするのはとても大変です。以前やった時とは環境が違いすぎる」とは猪木事務所の関係者。「以前やった」というのは、95年に首都・平壌で行った「平和のための平壌国際体育・文化祝典」のことだ。
それから約20年が経過する中で、拉致問題がクローズアップされるようになり日朝関係は変化した。「例えばマットに使う資材を日本から運ぼうと思っても、経済制裁があってできない。モノを持ち込んじゃいけないんですよ。また、渡航自粛なので打ち合わせもままならない。やりたい気持ちはあっても物理的に難しいという状況」(同)
ならば北朝鮮が自前でマットを用意できればいいが、経済状況を考えると厳しい。強行渡航とはいえ、実際には猪木氏が押し掛けたのではなく、北朝鮮の招待があった。
「北朝鮮にパイプのない政府与党から文句を言われるのは、猪木氏も心外でしょうね」(永田町関係者)。スポーツ交流を日朝関係改善につなげられるか。
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