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第九話 出奔しちゃって・・・

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第九話 出奔しちゃって・・・

 謳う時間が無いなーとか思っていたんだけど、3姉妹は結構歌っていた。
 うらやましいなぁ、と思うんだけど、仕事が終わらないので仕方ない、しかたないんだけどさぁ~・・・

「どうした、我が夫」
「ぶーーーー」

 思わず吹きました。

「冥琳、そういう冗談は勘弁してね?」
「結構本気なんだがな」

 ニヤリと笑う冥琳さんは、かなり男らしい笑顔です。

「まぁ、そっちの話は皆と調整せねばならん話だからな。で、何の悩みだ?」
「あー、最近歌ってないなーって」
「歌えばよかろう?」

 あー、そうじゃないんだよねー、うん。
 そう、たとえば、雪蓮。

「ん? 雪蓮バカがどうした?」

 ・・・たとえば雪蓮。
 どんなに戦好きだからといっても、そこらで暴れて庶人を首をはねたりしない。
 祭さんも、店先の酒を強奪したりしない。

「・・・ふむ、歌詠いの心根、か?」
「そんなところ~」

 なにも、観客をそろえて盛大にライブをしたいわけじゃない。
 ただ、木戸銭をもらえるぐらいの距離で観客と一緒に、一体感がほしいだけ。

「まぁ、なんだ。政務(性務?)疲れもあるだろう。久しく渡しも聞いていないのでな、歌ってはくれんか?」

 ん~、確かに今は冥琳に聞いてほしい気分だし、では・・・




~「君が君に生まれた理由」氷上恭子







 桃香の口から紡がれる透明な声と歌詞に、私は心振るわされていた。

 そして、大きく後悔する。

 いかに武に優れ、文に優れていたとしても、この人は「歌う」者なのだということを忘れていたのだから。
 どこから取り出したのか、楽器を弾きながら歌う姿には哀愁よりも悲しみを感じた。
 まるで羽を折られた鳥のようじゃないか、と。

 優しく語りかけるような歌が終わると、部屋の外まで詰めかけた将や文官たちが盛大な拍手をしていた。
 なんだか火がついてしまったらしく、桃香はそのまま城で一番広い練兵場に乗り込んで、楽器を変えてかき鳴らし始める。

 するとどこからか集まった天河の歌姫姉妹たち。
 手に手に楽器を持って、そして次第に大きな波になる。

 訓練中だった兵たちも、仕業中だった官たちも、みな、今から始まるその波を待ち受けた。

「いくよ! 真っ赤な誓い!!」
「「「「「おお!」」」」」

 初めて聞いたそのとき、まるで我が国、孫呉の為の歌だと思ったものだが、再び聞いてもその思いを再確認させられた。
 
 諦めない、立ち止まらない、すべての思いを胸に戦いを進む。
 すべての限界を超えた先にある平和を求めて進むだけ。
 敵も味方もすべてを巻き込んだ、そう、そんな誓い。

 幼い頃に雪蓮と共に誓った、そんな誓いを思い起こさせる歌。

 ああ、この人には歌っていてほしい。

 心底そう思わされた私だった。







 そろそろ、姉上の禁断症状があるだろうという話もあり、巡察の時でも楽器を持ち歩いていたのだが、その合図が突如あった。

「愛紗、きたのだ」
「うむ、思いの外我慢したな」
「早く集合なのだ!」

 音源に駆けつけると、すでに歌の三姉妹が到着していて準備を始めていた。
 負けじと準備をし、音を合わせた瞬間、姉上はニッコリと微笑んだ。

「いくよ! 真っ赤な誓い!!」

 よほど鬱屈が貯まっていたのか、全てを焼き尽くすかのような歌を選ぶ。
 これは少し色々と手加減した方がいいのかもしれん。

 毎夜練習をかかさぬお陰か、演奏に遅れることなく終了したが、姉上の調子はそのままだった。




 結局、日が暮れるまでの演奏で、私たちもふらふらになったが、姉上も満足したようだった。
 私たちの歌を聴きたくて庶人まで集まってきたので練兵場を解放したところ、恐ろしいまでの人の山となったのが嬉しかったらしく、姉上は何度もありがとうを繰り返していた。

 ふむ、どちらかといえば、我々の方がありがとうなのですがね、姉上?








 えーっと、桃香が逃げ出した。



 それを聞いた朱里ちゃんは泡を吹いて倒れたんだけど、愛紗はすごい目つきで私をみてる。
 まぁ、そうよねぇ。
 閨番のわたしが一番怪しいわよねぇ?

 まぁ、うん、自覚はある。

「雪蓮、なにをした?」
「・・・ナニをし過ぎた」

 すんごい視線が私に集中してるのがわかる。

「しぇ、雪蓮様! もしや・・・」
「あ、あはははは、その、私がおそっちゃったw」

「「「「「ああああああああ」」」」」

 なんつうか、その、ごめん。
 あの桃香がむちゃくちゃ格好よかったもんで、こっちも燃え上がっちゃって・・・・

「お尻の穴とかいじったり、ナニを縛ったりして色々やって一晩中しちゃった、えへ♪」

 長い沈黙の後、冥琳が私を捕縛させて、私は王の間で吊された。
 ふえーん、反省してるってばぁ・・・

「とりあえず、閨番にはいっていないシャオが付いて行っているようです」
「それは本当か、権殿」
「ええ、虎も熊猫もおりませんので」

 ぶぅ、そんなの私だって知ってるのにぃ。

「桃香様、かわいそう・・・」
「雪蓮様はしばらく閨当番から外すしかありませんね」
「賛成!」「「「「「賛成!!」」」」」

 えーーーーーーー!?

「で、明命。どちらに向かったかわかるか?」
「陳留方面が有力かと」







 孫呉を抜けるまで周々の背中にしがみついていたのだけど、抜けた後は下ろしてもらった。

「ありがとね、周々」
「がう」

 報酬の餌を与えると、嬉しそうに食べてくれた。

「さ、そろそろシャオも見送りはいいよ?」
「・・・・」

 善々に跨ったシャオが、ひどく不安そうな顔をしている。

「あー、大丈夫大丈夫。ちょっと休暇をもらうだけだし」
「そういって、曹操のところに戻ってないんでしょ?」
「・・・う`」

 まぁ、ほら、あの人ってば天才だから、私は必要ないかなーって、思ったりなんかしたりして。

「ぜーったい、戻ってこれないと思うよ。捕まったら」
「あ、あははははは」

 なぜだろう、嬉しそうに微笑む華琳さんの笑顔が脳裏から離れないなぁ・・・。

「孫呉が嫌いならそれでもいい、でも、でも!!」

 あー、うん、嫌いじゃないよ?
 あそこのみんなは大好き。
 でも、ちょっと気分転換が必要なんだよね~。

「・・・桃香様、私ついてっちゃだめ?」
「贅沢できないけど、いい?」
「うん!!」

 ま、馬もないし、虎とパンダがいれば、それなりに安心かな?
 シャオも最近勉強をがんばってて、武術もがんばってるみたいだし。

「じゃ、まぁ、いきますか、歌いながら」
「は~い♪」


 ではでは、旅立ちにふさわしい歌を一つ。




~「始まりの君へ」布施明





「桃香様~、なんか愛紗様の低音がほしいですねぇ~」
「ま、シャオの伴唱があるだけましかなぁ?」

 誰もが急ぎゆくこの道だけど、私と桃香様はゆっくりと確実に進む。
 傷ついても、疲れても、確実な一歩を進む。

 歌を歌い、前を見て、声が届く未来と共に。

 今、始まりの私たちがゆく。


今回出ました新曲、~「君が君に生まれた理由」氷上恭子 は、セガサターンのゲーム、まぁ、エヴァものの劇中曲だったりします。

結構好きなんですよねーw

あと、始まりの君へ は、ご存知の通り響く鬼関係ですねw
 

(2,768文字)