第五話 祈っちゃって・・・
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第五話 祈っちゃって・・・
天河の歌姫姉妹の噂が再び濃くなった。
村から離れたところから始まったところをみると、どうやらどこかで客将をして資金をためていたようだ。
まったく、そんな事をしなくても良いほどの資金は渡してるでしょうに。
「華琳様、それをそのまま曹仁が持ち帰ってきてしまっていますが」
「・・・そうだったわね」
じゃぁ、どうやってあの距離を旅したのかしら?
さすがに木戸銭だけで渡れるほど苦労のない旅ではないはずだし。
ま、でも無事についてまた動き出したなら、そろそろこちらにも顔を出すでしょう。
そうなったら、二度と逃がさないわよ。
「ふふふふふふ」
「ああ、華琳様のその顔もすてきです」
「ああ、華琳様にとろける姉上もかわいいなぁ」
「「「ふふふふふふふ」」」
なんだろう、背筋が寒い劉玄徳です。
現在、なぜか山賊のアジトを襲撃しています。
人員は関羽、張飛、劉備の三悪人です。
で、敵数500。
どうしろと!?
と憤りましたが、なんというか、攻めやすい。
渓谷の真下にいる時点でダウト。
両脇、いえ、片方の崖だけでも崩すだけで大攻撃。
さらに、林に隠れて弓も利かないし。
「桃香様、いきましょう」
「うん」
あらかじめ仕掛けた楔を打ち込む。
この地形なら、いけるはず。
「桃香ねえちゃん、鈴々に任せろなのだ!」
鈴々ちゃんが一撃を加えただけで、崖は崩れた。
・・・私を巻き込んで。
「姉上!!」「桃香姉ちゃん!!」
「おりょりょんりょ~~~~」
まるで今の私は猿顔の大盗賊だ、と暢気に考えていた私は余裕ある方だろうか?
実際はパニックになっていただけなんだけど。
私たちは、商人さん達とともに旅をしていました。
立身を志し、今名を轟かす「天河の歌姫姉妹」を目にするために。
彼女たちは最初、旅芸人として有名でした。
ですが、近頃は、山賊や野盗の類をばったばったと退治しつつ、歌を歌っているというのです。
治安と民の慰撫、そして名声を得るという一石三鳥の妙手に感動した私と雛里ちゃんだった。
こんな人とともに世のために知略を尽くしたい、そう思ったときには水鏡先生の塾を飛び出していた。
なのに今は捕らわれの身。
商人のおばさん達は切り殺され、娘さんたちももてあそばれ、私たちは幼い見た目のせいで監禁されているだけですが、いつ、あいつらの魔手が迫るかもわかりません。
いざとなれば、私が引き受けている間に雛里ちゃんだけでも・・・。
「「きゃ!!」」
轟音とともに目の前の天井が破られました。
いえ、天井どころか壁まで壊してその方は現れました。
濛々と巻きあがる土煙が収まると、そこには優美な美しい女性が、月明かりを背にしてたっていました。
すべてを見通すかのようなすゞやかな視線で、ゆっくりと周囲を見つめた後、私たちを見つけたようでした。
「・・・お二人さん」
「「ひゃ、ひゃい!!」」
「そんな年から激しい情交はよろしくないわよ?」
「「ちがいまひゅ!!!」」
あまりの興奮に、私も雛里ちゃんもかんでしまいました。
これが私たちが敬愛する主、天河の歌姫姉妹筆頭、劉備玄徳様との出会いでした。
切り崩した崖の影響で、賊の砦は崩壊。
なぜか無傷の姉上の合図で、我らも降り立つと、唯一の生還者である二人の少女をあやす姉上がいた。
「桃香様、その二人は?」
「・・・うん、誘拐された商隊の最後の生き残りだって」
「そうですか・・・」
「・・・ゆるせないのだ!」
鈴々の怒りを受けてか、姉上も腰のモノに手をかけた。
「・・・劉備様、参りましょう」
「うん、関羽。この子たちとともに」
鈴々も槍を大きく構えた。
「お姉ちゃん、鈴々も背負うのだ」
そう、桃香様も私も、鈴々も。
その罪を背負うことを決意した。
人を殺めたことがないわけではない。
反撃をしたことがないわけではない。
しかし、今回のようにセンメツする事はなかった。
皆殺しはしたことなかった。
が、悪しき行いを悪しき行いで報いなければならない。
そんな世の中になったのだと私たちは理解したのだ。
「あ、あの、このまま逃げては・・・」
「ごめんね、悪党の数をできるだけ減らしたいの」
「うむ、姉上のいうとおりでな。すまん、しばし待っていてくれ」
「みんなは鈴々が守るのだ」
そう、私たちの両手は狭い範囲でしか届かない。
槍も剣も届かない範囲があるのだ。
ならば、届く範囲に引き入れて、守るほかないのではないか?
だから私たちは大切なモノをお互いに引き合う。
守りきれるように、と。
「天河の歌姫姉妹筆頭、劉玄徳。外道に落ちた魂を、天河に解き放つために降り立った!!」
「天河の歌姫姉妹槍が筆頭、関雲長。罪なき人々に変わりて罪業を切り裂く!!」
「天河の歌姫姉妹の長槍、張翼徳。背負えぬ怒りをすべて背負って、おまえたちにたたきつけるのだ!!」
私たちは踊りかかる。
これが悪だというならば、その名も背負ってみせる、と。
血雨、つうか、やりすぎた。
わざわざ張り型まで使って女性を襲う鬼畜たちをみて、本気で血が上ってしまって、惨殺。
一応、攻められていた人たちは助けたけど、みんな気が触れていて会話にならなかった。
どうにか落ち着くまで介抱したけど、朝になるまでに全員が自分の喉を突いていた。
貞操の意志を貫いた、そんな強い意志だった。
私は、心の底から、彼女たちのために歌う。
あなたがいた森/樹海
あなたたちの魂に幸がありますように。
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