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第四話 契られてしまって・・・

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第四話 契られてしまって・・・



 とりあえず、三月みつきほど働いて、代わりになるような優秀そうな人を見繕って推薦して微塵がくれの術でござる。






 白蓮にはわるいけど、なにも言わずに逃げ出すことにした。

 が、なぜか天和達に捕捉されてしまいました。

 なんでも、白蓮もそろそろ逃げ出す頃だと思っていて、警備を緩くしてくれてくれていたらしい。

 さすが、私の嫁。わかってる~。

 とはいえ、そのままというのも何なので、三姉妹をつけて民の様子でも見てこい、ということらしい。

「で、どこいくの? 桃香様」
「ん~、建業あたりを目指して、ふらふら移動かなー」
「あ、孫堅様に会いに行くのね!」
「・・・なるほど、あそこで楽師として暫く禄をはむ、と」

 聞こえが悪いですねぇ。
 民の言葉を聞き、蒼天の言葉を聞き、その答えを得るために心の力をためるんですよ。

「それて、絶対言い訳だよね~、桃香様の場合」「うん、チーもそうおもう!」「・・・姉さん達、師匠に失礼だよ」

 心の力が減っていきます。
 なんだかなー。





 白蓮の町から少しでたところで、山賊盗賊の類がぐっと増える。
 これは白蓮の治世がうまくいっているのと、白蓮の手が長くないことの証明。
 もちろん、武将や兵を集めればいいかもしれないけど、それを恒常的に維持することは難しい。
 だから予算に合った形で軍をそろえなければならない。
 予算には必ず上限がある。
 だから軍備ばかりには回せない。
 私塾で白蓮とお互いに確認したことだけど、現在の漢王朝に足りないのは灌漑だ。
 天災や飢饉は怖いけど、それでも作物がちゃんと取れていれば問題ないのだ。
 が、そのすべてを災害が刈り取る。
 そんな凶事を避けるために灌漑は必須で、これは前漢から解っていることの筈だった。

 でも、だれもやらない。

 私でも白蓮でも、頭をとったら灌漑だ!を合い言葉にしていた時期もあるんだけど、今、白蓮はそれを実践してる。
 で、私は逃亡中。
 あれぇ~?

「・・・師匠、次の曲」
「あ、はいはい」

 ぺろーん、と地和の方術で増幅した音が周囲に響く。
 よっし、視聴者に女の子も多いし「WING/高橋洋子」で、きゅんとさせちゃう!

「・・・師匠、邪念がはいってます」
「自重します」

 メインは私と天和。
 地和と人和はコーラス。
 さぁ、歌おう!

「「「「「きゃ~~~~~~!」」」」」

 あ、結構年輩の女性もキュンときてるみたい。








 旅芸人の歌を聴きながら、私は少し腹を立てていた。
 この乱れた世の中で、凶事に走るもの達を成敗する私と義妹がいるというのに、あそこでは気軽に歌を歌って、その日暮らしをしている輩もいる。
 なんとも理不尽ではないか。

「愛紗、ききにいくのだ」
「・・・軟弱な歌など・・・」
「鈴々は聞きたいのだ」
「・・・仕方ない」

 義妹のワガママを聞きつつ、軽やかな音楽が流れる方に足を向けた。
 うれしそうな、楽しそうな、それでいてきらびやかな嘘。
 虚言に彩られたまやかしの幻想。
 まるで詐欺のようじゃないか。
 私は心底吐き気を覚えた。

 そうして曲が終わる。

「さぁ鈴々いくぞ」
「まだ終わってないのだ」

 ガンとして動かない鈴々の前で、四人の少女のうちの一人が一歩前にでた。
 豊かな髪の毛をそのままにした、優美な美少女。
 私はその瞬間に胸が高まるのを感じた。

~たった一曲の戦歌を聞いてほしい・・・・・

 弾き語り始めたその歌詞は、まさに戦場で見上げた夜空を思い出した。
 周りには卑俗山賊の山。
 鈴々とともに駆け抜けた地獄のような日々。
 それでも、それでもたどり着く先に明日があると、希望があると信じていた日々を思い出した。


~共に戦い続ける夜空に、夜虹はおりてくる

 どんなにくじけても、どんなに疲れても私は一人ではなかった。
 鈴々が、義妹がともにあってくれた。
 一人ではなかったのだ。
 私は一人ではなかったのだ。

 ああ、私は今救われた。

 この旅芸人達はこうやって人々を救っているに違いない。
 なんと心温まる、なんと希望にあふれる、なんと絶望的で、なんと勇気あふれる戦いなんだろう。

 私には槍働きしかできない。

 しかし、こんな私でも、こんな私だからこそ、彼女たちに出来ることがある。

~嵐の中であっても、それから瞳をそらさない

 そう、一心に見つめることを決めた。











 ラストの「TRY AGAIN(私版)」は自分が盛り上がってしまって、収拾が大変だった。
 感動で興奮した人々が押し寄せてくるのを見かねた人が押さえてくれたので助かったけど。

 どうにかお客さんを解散して、手伝ってくれた二人に感謝すると、長身の女性が片膝をついた。

「え、え、どうしたんですか?」
「先ほどの歌、感動いたしました」
「あ、あ、ああ、うん、ありがと」
「・・・戦場を体感せねばあの詩はでてきません。一角の将とお見受けします」

 ええーーーー、それはないよぉ・・・

「よくわかったわね!」
「桃う、いえ、劉玄徳様は、都の文官達の算術指導をなさった算術の町の筆頭文官であり、親友たる公孫伯珪殿の治世を助け三ヶ月で財政を立て直した内政の知将!」
「・・・そして私たちの師匠として指導する傍ら、人々の土地の蒼天の声を聞き、世直しを志す志士!」

 えーーーーーーー!?
 つうか、黒髪の女性、むちゃくちゃ感動してるし!!
 小さい方も感動してる!!
 ま・・・まずいかな?

「・・・劉玄徳殿、あなたの旗下にお加えください。私は槍働きしか出来ぬ無骨ものですが、貴方を、あなたの志を守りたい!」
「鈴々も、お姉ちゃん達を守るのだ!!」

 うっわー、なんか雰囲気的に断れないし。
 ・・・とりあえず・・・・

「解りました。これから待つのは混乱した世界と混沌とした人の世です。時には泥をすすり、時には土を噛むこともあるでしょう。それでも、一緒に歩いてくれますか?」
「はい、この関雲長、真名「愛紗」。命の限り御仕えします」「鈴々は張翼徳、真名「鈴々」なのだ、よろしくなのだ」

 ・・・え?
 関羽と張飛?
 で、私が「劉備玄徳」。

 うわー、三国志でもっとも質の悪い三悪人じゃん。
 で、天和たちは張三姉妹、というか黄巾賊の首領。
 ・・・大丈夫かなぁ・・・?

「・・・私の名前は劉玄徳、真名は桃香」

 ぎゅっと握手する私たちに天和達も混ざって、決起祝いだと酒家に飛び込んだ。
 その場で姉妹の契りが交わされて、天河の歌姫姉妹は四人から六人に増員され、活発な活動が始まった。

 

(2,532文字)