出張先の松山の宿に文庫本の『坊ちゃん』が置いてあったので読んでみた。
中学生ぐらいのころに一度読んだことがあるような気もしたが、読んでいくうちにハマってしまい、結局一気に読み終えてしまった。
漱石は20代のころに四国・松山に教師として赴任していたことがあり、その実体験をもとに書かれたのが「坊ちゃん」だという。
わたしが中学生のときに読んだときは「ふーん。」という程度の感想だったが、今、四国に住んでみてから読んでみると、当時の漱石の気持ちが実に良くわかる。
漱石が松山にいたのは結局一年ちょっと。今で言う転勤族である。
「坊ちゃん」の中では「四国」とは書かれているものの、具体的に四国のどことは書かれていないが温泉が出てくるので確実に松山である。
漱石がこの松山の土地で相当イヤな目にあったんだなぁということが文中各所に点在する表現から推察できる。
・「不浄の地」という表現。
・赤シャツ教頭やのだいこの人間性
・「ぞなもし」と抜かすガキ
・布団の中にバッタを仕込むガキ
・風呂で泳いでいたところや天ぷらそばを食いまくっていたとこをチクるガキ
・・・
実に四国の人間の陰湿さ・排他性を的確に現している。
また、「坊ちゃん」は非常に短期間で書き上げられたとのことである。
そういう点を踏まえつつ、最後までよくよく読んでみると、要するに「四国・松山に転勤したら、ひどい場所でした。人間が腐ってます。こんなとこには二度と来ねーよ!!バーカ!!!」という内容である。
漱石本人としては実体験を元に、怒りを込めて半ば仕返し気味に一気に書き上げたのが「坊ちゃん」なのであろう。
ここまでズタボロに書かれて松山の人はさぞかし憤慨しているのかと思いきや、逆手にとって「坊ちゃん団子」とか「坊ちゃん列車」、「坊ちゃんスタヂアム」などと名物にしてしまうからたいしたものである。
「坊ちゃん」が書かれてから100年近く経過しているが、四国の本質は「坊ちゃん」の世界と変わっていないように日々つくづく感じる。
今も昔も転勤族には酷な土地である。
道後温泉・漱石の間にて
漱石が松山時代の同僚。坊ちゃんの登場人物のモデルとされる人々
左から たぬき 赤シャツ のだいこ うらなり