◇フィギュア東日本選手権
フィギュアスケートの東日本選手権は4日、前橋市の群馬県総合スポーツセンターアイスアリーナで女子のフリーが行われ、SP13位と出遅れた安藤美姫(25)=新横浜プリンスク=は105・24点で1位となり、合計147・21点として2位に浮上。上位5人に与えられるソチ五輪最終選考会となる全日本選手権(12月21〜23日、さいたま)への出場権を逆転で手中にした。五輪2大会出場の村主章枝(32)=Kappa=は11位だった。
会場を埋めた約1500人の声援が美姫ママの背中を押した。例年ならまず満員にならないローカル大会が、前売りでチケット完売だった。
「駆けつけてくれたお客さんの声援一つ一つが素直に耳に入って力になった。SPの結果を見て『ああ、終わったな…』『もう無理かな』と思ったが、会場のたくさんの力が後押ししてくれた。助けられた試合です」
鳴りやまない手拍子に導かれ、前日のSPとは見違えるような輝きを取り戻し、4分間の「火の鳥」を演じきった。
ソチへ黄色信号がともっていた。SPではジャンプでミスを連発して13位。「きょうが日本で最後(の試合)になるかもしれないと思って会場入りした」。ここからの勝負強さが世界を2度制した女王の真骨頂だ。
冒頭の「最近は10回跳んで1回成功の確率」だった3回転ルッツを見事に着氷すると、流れに乗った。ほぼミスなくまとめてフリー1位で一気に2位浮上した。
逆襲の裏には今季から迎えたイタリア人のバルテル・リッツォコーチの助言があった。「朝の練習を取りやめた方がいい。早く起きなきゃいけないし、それならエネルギーをためて備えよう。うまく気持ちをコントロールして集中すれば大丈夫だ」。同コーチの助言に添い、力みが抜けた。
ソチへの希望はつながった。「もう一度、競技者としてやることは自分で決めたこと。悔いを残すことはしたくない。少しでも2年前の自分に近づけるように。一歩ずつ、自分らしさを出せるようにしたい」。美姫ママは勝負の全日本選手権へ自らを奮い立たせた。 (竹尾和久)
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