リアルサウンド 11月1日(金)12時45分配信
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SCANDAL『STANDARD』(エピックレコードジャパン) |
今回のテーマはバンド・アイドル、略して「バンドル」です。
「バンドル」の元祖はZONEだといわれています。アイドル・グループとして結成されたZONEは2001年のメジャーデビューに際して「楽器を演奏するふりをしながら踊る」という荒技を編み出しました。動画サイトで「大爆発No.1」という曲を披露している『ポップ・ジャム』(NHK/2001年7月)の映像を見ましたが、すごいです。立派なドラムセットが用意されているにもかかわらず、ドラマーは椅子に座ることなくスティックを持ってドラムスの周りをぴょんぴょん跳ねながら踊っていました。ゴールデンボンバーの先駆けです。しかし、ZONEのすごいところは、そのスタイルを変化させ、3枚目のシングル「secret base 〜君がくれたもの〜」以降は実際に楽器を演奏して大ヒットしたという点にあります。これらの経緯からZONEが「バンドとアイドルの融合」を果たした始祖とされています。
最近では、モーニング娘。を脱退した田中れいながロック・バンド、LoVendoЯ(ラベンダー)を結成し、70年代フォークのカバー曲などを収録したミニ・アルバムで今年5月にデビューしました。T.M.Revolutionの西川貴教がその方向性を批判するなど楽曲のチョイスやアレンジに賛否両論あるようですが、トップ・アイドルのバンド転向ということで話題を呼びました。
しかし、一般的に「バンド」は本格的に音楽に取り組む芸術性の高い集団と考えられ、「アイドル」はルックス重視で音楽性は二の次とされる風潮が根強く、ともすれば「バンドとアイドル」には敵対するイメージがあります。
最近、そんな垣根をぶっ壊そうとする動きが、主にアイドル側に顕著です。
代表的なのは、なんといってもBABYMETALでしょう。敏腕ミュージシャンを従えてへヴィメタルとアイドル・ポップスの折衷に成功している女の子3人組。多くのロック・フェスに参戦し、フロアでサークル・モッシュが起こるほどの熱狂ぶりで存在感を放っています。私もサマーソニックで彼女たちのステージを観ましたが、まったく予備知識がなく苦笑いしていた初見の観客たちがみるみるBABYMETALの世界に惹きこまれていく様子を目の当たりにしました。
名古屋を本拠にしている、しず風&絆〜KIZUNA〜は、「Iロック」をスローガンにアイドルとロックの融合を図っています。ブルーハーツのカバーなどで歌い踊る彼女たちのライブもパンキッシュで、特にミニスカートのメンバーが観客の肩や腕の上を歩くクラウドウォークは衝撃的です。
キング・オブ・ノイズと賞される関西パンクの重鎮バンド、非常階段がアイドル・グループのBiSと合体したBiS階段も画期的です。アンダーグラウンドの帝王が教唆する過激で凶悪なパフォーマンスはどこかキッチュで諧謔的でありながら、旧態依然としたアイドルのイメージを破壊するにはじゅうぶんなインパクトを持っています。
さて、今回のテーマは「バンドル」でした。しかし、今ご紹介したアイドル・グループはどれも楽器演奏をメインにしているわけではありませんので「バンドル」とは呼べません。私はいったい何を書いていたのでしょう。
定義があいまいなので、ハッキリさせましょう。2001年のZONEみたいに「まるでアイドルのように可愛い女の子バンド」を「バンドル」と呼ぶことにします。これならいくつか思い当たります。
SCANDALは2006年に女子高生4人で結成され、今や日本を代表するガールズ・バンドに成長しました。20代になった彼女たちはすっかり垢抜け、プロポーションもスラリと細くなって、艶っぽさが目立ちます。デビュー当初はドラムのRINAがいちばん可愛いと思っていたのですが、最近の映像を見るとなんだか全員可愛くなっています。もともとダンス・スクールで知り合った仲間なので振り付きで踊るミュージック・クリップの完成度も高く、まさしく「バンドル」と呼ぶにふさわしい存在です。
「サイサイ」ことSilent Sirenもルックスでは負けていません。ボーカルの吉田菫を中心にメンバー全員がモデルとして活躍している美女ばかりで、ガールズ・バンドのルックス偏差値があるとすれば日本最高峰、東大理3級といえます。この人たちが演奏している姿を観ているだけで癒されます。もはや音楽性をあまり気にしなくてよいほどです。特にキーボードのゆかるんこと黒坂優香子が可愛くてたまらん。
この夏にデビューした、たんこぶちんは全員が佐賀県唐津市在住の現役女子高生バンドということで話題を呼んでいます。特にボーカル、MADOKAの端正な顔立ちとファニーな笑顔には、往年のZONE・長瀬実夕に劣らぬスター性を感じます。ベースのNODOKAとドラムのHONOKAが双子の姉妹。クールでボーイッシュなイメージのギター・YURIなどメンバーのキャラが立っています。ルックスだけでなく、キャッチーな展開の楽曲も爽快で、デビュー曲「ドレミFUN LIFE」のサビメロの高揚感は今年のJ-POP界の大きな収穫だと思います。
今、ガールズ・ロックを語るのに外せないのは住所不定無職という名のバンドです。「あの娘が歌うaikoが好き」と歌っていた数年前のサイケでガレージな印象からメンバー編成も曲調もポップに変容して、最近はメジャー感が炸裂しています。「バンドル」というカテゴリーでは語りにくいですが、他のガールズ・バンドにも彼女たちぐらいブッ飛んだ冒険心を持ってほしいものです。
名古屋の女子大生バンド、カーリーズもキュートな楽曲とルックスが魅力的なバンドでした。かつてフランク・ザッパが「ビートルズより重要な存在」と評したアメリカの超絶的脱力系ガールズ・バンド、ザ・シャッグスにも似たピュアネスで一部のロック・ファンから熱狂的な支持を受けました。今年の春、大学卒業を機会に活動休止してしまったのが惜しまれます。
「バンドル」をテーマに、アイドル・グループとバンドの両方を紹介してまいりましたが、その境界線に立っているのが、その名も「バンドじゃないもん!」でしょう。神聖かまってちゃんのドラマー、みさ子が結成したこのユニットは、金子沙織(かっちゃん)とのツイン・ドラムで、アイドル・ポップス寄りのバック・トラックに合わせて2人でドラムを叩きながら歌うという前代未聞の越境者、カテゴリー・クラッシャーでした。
しかし、バンドじゃないもん!は今年9月にかっちゃんが脱退。現在の編成はみさ子1人がドラムス、アイドル然とした新メンバー4人がボーカルとなっているようです。これではもうわざわざ「バンドじゃないもん!」と言わなくてもいい感じで、現代の混沌とした「バンドとアイドルのボーダーレス状態」を象徴している存在といえるでしょう。
そういえば、AKB48の新曲「ハート・エレキ」もバンド編成を意識したビジュアルを展開しています。楽器を演奏する可愛い女の子たちの姿には普遍的な訴求力があり、「バンドル」のニーズが常に市場に潜在していることの証明かもしれません。
●著書紹介
大阪出身の27才、OL。ポップスとロックと女の子をこよなく愛する。何かに毒づいてばかりの思春期まっただ中。先日ある飲み会で知り合ったバイセクシャルの女の子に何度もチューされてしまいました。こんなことは初めてなのですが、女の子って、柔らかいですね……。身体の奥で地殻変動が起きたような気分の、危ない秋です。
山口真木
最終更新:11月1日(金)12時45分
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