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みらい図書館 オリジナルノベル 「めがみっくす!+」 game.0-3 「古書店と女神とレジェンドちっくなオレ」 【購読無料】
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みらい図書館 オリジナルノベル 「めがみっくす!+」 game.0-3 「古書店と女神とレジェンドちっくなオレ」 【購読無料】

2013-10-04 10:00



    めがみっくす!+


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    game.0
    「ディーテと古書店と道化師なオレ」


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


    「さあ、はじまるですよー♪」

    パンパカパーンッ!

    うるさいくらいに大きな音でファンファーレが鳴り響く。

    ステージみたいなところに、フリフリというか近未来チックな衣装の女の子が立っている。
    やたら豪華な飾りつけに、色とりどりの指向性のライトが踊り狂っている。雰囲気はさながらアイドルのコンサートみたいな感じだ。

    でも、違うのは客だろう。

    ミュージシャンのコンサートに集う同じ格好した大勢のファン?
    それとも素人を何十人も集めたアイドルユニットに熱狂するファン?
    そうそう、アイドル声優のライブに参加してるキモヲタっていうのもあるか?

    いや、どれも違う。
    周囲を見渡すと、わらわらとスライムみたいのがいっぱいいる。

    赤いの。
    青いの。
    緑の。

    ゼリー状のそいつらが、もぞもぞと動き、ゆらゆらと揺れている。
    もしかしたら、遠くから眺めたら緑の芝生や花畑にでも見えるかも知れない。それくらいいっぱい、このヘンな空間を見渡す限りに、だ。

    近くにいるオレには、そいつらがうごうごと蠢く内臓みたいな悪夢の世界にしか映っていないが・・・

    ああっ、アタマが痛い。
    なんでオレはここにいる? どうしてこうなった・・・・・・


          icon_dite.jpg


    オレ、御剣勇児は高校生である。
    思春期真っ只中、青春真っ盛りの2年生だ。勉学に恋に驀進中だぜっ!

    ・・・
    ・・・・・・
    ・・・・・・・・・

    ――いや、恥ずかしいので今のは忘れてくれ。

    オレ、御剣勇児は地元のありふれた公立高校に通う、ごく普通の高校2年生だ。

    成績は中の上。
    特に勉強好きな訳でもなく、教科によって可も不可もある。

    運動はそこそこ。
    オリンピックなんて別世界の如くフツーな運動能力である。

    容姿も多分平均的だと思う。
    女子からキモイとか言われないだけマシ、というところか。

    趣味はゲームやマンガ、アニメとかも好きだ。活字は苦手だが、ラノベくらいならちょっとは読む。でもヲタクかと言われれば、それ程でもない。
    クラスにいるヲタク連中はアニメの放映がはじまったりすると、監督や作画がどうだとか、声優が合う合わないとか、教室のはじっこで真摯に議論してるのを見かけるが、面白けりゃいいじゃん、ってスタイルのオレはそんな話題には入れない。
    多分、ライトヲタクとか隠れヲタクって分類だろう。まあ、別に隠してる訳じゃないが。

    でも、ちょっと変わったところはある。
    人間、何かひとつくらいは特徴あるって言うだろう?

    オレのある種のアイデンティティーが今のところコレだけなのは納得できないが、まあここは収めておこう。


    ――影の延びる夕暮れ時。
    最近のオレの日課となっている放課後の道草。
    さして流行ってもいない地元の商店街をチャリで駆け抜け、その外れの古書店に立ち寄る。
    そう、ちょっとした楽しみがここにある。オレだけの秘密だ。

    その古本屋は、古民家というといい過ぎかもしれないが、和風建築で昭和の古本屋然とした佇まい。棚から天井まで無造作に積み上げられた本の山・・・というか崖に挟まれるみたいに細い通路があり、店の軒先から奥へと続いている。

    その奥には、ひとつ高くなった敷居に三畳くらいの畳敷きの間がある。
    窓もまともに見えないくらい、壁の様に古書が積まれているのは店のカオスな状態と同じだが、ここには年季の入ったちゃぶ台と座布団が敷いてあり、急須と湯のみ、茶菓子入れがいつも置かれている。店主愛用のものだ。

    「あら、いらっしゃい」
    オレに気付いた女店主がにっこりと微笑んで、いつも通りに挨拶してくる。

     mm+_000.jpg

    ドキン。
    鼓動が早くなる。

    「こんにちは、ディーテ」
    オレは高鳴る鼓動を無理矢理押さえ付けて、笑顔で挨拶に答える。

    オレは手近にあった古書を手に取りながら、オレはディーテの容姿に見惚れていた。
    腰まで届くブロンドの髪は女性らしさの象徴。色白の肌、整った眉目。深い金色の瞳は全てを吸い込んでしまいそうだ。プルプルとした桜色の唇は、なんか潤ってる感じがする。
    比較的小柄で線が細い感じなのに、出る所は出てる。いわゆるナイスバディってやつだ。

    もう分かっただろう?
    ああ、そうだ。オレはこの人に『恋』してるぜっ!

    ・・・
    ・・・・・・
    ・・・・・・・・・

    もう一度言う。そう、オレは『恋』してるぜっ!
    これが今のオレの、青春真っ盛りのアイデンティティーの全て!!

    ――ごめんなさい。やっぱり今のも忘れて下さい。

    コホン。

    とにかく、だ。
    ここにはちょっと前に、歴史の課題で参考になりそうな本がないかと偶然立ち寄っただけだった。まさかこんな美しい人が、場末の寂れた古書店をやっているなんて、最初はオレも考えてなかったんだからな。当然だ。

    ああ、一目惚れでしたよ。
    そう思ったら、もうオレの負けだった。こんちくしょう!

    それからは、放課後にヒマを見つけるとちょくちょく足を運んでいる。
    ただ立ち読みして、ディーテと話して帰るのはさすがに悪いし、印象も良くないと思ったオレは、二回に一回くらいは本も買うようにしている。
    高校生の財布としては手痛い出費だが、この至福の時間のためなら我慢のしがいもあるというものだ。

    時が止まったかのような静かな店内。妙に大きく聞こえる柱時計の秒針の音だけが、カチッカチッと時間の流れを刻んでいる。
    「今日は学校、どうだったの」
    ディーテがお茶をすすりながら言った。

    ずっと思ってはいたけれど、金髪美少女がちゃぶ台で日本茶を飲んでるのって結構シュールだ。でも、案外ミスマッチだから不思議だ。きっと、美少女は何着てもどこにいても絵になるってのは、万国共通なんだろう。うん。
    「ん~、いつも通り。平凡な高校生の平凡な学生生活を、特に何事もなく満喫してきたよ」
    「そう」
    ディーテがまたお茶をすする。近所のおばちゃんみたいに、ズズッっとか聞こえないのが上品だ。

    また静寂が店を支配する。でも、気まずいとかではなく、心地良い。
    オレは手に取っていたダンテ・アリギエーリの『神曲』を棚に戻すと、ルドルフ・シュタイナーの『神秘学概論』と書かれた本を無造作に引き出す。
    ――ここは〝し〟の棚の最後か。今更ながら気付いた。

    「ねえ」
    しばらく本(とディーテ)を眺めていると、ディーテが声をかけてきた。
    「貴方の望みは、何?」
    「えっ?」
    唐突だったので、ちょっとたじろいでしまった。
    「望みって、願いとか願望とかってこと?」
    「そう、その望み。夢、でもいいわ」
    望みって言ってもなぁ。「ディーテの恋人になりたいです!」なんて言ったら、未だフラグなしで告白→見事な玉砕、が目に見えてるし。う~ん。

    「ねえ、貴方の望みは?」
    しばし考えていると、ディーテに耳元で囁かれた。

    「ウヒャッ」

    ディーテはいつの間にか、すぐ後ろにいた。
    突然で変な声でちゃったじゃないか。恥ずかしい・・・

    「日常に退屈してるんでしょう? なら、望みはないの?」
    「きゅ、急に言われても・・・」
    ディーテがこんな密着した状態で、望みどうたらなんで考えてられるかっ!
    「昔、ね。欲しいものがあって、ちょっとしたゲームをしたの」
    顔を赤らめるオレなど気にせず、ディーテは続ける。

    「ひとりの人間の男にね、私たち三人がそれぞれの得意な力を授けるから、選びなさいっていうゲーム。選ばれたひとりがそのご褒美を手に入れられたの」
    「はぁ」
    ちょっと間の抜けた返事をしてしまう。ディーテは何を言いたいのだろう?

    「ひとりはね、世界を支配する力を与えると言ったわ」
    世界野支配って、なんかすげえ誇大妄想なやつだな。
    「もうひとりはね、全ての戦いに勝利する力を与えると言ったわ」
    こちらもだ。どんだけ偉いんだ?
    「そして私はね・・・・・・」

    肩に乗ったディーテの手の力が、少し強くなった。
    「ディーテ?」
    「私は、何を与えると言ったと思う?」
    ディーテが真剣な眼差しでオレを見つめている。何かを期待されてる瞳だ。ここで期待に答えたいというのは、惚れた弱みか。
    頑張れオレ、男の子の見せ所だ。大して良くない頭でも、フル回転すればきっとなんとかなるだろう。

    なんか話が壮大だからな。ディーテが持ってるもの何かあげたって考えても仕方ないか。
    世界を支配する力っていうのは権力みたいなものか。全てに勝利する力ってことは武力、軍隊とかかな。核兵器みたいなものかもな。
    そう考えると、これに比するものって事か? とすると、金かな。経済力とか?
    ん、でも支配する力が権力じゃなく経済力って考え方も出来るか。「権力とは、砂上の楼閣である」とか、何かで読んだぞ。うろ覚えだけど。

    「あっ」
    ふと、さっきのディーテの言葉が頭をよぎる。そう、「人間の男」と言っていた。
    「分かったかしら?」
    「世界一の美女、とか?」
    ディーテがくすっと、微笑む。やっぱり可愛い。
    「正解」
    「――ッ」
    ディーテがそう呟いた瞬間、オレの意識はブラックアウトした。


          icon_dite.jpg


    話は戻る。
    いや、正直戻したくはないが、戻んないと現実逃避にしかならないんで仕方ない。

    そんな訳で、オレはここにいる。
    えっ? どこがそんな訳だって?
    それはこっちのセリフだ。ディーテの古書店で意識が途切れた途端、オレはここに居た。オレにも理解できないんだけど、そうなんだから仕方ないだろう。

    周囲には、わらわらもぞもぞとする群れたスライムモドキ(オレ命名)たち。
    そんな中で、オレはイカレファンキーな道化師の格好をしている。メイクもバリバリだ。
    もちろん、何でこんな格好かも分からん。理解できない。

    この状況でパニくらないだけでスゲェと思うぞ、オレは・・・・・・
    いや、自覚してないだけか?

    パンパカパカパーーーン!!

    先程より大きなラッパの音が鳴り響いた。
    辺りのスライムモドキたちがざわつく。

    「さあ、貴方っ!」
    ステージの女の子が、こっちを指差していた。
    オレは後ろを振り返ってみるが、周囲と一緒でスライムモドキがわらわらしてるだけだ。
    えっ、もしかしてオレ? 何で?

    すると、困惑したままキョドってるオレに向かって、ステージから女の子が飛んできた。
    ・・・・・・飛んできましたよ? この子。
    飛んでくるってのは比喩じゃない。ヒューンと空中を飛んできた。
    もうすぐ近くにいる。

    あれ? ディー、テ?

    ちょっと離れていたし、ステージの光の乱反射と奇天烈な服装で分らなかったが、この女の子はディーテだ。間違いない。惚れた女を見間違うはずもない。
    ・・・いや、今まで気付かなかったけど。

    「御剣勇児くん、貴方は指揮官さんに選ばれたのですよ~♪」
    ディーテは妙にハイテンションだ。いつもの大人びた、物憂げで清楚な感じはどこいった?
    ほらっ、これじゃ気付かなくても仕方ないよな、なっ!

    どこかの誰かに内心で言い訳をしていると、ディーテがオレの顔を覗き込んできた。
    「勇児くん、聞いてるですかぁ~?」
    顔近い、近いっ。
    古書店にいる時と性格とかイメージはぜんぜん違うけど、やっぱり可愛いのは変わってない。ドキドキする。

    「まあ、いいですよ。勇児くん、もう一度言いますね。貴方はこの世界の指揮官さんに選ばれたんですよ~」
    「えっ、指揮官?」
    「そう。指揮官さんです。コマンダーさんって言った方がカッコイイですか?」
    こんなイカレた道化師の格好で、そんなこと言われても・・・なぁ。
    「はあ、そうですね」
    どうでもいいと思いつつも、オレは適当に頷き返した。何故かちょっと言葉が丁寧になる。

    「で、キミはディーテ、だよな? ここって何? 最新のヴァーチャルゲームかなんか? よく出来てるけど・・・」
    「違いますですよー。あっ、私はディーテですよ。そこは合ってます♡」
    きゃぴっとした感じで言うディーテ。語尾にハートマークなんかがが見えそうだ。
    見た目はともかく、ホント別人だ。でも、これはこれで可愛いんだから仕方ない。うん。

    「ここは、ん~いわゆる別世界とか異世界ってやつですね。多次元世界のひとつとか言ってもいいです。マンガとかゲームとかであるアレ的なものですよ」
    「はぁ」
    そういう設定だろうか?
    「うん、そうですね。わかりやすいですから、ヴァーチャルワールドってことでいいですよ。ゲームだと思って下さいです♪」
    とはいえ、妙にリアルなヴァーチャルワールドだ。ヘッドマウントディスプレイとかシートの感触もしない。手をわきわきさせてみると、普通に感覚がある。
    映画とかである、意識を直接繋ぐ系の筐体の、試作機とかだったら・・・ちょっと怖いなぁ。

    「それでですね――」

    パーン、パッパカパンパーンパーン!

    ディーテの言葉を遮るように、三度目のファンファーレ。
    「もう来ちゃったですか。まだ説明してないですのに・・・」

    ファンファーレの音と共に、オレとディーテがいるちょっと離れた所、何もなかった空間に巨大な扉が出現していた。高さは十メートルくらいはあるだろうか。ゴシック調?というか、古めかしくて格式のある感じの扉だ。
    因みに、扉だけで壁とかがある訳ではない。何もない中空に扉だけが現われ、ズシンと地面に立った感じだ。

    あっ、スライムモドキが扉の下で何匹かプチッと潰れてる・・・
    あれは放っといていいのか?

    扉がギギィというか、重々しくゴゴゥと音を立ててゆっくりと開く。

    オレは――


    つづく。


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    game.1
    「ディーテと古書店と道化師なオレ」


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


    オレは興味深々で扉に近づいてみた。
    何故って? そこに扉があるからさっ!
    どこかの登山家のように言ってみる。でもなんか虚しい…

    気を取り直して扉の前に立ってみると、向こう側には何も見えない。
    敢えて表現するなら、「闇」か「深淵」だろうか。

    「うわっ!」

    突如、引っ張られるような感覚に襲われると、オレは扉の中に強烈な力で吸い込まれる。さっき覗いたまま、そこには何もなく暗闇がただ広がっている。床もなかった。

    一瞬の浮遊感の後、オレは落下する。まるでジェットコースターの頂上から一気に落ちる時みたいな、顔がこわばって息を呑む。そんな感覚だ。

    「うわわわわーーーーーっ!」

    オレ、大絶叫。

    そりゃそうだ。底の見えない暗闇の中で、安全器具どころかパラシュートそのものが無い状態でのスカイダイビング。
    落下しはじめてからすでに数十秒は経過してる気がする。もしかしたら走馬灯のように実は一瞬、とかかも知れないけどな。
    齢17でオレってば死亡ですか? どこでそんなフラグ立ったんですか? せめて彼女くらい欲しかったなぁ…
    ん? 彼女?

    …しばし考える。(オレ、落ちてます)

    ……もっと考える。(オレ、更に落ち続けてます)

    ………!!! (オレ、まだまだ落下中です)

    そうだ、ディーテ。ディーテだ!
    彼女ならなんとかできるんじゃないか? なんか飛んでた気もするしな。そうと決まれば話は早い。
    オレは渾身の力を腹に込めて、叫ぶ。

    「ディーテーーーーーーーーー!!!」

    暗闇の空間にオレの声が響き渡る。こだました様子はない。かなり広いんだろう。
    オレは「ディーテに届いてくれ!」と、心の中でひたすら祈る。

    「はいです」
    ディーテの声がオレの耳元で声が聞こえた。

    「※ー△×◇+□-○!」

    ビックリし過ぎて、宇宙人でも呼び出しそうなよく分からん声が出てしまった。
    声の方に振り返ると、ディーテが一緒に落ちてる。
    いや、ふわふわという感じなので落ちてる、とは表現し難いか。浮いてる、といった方がいいかも知れない。
    落下スピードは多分一緒だと思うんだけどな。不思議がひとつふたつ増えたところで、もうどうでもよくなってきた。
    しかぁーし! ひとつ許せないことがある。
    このスピードでなぜ! なぜディーテのひらひらのスカートはめくれないんだぁ! だぁ、だぁ、だぁ……
    声には出さずに心で絶叫する。もちろんエコーも忘れない。
    オレってけっこう余裕あるな。もしかしたら順応性が高いんだろうか。それとも、思春期男子のエッチ心は死亡フラグも凌駕するんだろうか?

    「ディーテ?」
    「はいです?」
    不思議そうな顔で何?という顔。やっぱりムッチャ可愛いっす! 勢いで「彼女になって下さいっ!」とか言いそうになったオレは、ちょっと待て、と思い直す。
    まずは落下止めないと死亡だろ? 万が一ディーテがオッケーしたとしても、そのまま即死じゃ、未練が残りまくりで地縛霊とかになって化けてでるんじゃないの、オレ?
    「ディーテ、この落下止められる?」
    オレは率直に聞いてみた。
    「はいですよ♪」
    とディーテが返事すると、落下はスッと止まる。ふわっとした感覚がオレを包み、ディーテのように浮いてる感じになった。と思うと、足の裏に何かを踏みしめる感覚。透明だけど地面みたいな感じがする。
    うわっ、あっさりかよ。さっきまでの焦りが馬鹿らしく思えてきた。大声で叫んだりして恥ずかしい…

    「勇児くん、指揮官さんが自らフライングしちゃダメですよー」
    ぷんぷんといった感じでディーテが嗜める。
    「あっ、うん、ゴメン」
    よくわからないがとりあえず謝っておく。
    「ほらっ、みなさんが慌ててついてきて、一緒に落ちてきちゃいました」
    「えっ?」
    頭上を見上げたディーテにつられて、オレもそちらを見上げる。
    なんかの塊が見えた。しだいに大きくなってくる。塊はいっぱいの点になって、局地的な集中豪雨みたいに降り注いできた。

    ベチョベチョベチョベチョ……

    オレとディーテのすぐそばに、さっきのスライムモドキたちが着地…いや、正確に言うと着地に失敗して潰れていく。
    スライムモドキのいくつかの色が混ざって、まだら模様というかマーブルというか、正直キモイ色が透明だった地面に広がっていく。
    しばらくすると、潰れたやつらが緩衝材みたいになったらしく、後から落ちてきたスライムモドキはぽよんぽよんという感じで無事に着地、周囲で蠢いている。

    「ほらっ、です」
    ぷんぷんといった表情で、ディーテが言った。
    「えっ、何が?」
    ほらっ、の意味が分からず、聞いてみる。
    「勇児くんが急に飛び込んじゃったから、戦力が減っちゃったじゃないですか。プンプンです」
    あっ、プンプンってやっぱり怒ってるんだ。でも頬を膨らませているディーテも可愛いな。こんな怒り方だったらいつでも歓迎だ。
    「なんで勇児くんはニヤニヤしてるですか?」
    不思議そうなディーテ。しまった、顔に出てたか。
    「そんなことより、こいつら一体なんなの?」
    「このコたちはですね~」
    ディーテはにこにこと話はじめた。よしっ、話は逸らせた。オレ、グッジョブ。
    っていうか、ディーテってけっこう単純?

    「可愛いですよね~。そのコたちは、'うにょ'っていうですよ~♡」
    可愛い・・・か?
    そういえば、クラスの女子がどう見てもキモくてグロイ感じのマスコットを「かわいい~♡」とか言って鞄に付けてたりしてたな。
    ちょっと前に流行ったキモカワというやつだろうか。女の子の感覚って時々よくわからないよな。そう思わないか?
    …そういやさっきから誰に問いかけてるんだ? オレ。
    まあいい。
    改めて、ゼリー状の不可思議物体のそいつらを見てみる。

    赤いのは、北欧の有名な河馬っぽい妖精の話に出てくる細長い不思議生命体をちょっと太らせたみたいな見た目だ。
    青いのはちょっと角ばってる感じだ。国民的な日本妖怪マンガに出てくる壁のやつを想像して欲しい。
    緑のは、超有名RPGに出てきそうな形をしてる。妙に愛らしいやつじゃなくて、毒持ってるやつな。

    …スライムってゲームとかだと可愛らしい見た目のも多いが、実際に見るとでっかいゼリーの塊で、うっすらとだけど器官みたいのも見えてる…気もする。
    そこにまんまるい目がついてて、視点は定まらずガチャ目みたいになってる。やっぱり可愛くないよ。キモイよコレ、ディーテ。

    オレはスライムモドキ、改め'うにょ'たちをずっと見てるのが気分悪くなってきて、ディーテを見て口直し…もとい、目の保養をすることにする。
    「で、オレが指揮官とかこいつらを戦力って言ってたよな。それってこのゲームの話?」
    「そうですよ~」
    ディーテはくるっと回って答える。肩に捲いてある長いマフラーみたいのが重さを感じさせずにふわっと翻る。
    すると、暗闇(と、うにょ)しかなかった空間に、ぶわっと星空が広がる。

    mm+_001.jpg

    ディーテが真剣な表情になる。さっきまでのきゃぴった感じではない。古書店の時にちょっと近い、なんか神秘的な雰囲気だ。

    「さあ、これからゲームが始まります。貴方は指揮官として、このコたちを導いて下さい」
    そう言って、ディーテは艶っぽい視線でうにょたちを一瞥する。
    「このコたちはそれぞれに役割をもっています。赤いコは攻撃、青いコは防御、緑のコは補助が得意ですから、上手く利用してあげて下さいね」
    「はあ」
    ディーテの変化にまだついていけてないオレは、とりあえず頷いておく。
    「敵のうにょはすべて紫色。こちらのうにょたちと同じ能力と特性を持っていますから、形で判断して下さい」
    オレはまた、こくんと頷く。
    なんかホントにゲームの説明みたいだな。
    「今回は練習です。下っ端のモンスターが敵の大将ですから、さっさと倒してしまって下さいね。貴方の武器は――」

    おおっ、オレって指揮官みたいだしな、もしかしてゲームとかでありがちな伝説の武器とかか?
    やっぱり剣が王道だよな! エクスカリバーとか草薙の剣とか、村正とかもいいな。あっ、でも、グングニルとかロンギヌスとかの槍もカッコイイよな!
    と、オレが厨二的な妄想に耽ってしまう。いやオレも男の子、ゲームも結構好きだしね?

    ディーテが右手を上げると、棒状のものがその掌に現われる。
    おっ、槍系か? ちょっとわくわくして見ているとすぐに武器が現われた。

    ………

    「さあ、この武器を手に取り、あの敵を倒すのです!」
    なんかカッコイイポーズを取ってるディーテ。
    オレはそれを受け取る。思ったよりもずっしりとした重みがある。
    「えっと、すみません。ディーテさん…」
    さっきの妄想全開とうって変わって、テンションのチョー低いオレの声。

    「はい、なんですか?」
    何故かディーテの口調が元に戻る。表情もさっきのきゃぴきゃぴした感じだ。
    「これがオレの武器?」
    「はいです♡」
    にこっと微笑む。あっ、ちょっと得したかも。
    「で、あそこに見えるのが、オレが戦う…敵?」
    「はいです♪」
    ディーテの極上の微笑み。
    その先には、さっきから「キシャー」という鳴き声を上げる巨大な蛇(ゲームの中ボスっぽい)と紫うにょがその辺りにいっぱい。こっちのうにょと同じくうごうごしてる。
    「………」

    チャラリラッチャチャッチャッチャー♪

    勇児は新しい武器を手に入れた!
    それは、匠の技で作られた(と思われる)伝説の『ひのきの棒』だっ!


    脳内でそんなフレーズが浮かんだオレは――


    つづく。


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    game.2
    「ディーテと古書店と道化師なオレ」


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


    「こんな棒っ切れ一本であんなんと戦えるかぁーーーーー!!」

    さすがにブチギレるオレ。
    突如目の前に出現したちゃぶ台を認識するや否や、往年の野球アニメのおとっつぁんよろしく、両手で勢いよくちゃぶ台返しの必殺技をキメる。
    まぁ、そのアニメは観たことないけどな。懐かしのアニメとかで見た時のイメージだ、イメージ。

    だって至極真っ当、世界の中心近くで叫びたくなるくらい当然の主張だろ?
    どこぞのLv.1の勇者的な主人公が旅立ちの町周辺のスライムっぽいの数匹と戦うとかならこんな武器でもいいだろう。中ボスとか出てくるまでに経験値を積めるからな。

    うにょとか言うその辺でうごうごしてるのは役に立つのかわかんねーし、ひのきの棒で最初から中ボス戦って、どんだけバランス無視したクソゲーだよっ!
    ヴァーチャルとは思えないくらいリアルでこんだけスゲー最新式システムでこのバランスの悪さって、このゲーム作った会社はどんだけ予算のムダ遣いしてんだ? そう思うだろ。マジで。

    ちゃぶ台返しの大技を決めて、片膝着いて両手を天に掲げてそのまま固まってるオレ。納得できない叫びとその余韻で、なんか「ジーザスっ!」って感じのポーズになっちまってる。

    「勇児くんすごいです!」
    そして、なぜかディーテに褒められたオレ。
    「???」
    えっ、怖がられるとか怒られるとかじゃなくて褒められた? ヘンなポーズのまま疑問符で頭を埋め尽くされるオレ。
    「いきなり具象化(リアライズ)のスキル使えるなんて才能あるですよ~」
    「具象化? なんのこと?」
    そのまま聞き返すと、「それです」とディーテがちゃぶ台を指差す。
    ディーテの古書店にあったものと同じだよな。よく見ると、急須と湯のみも近くに転がっている。
    そういやコレ、どこから現われたんだ? 目の前に現われたんでノリでひっくり返したけど、確かにさっきまでなかったよな?

    「やっぱり私の目に狂いはなかったです。勇児くんはこのゲームプレイヤーの才能あるですよ~♡」
    極上の笑み、再び。眼福眼福。
    「うっ、そ、そうか?」
    なんかよく分かんないけど、ディーテに褒められて赤くなるオレ。心情とは異なって視線を逸らして照れ隠しをする。
    ディーテの笑顔で疑問とか吹っ飛んだ。まぁ、大した事じゃないよな、ははっ。
    「その具象化のスキルはですねぇ――」

    「ったく、あいかわらずぶっててムカツクやつだぜ」
    ディーテが説明しかけたかけた時、ぶっきらぼうな声がどこからか聞こえた。男みたいな荒っぽい口調だけど、若い女性の声だ。
    「うふふっ、今度の指揮官さんは可愛らしいですのねぇ」
    続いてもう一人、おっとりした感じの声も聞こえた。こちらも女性の声だ。可愛らしいって、オレのことか? ポッ、と赤くなってみる。
    「へっ、ただのクソガキだろ」
    …すごく失礼なやつだ。とりあえず、オレ的にこの声のヤツは敵に決定。

    「あら、遅かったですね」
    ディーテが声の方に振り返る。オレもつられてそっちを見てみる。
    「………」
    オレ、絶句。
    振り返ったオレの視線の先には、すっげー美少女が二人並んでたんだ。


          icon_dite.jpg


    「で、こいつが今回の指揮官かい?」
    壮麗な槍を携えた際どい格好の美少女がオレを顎で指して言った。「そうですよー」といつもの調子のディーテ。
    やっぱりこの女は失礼だ。美少女だけどな。
    そう、美少女だ。うん、美少女だ。

    じー。

    じーー。

    じぃぃーーー、はっ! 

    正気に帰るオレ。
    ヤベェ、トリップしてた。だってしょうがないじゃん。
    乱暴な口調のこいつが着てるのって、ゲームでしか見ないようなビキニみたいな鎧だぜっ! もう一度言う。ビーキーニーの、ヨロイっ!
    ほっそりしてるのに引き締まった肢体が、健康的なのにエロてぃっくに見えるのはオレの心が邪な故なのか?

    いや、絶対にただのビキニよりエロい気がする。
    コスプレか? コスチームプレイってやつなのか? 本物を生で見るのは初めてだけど、すげークオリティだ。鎧だって本物にしか見えない。硬質ダンボールでも使ってるのか?
    しかもそんな格好で、加えてむっちゃ可愛いんだぜ? ディーテもそんじょそこらのアイドルじゃ裸足で逃げ出すレベルだぜ? それがあとふたりもいるんだぜ?
    おっと、かなり興奮してるな、オレ。テンションがおかしいだろ。ちょっと落ち着こう。

    フー、フーーー、フーーーーー。

    …いや、これじゃ変質者っぽいな。オレは改めてフーーーと息を吐くと、もうひとりの、おっとりした感じの美少女に視線を移す。
    彼女が着ているのは歴史で古代ローマとかの人が着てたっぽい服、と言えば分かりやすいだろうか? 一見お嬢様っぽい黒のドレスだけど、背中が広く開いていて二の腕も大きく露出している。
    うっ、これはこれで刺激的だ。タイプは違うけどこの人もかなりの美少女だし。
    いや、美少女美少女としつこいか。でも分かってくれ、それくらいしか表現しようがないんだ。生まれて初めて、自分のボキャブラリーの貧困さを呪っているオレがいるんだ。男なら察してくれ。もし男じゃなければ気にするな。

    「おいっ、聞いてるのかよ指揮官さん」
    ビキニ鎧の美少女がぶっきらぼうに言う。気が付くと、ジト目でオレを見てる美少女たち。
    「あうっ…」
    オレは開いた口が塞がらない、というかだらしなく開いてないか心配になる。やっぱりこういう時って、鏡見たら鼻の下がのびてたりするんだろうか?
    しまった、このままじゃグレート紳士なオレ(自己診断)の沽券に関わるイメージダウン!
    うおっほん、と咳払いして誤魔化してみる。
    「き、聞いてる、よ?」
    どもった。恥ずかしい…
    彼女たちの「ほんとうに?」という視線がオレに集中。
    「ゴメンなさい。聞いてませんでした…」
    ここは正直に謝る。
    「大丈夫か? こんなんが指揮官でよ――」
    ビキニ鎧の美少女が迷惑そうに言った。
    「あらあら、こんな状況じゃしかたないですよね。ふふっ」
    ドレスな美少女がフォローしてくれる。
    ああっ、この人は優しい人なんだなぁと、オレちょっと感激。

    「勇児くん、もう一度言うですね。こっちの露出狂がアテネ、そっちの腹黒いのがヘラって言うです♪ このふたりも戦いに参加するんですよ~」
    です♪ って、極上の笑顔ですごい毒吐いてるよね、ディーテ…
    「けっ、性悪ぶりっこが何言ってやがる」とビキニ鎧の美少女が。「腹黒なんてショックですわぁ」とドレスな美少女が呟いている。
    ああ、でも良かった。ひのきの棒とうにょだけで戦うわけじゃないんだな。女の子三人とはいえ、正直オレはほっとした。

    ………ん? 何かがオレの頭の隅に引っかかる。
    アテナ、ヘラってギリシャ神話の有名どころの女神だよな? ディーテって、もしかしてアフロディーテのことか?
    ああ、いや、これはゲームなんだからハンドルネームか。ディーテは普段からディーテだけど、外国じゃ神様とか天使の名前を子どもに付けたりするしな。それにあやかってるんだろう。
    やばいやばい。ヴァーチャルフィールドがリアル過ぎて現実とごっちゃになってるな、オレ。
    これはゲーム。そう割り切らないと…昔の有名筋肉俳優主演のハリウッド映画みたいな結末になっちまってもイヤだしな。
    オレも「フェニックス一樹」とか「アクエリアスの神」とかみたいなハンドルネームにしたいな。あとでディーテに設定方法を聞いてみよう。

    「それにしても…ゴルゴンか。いやなヤツと当たっちまったな」
    とぐろを捲いて「キシャーーー」と威嚇している大蛇を眺めながら、ビキニ鎧の美少女――アテネがバツが悪そうに言った。
    「知ってるのか、アレ?」
    威嚇してる大蛇を指す。
    「んー、まあな…」
    どうも歯切れが悪い。さっきの悪態付いてたときとは全然違う。
    「あれはゴルゴン三姉妹の一人。蛇の化け物ですわ」
    アテネに代わってドレス美少女のヘラが教えてくれる。ん~、ゴルゴンってなんか聞いたことある名前の気もする。
    「三姉妹って、アレは女――といかメスなのか?」
    まあ、蛇の性別なんて正直どうでもいいが。
    「ふふっ、ゴルゴン三姉妹はね、長女のステンノー、次女のエウリュアレー、末っ娘のメドゥーサの俗称なの。あれはステンノーね」
    「おっ、メドゥーサは聞いたことあるな。どっかの英雄に首切られて楯にされたんだろ?」
    神話を聞いたときには子ども心に、いくら化け物相手とはいえ英雄もヒデェことすんな、って思ったもんだ。
    「そう、英雄ペルセウスに倒されちゃったの。アテナのせいでね。ふふっ」
    「んっ? アテナのせい?」
    そんな話だっけか? 小学生の時に聞いたか読んだかした話だから、よく覚えてない。
    「ふふっ、それは本人に聞くといいんじゃないかしら」
    ちょっと意味深に呟くと、ヘラはアテナを見て意地悪っぽい表情で言った。
    アテネは「フンッ」とそっぽを向いている。

    「そんな大昔の話は今はいいです。そろそろ戦闘開始ですよ~」
    と、マイペースなディーテ。
    ちょっと気になるが、今はそうも言ってられないか。
    「で、指揮官のオレはどうすればいいわけ?」
    オレはさっきから思っていた率直な疑問を口にする。だって、武器はひのきの棒だし…

    「ん~、そうですねぇ。勇児くんは初めてですから、ちょっとお手伝いしてあげますね」
    そう言うと、ディーテがオレの額に細い指をくっつける。

    「のーうーなーいーまーやーくーーー、ぞーーーりょーーーう♪」

    どっかで聞き覚えのあるような裏声とふざけた口調でディーテが言った。ビカビカビカーン! と、背後に効果音とフラッシュが見えるようだ。
    なんだよディーテのこのノリは。古書店の清楚なイメージはホントにどこいったんだろう…おちゃめなディーテは可愛いけど、あれに憧れてたオレはちょっと寂しいぞ。うん。

    「あーーーんど、めがみのとりぃーびあーーー♪」

    またか…と思うと、もう一度、ディーテの指先がオレの額に触れる。
    すると、このヴァーチャルフィールドやうにょたちのことなんかの基礎知識と思われる情報が怒涛の様に流れ込んできた。
    一瞬だけ意識が遠のき、くらっとする。んっ、妙に気分が高揚してきた?


    「さあ、女神の魅力に集まった愚かな輩達よ!」

    “オレが”そいつらに向かって叫んだ。

    「その溜まりまくった欲求不満をぶちまけろっ! こんなとこにいるのは、現実で腐ったやつばかりだろう?」

    ・・・あれ。これオレが喋ってるんだよ・・・な?

    「麗しの女神さまたちにイイトコ見せて、ご褒美たんまり貰おうぜっ!!」

    キューーーーーー

    スライムモドキ――じゃない、うにょたちの歓声が響き、ゼリー状の身体を蠢めかせる。

    「オマエら、イかしてるぜっ! クールにキメてくれよなっ!」

    キュ、キューーーーーーーー

    いや、イカしてねーよ。キモイよ。と、オレは心の中でツッコむ。
    何この性格とパフォーマンス…つーか、何でマイク持ってんだ、オレ? さっきのちゃぶ台と同じ具象化とかいうやつか?

    「勇児くん」
    と後ろからディーテが声をかけてくる。振り返るオレ。

    「なんだい、愛しのディーテ!」

    …自分のキャラがホントわかんねーよ、もう。
    つーかなんだ、オレって多重人格かなんかだったのか?

    「さあ、私たち三人の誰に攻撃させますですか?」
    ディーテの言葉に、さっき流れ込んできた情報を読んだオレは――


    つづく。


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    game.3
    「ディーテと古書店と道化師なオレ」


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


    フィールドをオレのせい?で落下してしまい数が減っているうにょたち。
    生き残ってるうにょは、赤いのが・・・半分ちょっとか。あとは青いのと緑ので同じくらいだ。
    慣れてきたのか、うにょたちがちょっと可愛く見えてきたかもしんない。早くも毒されてるのかもな、オレ。

    パーンパッパカ、パンパーンパーン!

    ファンファーレで開始の合図が空間全体に響く。なんかやる気を削ぐ感じがするのは気のせいだろうか・・・
    同時に電子チックなノート大のディスプレイみたいのが、オレの目の前の中空に浮かんできた。
    おっ、なんかゲームっぽいな。タブレットみたいに画面で操作できるのか。これはちょっとワクワクしてきた。
    まってましたとばかりに「シャーーー」と敵の大蛇が咆哮すると、紫うにょの一部がこっちに向かってくる。
    「ディーテ、とにかく攻撃してっ!」
    焦ったオレはディーテに指示する。
    「はいですよー、さあ、攻うにょちゃんたち、やっちゃいなさい!」
    明るく返事をして、赤いうにょに命令するディーテ。

    キュキューーーーーー

    ディーテの指示に従い、一斉に赤いうにょが敵の紫うにょに突っ込む。赤いのと紫のがぶつかると、パシュ、パシュっと消えて行く。
    ぶつかって消滅する度に、なんか数字が飛んだり跳ねたりしてる。体力ゲージみたいなものだろう。多分。

    次はどうすれば、と考えていたオレに、「あら、そういえば性格戻りましたのね」とヘラが言った。
    ・・・ホントだ。テンション高いのは一時的な副作用かなんかだったのだろうか。道化師みたいなハデハデ服はそのままだけどな。
    「ヘラは魔法使えるんだよな?」
    「ええ、補助系が得意ですよ。攻撃系はミドルクラスまでですね」
    それを聞いて、オレは手元のディスプレイを見る。そのページには魔法名みたいのが並んでいて、効果が書いてあった。
    「じゃあ、この防御力アップっての使ってみて。あと、防御の青いうにょを壁にすればいいのかな?」
    「そうですわね」
    そう言ったヘラは何か小さく呟く。すると、ふわっと長い杖みたいなものがその手に現われる。

    「守れ護れ硬く堅く、岩よりも鋼よりも硬く堅く、何人もお前を貫くこと敵わず――スクリロ・アスピダ」

    ヘラが手にした杖を高く掲げて呪文らしき言葉を詠唱する。
    杖の先の宝石みたいなのが眩く光り、その魔法の光に呼応するかのように、補助系の緑色のうにょが淡く光り、その光が青い防うにょにふわぁーっと移る。
    ・・・と言うとキレイに聞こえるかも知れないが、ゼリー状半透明のヤツらだから、蛍光臓器みたいに見えてやっぱりキモイ。
    それまでぬぼーっとしてた青いうにょが、魔法で防御力を強化されて前進。攻撃されてる赤いうにょを盾となって守る。
    敵の紫うにょの前進が止まった。
    「アテナ! 今だ! 突撃してっ!!」
    ディスプレイの情報にアテナは正面突撃が得意な騎士クラスってなってるのを確認したオレは、そう指示する。ホントに指揮官になった気分でちょっと気持ちいいぞ、コレ。

    「うっしゃあーーー」

    言うが早いか、でっかい槍を携えてものすごい勢いですっ飛んで行くアテナ。ビキニアーマーからこぼれるお尻が強烈だ・・・オレは心ならずもじーーーっと凝視してしまう。
    「勇児くん、ああいうのが好みですか?」
    と、じと目のディーテ。
    ううっ、仕方ないんです。思春期の男の子なんてこんなもんなんです。できればそんな目で見ないで下さい・・・

    「燃えろ燃えろ赤く紅く、天の劫火に地獄の業火、我が敵は祖が仇なり――ボルフィルン・ロンヒ!!!」

    呪文を唱えるというより、叫ぶアテナ。
    「うわっ、すげー」
    うにょ同士とは全く違う。手に持つ槍ごと前進が真紅の槍と化したアテナの突っ込みで、正面直線上の紫うにょが跡形もなく消滅していた。
    残っていた赤い攻うにょがアテナの特攻にキューキューと続く。

    数分後。
    バトルフィールドはうにょ同士の乱戦になっていた。
    ディーテたちみたいな特殊キャラクターにはターンとやらがあり、行動が制限されるらしい。
    それはそうだ。さっきのアテナの特攻みたいなのが無制限に使えるなら、勝負にならないだろうからな。うん。
    オレは次のターンまで特に指示することもなく、うにょ同士の戦いを傍観する。もちろん、手元のディスプレイ見ながら使用方法や状況は確認している。
    双方のうにょはかなり数が減っている。

    パパパパーンッ

    と、さっきよりは少し小さめのファンファーレが鳴る。次のターンのようだ。
    「じゃあ、アテネにまた突撃してもらって、ヘラの攻撃魔法とディーテの補助スキルっていうので――」
    指示を出そうとした途中で、なんかオレは影に包まれる。はっとして見上げると、大蛇の凶悪な顎が目の前に迫っていた。
    走馬灯のようにゆっくりと、コマ送りのように蛇の牙が迫ってくる。あっ、これは死んだな。オレ。

    ガキィィィン

    「くっそ、オマエがやられたら負けちまうだろうが・・・」
    巨大な槍を盾にして、アテネがオレと大蛇の間を遮っていた。
    「あっうん、ゴメ――」
    誤ろうとした瞬間、槍ごと大蛇の巨大な口にアテネは飲み込まれた。グシャァと、肉が潰れて、鉄臭い血の匂いがオレの鼻腔を突く。
    「あっ・・・」
    呆然とするオレ。
    「勇児くん! ぼーっとしてないで逃げてください!!」
    ディーテの声が聞こえる。すぐ近くにいるはずだが、声は遠い。
    なんだコレ、リアル、過ぎないか・・・?
    「・・・・・・・・・・・・」
    ヘラがなんか言ってる。

    「ギシャーーーー」

    大蛇が悲鳴を漏らし、離れて行く。
    「勇児くんっ!」
    「あっ、ご、ゴメン・・・オレ・・・」
    「私の魔法でダメージ与えました! いいですから、体勢を建て直しますわよ」
    ヘラがそう言って、オレを引っ張る。
    「う、うん」
    アテナが喰われたショックから立ち直れないオレは、茫然自失のまま一時撤退する。


          icon_dite.jpg


    「勇児くん、落ち着きましたか?」
    ディーテが心配そうにオレの顔を覗き込む。
    「あ、ああっ。ちょっとリアル過ぎてびっくりしただけだよ。ごめん、大丈夫」
    いくらリアルって言っても、ゲームだもんな。うん。
    「ならいいですよ、反撃に出ますがいいですね?」
    ディーテがオレに確認する。
    「うん、そうしよう・・・よし、気持ち入れ替えた」
    「ふふっ、若いっていいわね」とヘラ。
    いや、見た目から考えると大して年齢変わらないと思いますが? と言いかかったが、まぁ、どの年代でも女性にこの話題は禁句らしいからな。この話題はやめておこう、と言葉を飲み込む。
    「騎士クラスのアテナがいなくなってしまいましたから、攻撃の決め手に欠けちゃいましたわね」
    あんまり危機感の感じられない口調でヘラが言う。
    「次のターンまであんまり時間ないんですよ~。残ってるうにょちゃんたちじゃ、アレには大して効果ないですよ~」
    タイプは違うが、そう言うディーテも危機感はあまり感じられない。
    「地道にライフポイント削ってくしかないのかな・・・」
    あんまり役に立たないと思うけど、唯一の護身具なので持ったままになってるひのきの棒をくるくる回しながらオレが呟く。
    「あっ、それですよ、勇児くん!」
    はっと気付いたようにディーテが言った。
    「何? それってコレ?」
    ひのきの棒を指してみる。いや、まさかな?
    「そうですー♡」
    そうなのか・・・
    「どういうことですの?」
    ヘラも分からないらしく、ディーテに問いかける。
    「簡単なことですよ。それであの蛇やっつけちゃって下さいね♪」
    それ、ってこのひのきの棒で? もしかしたら匠の技でつくられた一級品とかかも知れないが、ただの棒だぜ? 某超有名RPGでも初期装備で、スライムくらいにしかムリってな代物だぜ?
    「ムリだよディーテ・・・」
    当然、オレはそう答える。
    「大丈夫ですよー。勇児くん、具象化スキル使えるじゃないですか~」
    キラキラした目でディーテが言った。
    「本当ですの? 具象化はかなり高等なスキルですわよ?」
    半信半疑の感じで、ヘラ。
    「えっと、さっき聞き損ねたんだけど、具象化――リアライズって何?」
    取り敢えず聞いてみる。
    「さっき、勇児くんちゃぶ台を出しましたよね」
    「うん。出したって言うか、気が付いたら目の前にあった?」
    「そうです。あれは勇児くんが、キレた拍子に具象化スキルを発動させてたんですよ~」
    「はぁ・・・」
    まだよく分からん。オレがちゃぶ台を出したからってどうだってんだ?
    「ふむふむ・・・」と、隣でなんとなく納得したようなヘラ。
    「具象化スキルはですね、終局的にはこの空間にあるあらゆるものを、自分の思い通りの形に出来るすごいスキルなんですよー」
    「へぇぇー」
    頷いておく。なんとなく凄そうだが、何が凄いのかピンとこない。
    「つまりですね、その何の変哲もないひのきの棒が――」

    パパパパーンッ

    げっ、次のターン開始だ! さっきみたいに悠長にしてたらまたどうなるか分かったものじゃない。
    「ディーテ、話はちょっと待って。ヘラ、まず攻撃魔法でアイツを牽制して、ディーテは残ってるうにょに補助魔法で支援させて!」
    「はいですわ」
    「わかりましたわ」
    ディーテとヘラが答え、すぐさま体勢を整える。

    オレはさっきのディーテの話を思い返して、ひのきの棒をじっと見る。具象化ってやつを使えば、これをまともな武器に作りかえられるってことなのかな?
    よく分らんが、試してみるか。
    「ぐぬぬぅ」
    ひのきの棒を両手に持って力を入れてみる。何も起こらない。
    ひのきの棒をブンブンと振ってみる。何も起こらない。
    ひのきの棒を右手に持って、天に向かって翳してポーズを決めてみる。オレってもしかしたらカッコイイかもしんない。
    「なに遊んでるですか? 勇児くん・・・」
    「えっ、いや、具象化ってやつできるかな、とか思ってみたりして?」
    呆れ顔のディーテ。
    なんか切ない気分になってきた。頑張ろうと思ったんだけどな・・・くすん。
    「具象化スキルも魔法みたいなものですよ~。つまりはノリと自己暗示ですよ。さっきのヘラの呪文みたいにやってみたらどうですか?」
    いや、そんな魔法をノリって・・・まぁいいや。ディーテがそう言うならやってみよう。
    えっと、さっきのヘラの感じ、と。

    「光れ輝け眩く強く、大地も天も金剛も、絶て裂け抉れ、柔布の如く――」

    ちょっと考えてから、ゲームやアニメでよくある光の剣を頭の中にイメージして、厨二病全開のセリフで言ってみる。
    さっきみたいにひのきの棒を天に捧げてポーズも付けてみた。
    ゲームだしな? いいよな、こんなノリでっ! なんかそれっぽいだろっ!?
    オレは誰ともなく心の中で言い訳する。
    「おおっ、勇児くんカッコイイですよー♪」
    ディーテの声援に更に気を良くするオレ。

    「――我が手に出でよ、破邪の剣(カオスブレイカー)!!」

    調子に乗って叫ぶ!
    ヘラの呪文名は何後かよくわかんなかったから、そこは英語にしてみる。学校で習った単語というより、なんかのゲームであったやつだ。

    一瞬の空白・・・あれ? もしかして・・・やったちゃった?
    と、恥ずかしくなって顔が赤くなりかけた瞬間、オレの掲げるひのきの棒が光りだした!

    「おおっ!?」

    さっきの即席呪文に呼応したかのように光出した棒。眩しくて顔を伏せ、目を閉じる。
    手の中の感触が変わり、重みが少しだけ上がる。
    うっすらと目を空けてみると、もう光りは収まっていた。ひのきの棒を見ると、なんかカッコイイ剣になっていた。

    「おおっ、オレってばすげー! なんかコレって伝説の剣みたいじゃね?」

    『匠のひのきの棒』改め、『破邪の剣』をブンブンと振り回すオレ。
    でかくて硬そうで、よく斬れそうに見える剣は、ひのきの棒よりちょっと重いくらいで、思いっきり振り回しても全然問題なかった。
    昔、ほんの少しだけ齧った剣道の練習を思い出し、正眼に構えてみる。
    「勇児くん、ステキですよー♪」
    ディーテの言葉にまた気を良くするオレ。

    「ちょっと、貴方たち! 遊んでないでなんとかなりそうなら早くやって下さいな!」
    そういえば、ヘラとうにょに戦いを任せっきりだった・・・
    「ゴメン! すぐに――」
    彼女の方に振り返るオレ。すぐ近くにまで大蛇が迫っていた。
    「ってもう目の前じゃん!!」
    「だから、早く! ガードももう持たないっ!」
    ヘラが焦って叫ぶ。さっきまでの落ち着いた感じは見えない。

    「ディーテ、とりあえずヘラをサポートしてっ!」
    「はいですよー」
    明るく答えるディーテ。この人はマイペースだな。やっぱり笑顔がかわいいぜっ!
    と、そんな場合じゃないな。

    「さぁ、ケストス・ヒマスちゃん――伸び伸び伸び伸び伸びちゃって、巻き巻き巻き巻き巻きついて、ぎゅうっと絞めてもいいですよ~――アガピ・スフラギダー♪」

    今度はそう言ったディーテが呪文を唱える。すると、ディーテの首に捲かれていた長いマフラーみたいな布がひらひらと舞い、言葉通り伸びる。伸びる。伸びる。伸びる。伸びる。
    ヘラやアテナの呪文に構成は似てるけど、彼女のはちょっとヘンだった。
    『ケストス・ヒマス』って言うのか? あのマフラーみたいの・・・すぐにディーテの周りが布でいっぱいになる。
    ・・・いや、どんだけ伸びるんだ? と思っていたら、大蛇に向けてものすごいスピードで巻きついていき、そのまんまぎゅううっと締め上げる。

    「ギャシャアアアアーーーーーーー」

    大蛇が咆哮する。悲鳴なのだろう。
    「勇児くん、今ですよー」
    布みたいのを操りながら、ディーテが促す。
    「お、おうっ!」

    破邪の剣を握り直し、構える。

    落ち着け、落ち着け、オレ。

    呼吸を整える。

    「だっ、りゃああああーーーーーー」

    ディーテの布に拘束されている大蛇に向けて、上段から真っ直ぐに、オレは剣を振り下ろす。

    ザシュ

    そう、終局はあっけなかった。大蛇は真っ二つに裂け、光に包まれて消えていく。

    「えっ!?」
    オレは目を疑った。消えていく大蛇の最後の欠片が人を形づくり、可愛らしい女の子の姿になった。
    「えっ? えっ??」
    オレは分けがわからなくなっていた。
    オレたちはボスの大蛇を倒した。ゲームが終わって万々歳・・・じゃなかったのか?
    なんだ、コレ? 女の子? えっ?

    「何で・・・」
    女の子が呟く。
    「何であたしたちがこんな目にあわなきゃなんないのよっ!」
    女の子の目に涙が溢れる。
    綺麗な涙はそのまま頬を伝って零れ落ちる。


    mm+_003.jpg


    「せっかく、せっかく憎いアテナをぐちゃぐちゃにしてやったのに・・・」

    大粒の涙。涙。涙。

    「エウ、メディ、ごめん・・・ね。負けちゃった・・・」

    涙が溜まったままの瞳で、オレを見つめる女の子。

    「あんたのせいよ、ばかぁ・・・」

    そう言って、大蛇の欠片の女の子は虚空に消えていった。


          icon_dite.jpg


    オレの服装が戻った。派手でヘンテコな衣装は、元のブレザーになった。破邪の剣がひのきの棒に戻ったのにはガッカリした。
    気分は妙にスッキリしてる。ストレス解消になってるのか? でも逆に、オレの心はすっきりしない。さっきの女の子のことだ。
    オレはちょっと落ち着く。いや、落ち着こうとする。

    「ディーテ・・・」
    「はいです?」
    「さっきの女の子って・・・何だったの?」
    オレは堪らず聞いてみる。
    「最初に言った通り、ゴルゴン三姉妹の一人、長女のステンノーですわ」
    ディーテが答える前に、横からヘラが言う。
    「うん・・・アテナが化け物に・・・したんだっけか?」
    「そうですわ。いくら脳筋のアテナでも、美の女神でもありますの。そのアテナに、末娘のメドゥーサが――そうね、喧嘩を売ったのですわ・・・」
    「どんな?」
    ばつが悪そうに言うヘラに、オレは尋ねる。
    「アテナより美しいって・・・」
    「えっ?」
    「ゴルゴン三姉妹はただの人間だったけど、神々の間でも評判になるくらいの美しい姉妹だったの。末っ娘のメドゥーサは特に可憐だったわね・・・」

    ディーテがオレの肩に腕をまわして、「でもね・・・」と耳元で囁く。
    「メドゥーサは調子に乗って、美の女神であるアテナより美しいって言っちゃったの。莫迦な娘よね」
    古書店の時のディーテがそう言った。
    「それで?」
    彼女の息が耳にかかる。どきどきしながらも、オレは問いかけた。
    「生意気な人間風情に、怒ったアテナが罰を与えた・・・」
    「それで化け物に?」
    「そう。庇った姉たちも一緒にね」
    「そんなことで・・・」オレは呟く。
    「神も人もね、女の闘いは男なんか比べられないくらい熾烈なものなのよ・・・」
    ふふっ、と微笑む。
    その微笑みはいつも通り綺麗だったけど、ちょっとだけ怖くて、ディーテがディーテじゃないみたいだった。

    「で、でも、それって女神と神話の話・・・だよね?」
    ちょっとだけ・・・うん、ちょっとだけビビリながらも、オレはそう返す。
    「そうですよー♪」
    口調が元に戻った。結構忙しい人だ。
    「それに因んだゲームだと思って下さいですよ~」
    「あっ、そっか、ゲーム・・・か。リアル過ぎてまた忘れてた・・・」
    ディーテのこの言い回しには意味があったんだが、この時のオレはそれに気付いてはいなかった。


          icon_dite.jpg


    そしてオレはヴァーチャル・ワールドから戻り、いつもの日常に戻る。
    意識がブラックアウトして、気が付くとそこはディーテの古書店だった。どんなシステムになってるのか聞いてみたが、教えてもらえなかった。
    「またこのゲームで遊んでくれますか?」別れ際に、ディーテがそう言った。

    オレは――


    つづく。


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    しろぬこ 著
    イラスト みるくぱんだ

    企画 こたつねこ
    配信 みらい図書館/ゆるヲタ.jp
    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。

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    まじょおーさまばくたん!  WORKING!!(12) オリジナルドラマCD付 豪デレ美少女 凪原そら 3

     

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