男女格差解消 進歩なしとは言えないが
136カ国のうち日本は105位。その一つ前がカンボジアで、一つ後ろがナイジェリア-。これは何の順番だろう。
スイスのシンクタンク、世界経済フォーラムが発表した2013年版の「男女格差報告」の国別ランキングである。
シンクタンクは「頭脳集団」と訳される。いろいろな分野の専門家を集めて、さまざまな社会の課題を調査・研究し、政策提言をしたりする。世界経済フォーラムはスイス東部の保養地ダボスで開く年次総会(ダボス会議)で有名である。
報告書の国別順位をもう少し紹介すると、アジア・太平洋地域のトップはフィリピンで全体では5位、モンゴルが33位でタイが65位、中国は69位となった。韓国は日本より下位の111位だった。
どうも納得できない。そんな声も聞こえそうだ。ただ、これは国と国を比較する調査ではない。それぞれの国における女性の地位を経済、教育、政治、健康の4分野で分析し、数値化したものだ。
特に政治や経済の分野で女性がどれくらい意思決定の場に関わっているのかをみる-。こう言い換えができる。
例えば国会議員である。現在衆院に占める女性議員の割合は7・9%(38人)である。徐々に増えていたが、昨年末の総選挙で大きく減って10年ほど前の水準に戻ってしまった。その結果、政治分野の日本の順位は118位にとどまった。
経済の分野はどうか。内閣府の13年版男女共同参画白書をみると、こちらもまだまだだ。例えば企業の管理的職業で女性が占める割合は11・1%にとどまり、欧米はもちろんマレーシアの25%、シンガポールの34・3%とも格差がある。
一般労働者の給与水準では男性を100とすると女性は70・9にとどまる。
将来の中核と期待されて大手企業の「総合職」として採用された女性は10年後に半分以上が離職しているという。結婚や出産を機に仕事か家庭かの選択を迫られる状況が続いていることが分かる。
男女格差の解消が全く進んでいないとまでは言わないが、歩みが鈍いのは事実である。だが、その実績に比べ、掛け声の方となるといつも威勢がいいのだ。
安倍晋三首相は「女性が輝く日本」をうたい、女性の活躍こそが政権の成長戦略の中核と言う。そのために保育所の増設を急ぎ、育児休業制度の充実を図る。
女性の社会進出を後押しする姿勢は歴代の政権とも共通だ。民主党の前政権も女性の活躍で経済を活性化させる行動計画「『なでしこ』大作戦」を展開した。
男女雇用機会均等法が1986年に施行され、99年には男女共同参画社会基本法が施行された。そこで「性別にかかわらず、その能力と個性を十分に発揮することができる男女共同参画社会の実現」が政府の最重要課題の一つとなった。
少子高齢化だから女性の活用を-との発想は少し安直だ。「男女格差報告」で日本は3年連続で順位を下げた。政府は抜本的な格差解消策が求められている。
=2013/11/04付 西日本新聞朝刊=