■失言、失策、経験不足
申斉潤・金融委員長と崔守鉉・金融監督院長は、状況が差し迫っても、東洋グループが系列会社や資産を売却し、資金を調達する方向で時間的猶予を与える方法を選択した。積極的な構造調整には介入しなかった。
崔院長は「東洋グループは銀行からの借り入れよりもCPや社債の発行額が多く、主要債権銀行さえない特殊なケースだった。個人投資家の被害を最小化しようとしたのであって、無策のまま引き延ばしたわけではない」と説明した。しかし、ある元政府高官は「経験のない医師が手術を怖がり、薬物治療にばかり頼っているのと大差ない」と指摘した。
経験不足は相次ぐ失敗につながった。崔院長の慎重さを欠く発言が代表的だ。崔院長は先月18日、国会政務委員会の国政監査で「東洋グループのような大企業が4社程度ある」と発言した。第2、第3の東洋グループが存在しているというニュアンスだった。波紋を恐れた崔院長は「財閥の中で金融系列企業を通じ、CPや社債を販売している企業が4社程度あるという意味であって、危険だという意味ではない」と釈明した。
■市場の不信感
企業再生を図るためには、一度に十分な資金支援を行い、市場の不安感を解消する必要があるが、金融当局は消極的な態度に終始し、市場の不信感を自ら招いた。
通貨危機当時、企業構造調整を担当した関係者は「煮えたぎる釜に水をひとすくい入れたところで何にもならない」と指摘した。韓進海運は先月30日、大韓航空から1500億ウォン(約139億円)を借り入れたが、市場の反応は冷ややかだ。債権団の支払い保証を得て、4億ドル(約393億円)規模の永久債(満期のない債券)発行を含む大規模な対策を示すべきタイミングにもかかわらず、そうはしなかったからだ。31日の株式市場では、韓進海運と大韓航空の株価がいずれも下落した。
申金融委員長は「今年7月の社債のスピード買い取り制度導入などにより、市場の混乱を防ぐ対応策を整えた。通貨危機当時の構造調整は超法規的な性格まで帯びたもので、それに比べスピード感が感じられないというのは誤った比較だ」と反論した。