第45回日展 (平成25年度) 入選点数および審査所感
入選点数一覧
第1科 日本画 |
第2科 洋画 |
第3科 彫刻 |
第4科 工芸美術 |
第5科 書 |
合計 | |
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応募点数 | 527 | 2,136 | 171 | 856 | 10,229 | 13,919 |
入選点数 | 204 | 564 | 120 | 496 | 974 | 2,358 |
うち新入選数 | 22 | 65 | 12 | 46 | 156 | 301 |
審査所感
第1科 日本画 審査主任 中路融人
今年度は昨年より搬入数は減少を見たが、全体に作品はなかなかバラエティに富んで新鮮な印象を受けた。審査員一同は厳粛に気を引き締めて選考した。その結果、入選は昨年より数点少なくなった。
特に最後の特選審査の際は緊張感を持ってよい作品を厳選し、例年になく特選は9点で切り、妥協を許さない優作が揃えられたと思っている。日展の水準の向上を願って、今回は全員の意見でこの様に決定した。新しい日本画の創造に懸命に挑んで行く意気込みを審査員より感じた。
今年入選した人、惜しくも選にもれた人も明るい希望を持って来年度に挑戦していただくことを大いに期待している。
第2科 洋画 審査主任 中山忠彦
近年、緩選の傾向にあった入選者の増加が、洋画会場の繁雑さに繋がり、同時に作品の質の低下を招来している現状を危惧する空気があった。本年は軌道修正をと覚悟を決めて審査に向かった。
「審査することは、審査をされることである」との自覚のもとに、各審査員が個の事情より、日展のレベルと品格を保つ目的意識で一致協力を得られたのは、誠によろこばしいことであった。
今年はとりわけ若年層の優作が目立ち、将来への明るい展望が拓けたのは、大きな収穫である。日展百年の伝統に、時代の新風を加え輝かしい曙光をみるのは、新たな時代の到来の予兆であると、大いに意を強くした次第である。
入選者各位に大いなる夢を託して、心からお祝いを申し上げるとともに、私情を捨てて、日展洋画の誇りのためにご協力くださった審査員諸氏に、満腔の謝意を捧げたい。
第3科 彫刻 審査主任 能島征二
今年度の第45回日展第3科(彫刻)の応募数は、大震災後約2年半で社会状況も厳しい中にあって、前年度と比べ、やや減少はしたものの、真剣に取り組んだ力強い作品が多く見られた。その内初出品者は33名であった。
作品の傾向としては、多様な表現や多種の素材の作品が出品され、若い力を感じさせた。
人体作品に於いては、各自の意志主張を的確に表現した作品が多く、また真摯に彫刻に向かう姿に好感が持てた。更に内面性を重視した作品を期待したい。
特選の作品では修練を重ね、高度な技量の表現や独自の創作で、現代の息吹を思わせる作品が選ばれた。
さらに次代の若い作家の新しいうねりを感じさせる作品を期待したい。
第4科 工芸美術 審査主任 大樋年朗
平成25年度第45回日展は、国立新美術館での開催は7年目となり、今や安定した展覧会となってきた。私達の工芸美術の応募搬入数は856点となり、昨年より増加し、現今の社会情勢の中でありながら、喜ばしいことである。
工芸美術のジャンルは多種にわたり、加えて新素材や新技術を駆使した作品類が見られ、私達の主張の工芸運動がジョイントした新しい潮流が見られ、今後が楽しみである。
審査は、1審、2審、3審と厳格に鑑審査を繰り返し、入選数496点を選出したものである。
晴れの特選作は、今を意識した新しい作品を選定し、今後の発展が楽しみである。
第5科 書 審査主任 樽本樹邨
本年度も書部門の応募点数は1万点を超えました。そのうち入選数は974点と1割にも満たないほどの厳選でした。この厳しい中での入選作品の選出にあたりましては、とにかく良い作品を選ぶという心構えで臨みました。
この大きな日展という展覧会では、出品作がこれまで学んで培ったものを総ざらいして試行錯誤し、真剣に生みだした練度の高い作品群であるため、審査は難航しました。特に今回の作品について気がついた事は、余白を強調したもの、躍動感のあるもの、古典的な文字で構成されたものなど画一的ではない個性が見え、将来につながっていってほしいと願っています。
特選の選考は新鮮にして自己主張のある、レベルの高い作品ばかりでしたが、その中でアカデミズムのある作品が選ばれました。特に調和体はまず「読める書」を意識しています。その上に内容が深く、全体に調和がとれている作品に決定しました。特記すべき事は、この調和体の部門に2点の特選が決定したことです。誠に喜ばしい事で今後の成り行きが注目されます。
近年の書の傾向として、奇を衒ったような作品が流行っている向きもありますが、根底には古典の匂いもなく、その人自身の顔も現われては来ません。伝統を重視し、格調高く、しかし新しい時代の息吹も取り入れて突き進む日展の芸術を、今後も発展させ、牽引する作家が書の部門でたくさん出現することを期待しています。