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第4話 隆、高校デビュー
4.隆、高校デビュー

 新小岩の駅を出ると金髪の男が改札口の所に立っているのが見えた。右手をポケットに突っ込み髪をかき上げている。俺は特に気にするでもなく横を通り過ぎていく。
「おい、待てよ」
 後ろからなんか声がするが無視する。
「おい、シカトすんなよ」
 さらにシカトを決め込もうとしたときに肩を掴まれた。振り返ると髪を金髪(よく見ると所々にむらがある)に染めた隆の姿があった。
「あれ、それどうした」
 隆はああ、と言って照れくさそうに髪を触っている。
「バンド組むことになったし、ちょっと気合入れて染めてみた」
 自分が染めたわけでもないのに金髪の隆が隣に居るだけでなんか気持ちが大きくなって、見える世界が違う気がした。
 俺も染めようとは思っていたのだが、校則違反になるのでまだ踏み込めないでいた。調子に乗って目立ってしまうとなにかと面倒も多くなる。隆はハンデがあるし、ケンカはもちろん弱いんだろう。しかし、誰も隆には手を出さない。いや、出せないんだろう。それは隆自身が一番よく知っている。

 校則違反で家に帰されることを密かに期待していたのだが、そんなこともなくまだ一時間目が終わったばかりなのに隆は平然と早弁をしていた。
 隆を見ているといちいち驚くことが多い。例えばペットボトルの飲み物を開けるときでも、右手でうまく押さえながら自分ひとりで空けるし、軽音楽の練習の時もボーカルはまだやることがないので暇だったんだろうが、ドラムを片手で器用に叩いて遊んでいる。俺に助けを求めるのは靴の紐が解けてしまったときぐらいだ。
 隆は弁当を半分以上食べてしまうと、満足したのか弁当箱を大切そうに鞄にしまって俺に声をかけた。
「今日練習行くだろ」
今日はコンパで軽音楽の練習には行かないつもりだが、まだ隆にそのことは言っていない。
「いや今日実はコンパがあるんだよ」
 隆は、は〜?そんな話聞いてねーぞ、と言わんばかりの顔をしている。俺は何故か「おまえもくるか」と聞いていた。ビスは岩津というやつを連れてくる。人見知りの俺は仲間が欲しかったのかもしれない。
「行くに決まってんだろ」
 と目を輝かしている。普通ならここで「え、行ってもいいの」と遠慮の言葉が出てくるはずだ。図々しいやつだ。
「んで、どこ行くの」
「カラオケ」
 そういえばまだ隆の歌を聴いたことがなかった。一人ぐらい増えても何とかなるだろ、と楽観的な考えで隆をコンパに連れて行くことにした。
次回はいよいよコンパで隆の歌声を祐介が知ります。
しかしそこには思いがけない展開が・・・・
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