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金髪と黒髪の少女
 一人は金髪碧眼の女の子だった。歳は十七か八くらい。ウェーブのかかった長髪、はっきりした目鼻立ちにすっきりした輪郭、起伏の激しいボディラインをしている。装備しているのは革の鎧にブーツ、サーベルだ。
 もう一人は髪も瞳も黒く、東洋人に見える。歳は最初の子と同じくらいだ。ストレートロングの髪が紫がかっているところを見ると、たぶん染めてるんだろう。切れ長の目に端正な顔立ちをしており、すらりとした体をしている。一人目と同じく革の鎧とブーツを身につけており、持っている武器は数本のナイフだ。
 もしかして、これは逆ナン……いや、んなわけないか、こんなところで。
「俺たちになんか用?」
 たずねると、金髪が俺を見つめながら訴えた。
「チームを組んでくれる人を探してるんです、どうか力を貸してください!」
 もう片方は黙りこくっている。金髪はそれを見て眉をひそめた。
「ちょっと、あなたからも頼んでよ!」
「え、ああ……私からもお願いします」
 黒髪の方は、なんだか他人事みたいな態度だ。まあ別にいいけどね。
 問題はこの二人のランクだ。どうせチームを組むなら強い方がいい。
「君たちのランクは何?」
 聞いてみると、金髪がおずおずと答えた。
「二人ともEです……」
 うん、却下だね。Eの人たちと組んだところでなんのメリットもない。これから強くなりそうなら話は別だけど、どっちも女の子ときてる。かわいいからといって手を組むのは自殺行為だ。
「悪いけど他を当たってくれ」
 突き放すように言うと、金髪が涙目になりながら俺の手を握りしめた。
「他の人にも頼んだけど断られたんです、私たちを助けると思ってお願いします!」
 うーん、まいったな……どうしよう。
 困り果てていると、エドが口を挟んできた。
「信一、組もうよ。ちょうど僕たちも仲間を探していたところだしさ」
 最悪なタイミングで余計なことを。ほら、女の子が目を輝かせちゃってるよ。
「お願いします! 私、ジェシカ・バーグマンです!」
「私はリンファンです、どうぞよろしく」
 あーあ、最弱のチームができ上がったよ。DとEとFの組み合わせで半分が女の子って、完全に終わってるじゃん。
 まあこうなったら仕方がない。俺がこいつらを引っ張って最強のチームにするしかないね。
「高木信一だ、よろしく!」
 俺たちはしっかりと手を握り合った。

 さて、チーム名を何にしよう。みんなで協議した結果「フェニックス」に決まった。なんだか中二病臭い気もしなくもないが、まあいいだろう。
 チームフェニックスが最初に取りかかったのは、街の周辺に現れるゴブリンの掃討だった。聞くところによると、大体のチームはそこから始めるらしい。まあ、あんなチンケな小人なんぞにやられる心配はないしね。
 街の外にある荒野に出ると、さっそくゴブリンの群れが現れた。こいつら、いつでもいるなあ。さて、一丁俺が……
 そう思った瞬間、ジェシカが地を蹴ってかっ飛んだ。
「たあーっ!」
 え、ええ?
 先頭のゴブリンに強烈な斬撃が降り注ぎ、一瞬で真っ二つにしてしまった。……あれ、この子強くね?
 驚いたのはゴブリンたちで、剣や手斧を振り回しながら大騒ぎしている。そこに幾筋もの閃光が走った。リンファンの投げたナイフだ。それは正確に彼らの体に突き刺さる。
「ギャアアアッ!」
「ウゲェェェ!」
 ゴブリンたちは泡を吹きながらこちらに向かって突進してきた。その前にエドワードが立ち塞がる。
「ごめんよ、君たち」
 彼は踏み込むと同時に電光のような突きを繰り出し、目の前のゴブリンを二体まとめて串刺しにした。再び彼らの悲鳴が上がる。
 なんだ、こいつらいけてるじゃん。心配することなかったよ。よし、最後は俺が飾らせてもらうか。
「死して屍、拾う者なし!」
 俺はフレア・バスタードを引き抜くなり、ゴブリンたちの間を一瞬で駆け抜けた。同時に横薙ぎの一閃を放っている。振り向くと、彼らは真っ二つに斬り裂かれて転がっていた。さあ、残るは三匹だ。
「おおおおっ!」
 バスタードを振りかざすと獄炎が噴き出し、魔物たちを取り囲んでいく。もう逃げ場はない。
「とどめだ!」
 渾身の力で斬りつけると真紅の閃光が走り、ゴブリンたちを見事に両断した。こっちのメンバーはかすり傷一つ負っていない。完全勝利だ。
「っしゃあああ! やったぜ!」
 俺たちは手を取り合って喜んだ。それにしても、こいつらの強さは一体……

 詳しく話を聞くと、ジェシカはフロリダ州にある高校のバスケ部のエースで運動神経は抜群らしい。リンファンは中国雑技団のメンバー、エドはフェンシングの達人だそうだ。お前ら、そういうことは先に言え!
「じゃあなんでランクがEとかFなんだよ! おかしいだろ」
 そうたずねると、エドが憤慨しながら答えた。
「いくら剣を使えたって、素手で狼と戦えっていうのは無理だよ」
 ジェシカも口をそろえる。
「そうだよ、いくらなんでも怖すぎるって。武器の一つも持ってれば話は別だけどね」
 ……なるほど、そういうことっすか。素手だと弱いのね、こいつら。まあ当たり前と言えば当たり前だけど。


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