第二話〜吹奏楽部へ!恋のはじまり?〜
話は少し戻って中学時代。
私と美咲は吹奏楽部だった。
当時からすでにナヨナヨしていた私は、気の強い美咲に引っ張られるように・・・
でも仲良くトランペットを担当してた。自画自賛だけど、そこそこ吹けてた。
そんな中学校での部活を引退した私を、同級生がバンドに誘った。
音楽に触れていられる・・・。そんな思いも手伝ってか、加入する事になる。
なんと3年の時、年末にギターセットを購入。思い切ったなぁ・・・私。
RayInDarkness
っていうバンド名も決まって、ギター少女(なんか文句ある?)への道を歩き始めた。
そんな私に、ひとつのチャンスが降ってきた。
音楽的なものじゃなくて、恋愛の方でね。
卒業式の日に後輩の女の子から告白された。
自分がゲイだと悩んでいた私は、
この娘と付き合えばゲイじゃない、女の子と恋愛できる男の子になれるんじゃないか?と思って付き合い始めた。
今にして思えば、彼女を利用しようとしたようにも見えるけど、本気でこの娘を好きになろうと思った。
そうして付き合いはじめた私に色々アドバイスしてくれたのは、やっぱり美咲だった。
初めて彼女とカラオケに行くと言った時には
流行に疎い私の為に女の子の好きそうな曲をリストアップしてくれた。
ほかにも色々と世話を焼こうとしてくれたんだけど・・・私には無理だった。
やっぱり女の子とは付き合えなかったのね。
友達ならいいんだけど、好きは好きなんだけど、恋愛っていう感情をもてなかった。
もう、本当に短い間だったけど・・・
女の子と付き合って、それで自分は【ゲイ】なんだと再認識した。
そんな状況で高校生としての日常が始まったんだけど、私の通ってた高校は全員、何かの部活をしなくちゃいけなかった。
美咲は入学してすぐに吹奏楽部に入部して、私を誘ってたんだけど・・・
バンド組んでた私には部活に充てる時間なんて無くてさ、担任の先生に相談したの。
そしたら、思ったよりあっさりOKされて・・・ちょっと拍子抜けしたのを覚えてる。
さあ、本格的にバンド活動だって思った矢先、ある事が発覚する。ってか思い出す。
さっきも触れたけど・・・やっぱり私、ギターが好きじゃなかった。
もっと早く気付けよってツッコミが入りそうだけど、好きになる努力はしたかった。 色んなものや人に触れたかったし、そうやって自分の幅を広げたかったのね。
でも、無理なものは無理だった。
こうしてバンドも脱退した私は、恋愛も、高校生活も、色々なモノが宙ぶらりん状態になった。
そんな私だったから、美咲も見かねて吹奏楽部に誘ったんだと思う。
まあ・・・入学した時から、かなり強引に勧誘されてたんだけどね。・・・主に美咲に。入部を断ってた理由がさ、
『ちょっと俺、バンドやるから無理。』
だったんだから、バンド辞めたとあっちゃぁ・・・多少強引にでも部室に引っ張っていかれるよね。
うん、でも・・・当時の私って、それだけじゃなくて、色んな意味で危なっかしく見えたんだろう。
嫌いなものが多すぎた。自分自身の事で。
濃くなっていく髭も、低くなっていく声も、男である事そのものへの嫌悪。
親からもらった【勇気】っていう男らしい名前も・・・私が男だと認識させられる全てが嫌だった。
その頃は男である事が嫌というより
【男の子を好きになってもおかしくない】
っていう理由で女の子になりたいんだ。そう思い込んでた。
【女の子になりたい】が、もっと根本的な部分で【私はきっと男じゃない】から来ているんだと気付くのは、もう少しだけ先のおはなし。
そんなこんなで5月のある日、私は吹奏楽部に入部することになる。
『もう!だから4月の時点で入部しろって言ったのに!』
そう言って私を叱ったのは、顔を合わせる度に私を吹奏楽部へと誘っていた美咲だ。
まあ・・・他にも何人かに同じような事を言われたんだけどね。
で、やっぱり私はトランペットのパートに配属。経験者でもあるし、特に問題も無い。
同じパートに、彼がいた。例の髪の長い彼の名前は、山本君というらしい。
さっきも言った通り、この時点では恋愛も何もない
ただの髪の長い、同じパートの同級生
でしかない。恋愛小説だとかドラマみたいに、そばにいるだけでドキドキしたり
正面からだと上手く話せなかったり、顔が赤くなったり・・・。
もう、いっさい無いの。
本当にただの同級生で部活仲間。それだけの関係で3年間を過ごすはずだったのね。
ただ、山本君とは帰る方向が同じだったから、途中まで一緒に帰ってた。
今日あったこと
部活でのこと
ちょっとした趣味のこと・・・
他愛の無い話をしながら、ほとんど毎日一緒に自転車で並んで帰ってた。
車を運転する人には邪魔だったんじゃないかな?ごめんね。
そんなこんなで山本君と下校。彼は別れ際の曲がり角でいつも
『じゃあなぁー。』
って言って、顔をくしゃっと歪ませて笑う。
この屈託の無い笑顔になんとなく好感をもったのが、今にして思えば恋の始まりだったかも知れない。
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