魔法少女は逃げ出した!
ザザザザザッ(効果音)ってリアルでそんな音がする訳がない。
しかし、逃げ出したのは確かだ。魔法少女は少年を脇に抱えて公園のマラソンコースを移動する。
『何で逃げるんですか?』
「馬鹿!流石にあそこは恥ずかしいだろ!」
真っ赤な顔の魔法少女。
『お話は?』
「移動してから聞く!」
魔法少女は人々の視線を一身に受けつつも、中央のでっかい池の周囲にあるマラソンコースをかけ足で半周する。
「あそこでいい!」
そう言うと、そこにあった公衆トイレの男子の方へと突入した。
「ひゃっ!」っと中で用を足していた若い男性が動揺してチャックを慌てて上げる。同時に「うぎゃぁ!」という男性の叫び声が上がる。
そんな男性を無視して、魔法少女は個室へと入った。
貴方は今は女ですよ?いいのですかここで?なんて、ナレーションなんて聞こえている訳がない。
と言うことで、少女は何も気にせずに個室の鍵を閉めた。
そして、洋便器蓋を閉めるとその上に少年をちょこんと置く。
『えっと…』
「よし、ここなら人は来ないだろ」
確かに個室に人は来ないだろうが…
『え、えっと…何故トイレなんでしょうか?』
「意味はない」
『は、はぁ?』
「という事で、そこに正座しろ」
腕組みをして魔法少女は少年へ命令した。
『へっ?』
少年は苦笑しつつ自分の下にある便器を見る。まさかここに?
「そう、お前が乗っているその便座の上に正座しろって言ってるんだ!」
『いや、言ってる意味がわかんないし…あはは!』
「笑ってんじゃねーよ!正座しろよ!ぶっ殺すぞ!」
『は、はいっ』
すごみを効かせた魔法少女。少年は震えながら便座の上に正座した。
「さて…俺がどうしてこんな姿にされて、あんな虫みたいなのと戦わされたのかを説明してもらおうか?」
少年は困り果てた表情をしている。
『ど、どこから説明をすれば?』
「最初から全部だよ!」
『ひぃぃ!』
少年は怯えている。
「早くしろよ!」
しかし、少年はまだ怯えている。
「おい…」
しかし、少年はまだ怯えている。…イラッ!
「お…お米チップス」
しかし、少年はまだ怯えて…「あーナレーションうざい!って言うか、このナレーションは自動なのかよ!」
このままじゃ駄目だと思った少女は聞き出す方法を変更した。
「じゃあ、俺が質問するから答えろ」
『えっ?』
「えっじゃねぇ!質問するからちゃんと答えろって言ってるんだよ!それくらい出来るだろ!」
『は、はい!頑張ります!』
「よし…じゃあまず、俺を魔法少女に選んだ理由は?」
『理由?』
「そう、理由だよ…」
『……』
少年は苦笑した。
「おい…まさか理由が無いとか言わないよな?」
魔法少女は手を胸の前で組むと【パキパキ】と指を鳴らす。
『あっ!あります!そう!あります!え、えっと…ある本を参考にしました!』
「本だと?俺が載ってる本なんてないだろ?」
魔法少女がそう言うと、少年はごそごそと何処からともなく一冊の本を取り出した。
「ちょ、ちょっと待て…」
それを見た少女は驚愕する。それはそうだ。その本は普通は人選参考にする為に使う本ではない。
「イ…イエローページだと?」
少年が取り出したのは日本語で電話帳だった。
『イエロー?あ、黄色いからそう言うんですか?』
「表紙に書いてあるだろ!ここだよ!ここにイエローページって書いてあるだろ!」
魔法少女は真っ赤な顔でイエローページの表紙をばんばんと叩く。
『あ、僕はこれが何て書いてあるか読めません』
笑顔で答える少年。いらっとする魔法少女。
「じゃあ、なんで俺と会話が出来るんだよ…」
『えっと…翻訳機がこの歯に…このはひないひょうされてはして』
そう言いながら少年は自分の歯を指さす。
「何を言ってるのかわからん!」
『あっ!えっと…翻訳機が歯に内蔵されているのです』
そう説明する笑顔の少年。少女は溜息をついた。
「お前はどこの近未来からやってきたんだ?」
『えっと?僕が何処から来たかですよね?そこはまだ未設定でして…』
「えっ?こ、こらっ!お前はアドリブって言葉を知らないのかよ!未設定ならアドリブを効かせろ!」
『えっ?あっ…ごめんなさい…』
つくづく呆れる魔法少女。とうか、未設定でいいのか作者よ。
「で?そのイエローページで何で俺が選ばれたんだ?」
『えっと…適当に開けて…女性らしい可愛い名前を探したら…』
「…俺の名前を見つけた?」
『はい』
「ほう…でも、お前は少女を捜していたんだよな?」
『はい!だからルナさんを選びました!』
「なる…ほど…」
『ルナって名前だし、まさか男性だとは思いませんでした』
「くっ…」
少女は頭を抱えた。
『月って書いてルナって読むなんて…なんて中二病な発想の名前なんでしょうね?あはは!』
本気で笑う少年。しかし少女は真っ赤な顔をしながらも我慢した。
「こ、ここは否定できない…怒れない…俺もそう思ってるんだ…しかし、俺の親は何でこんな名前を俺につけたんだ!」
がくっと肩を落とした少女の肩に手をぽんぽんと当てる少年。
『大丈夫ですよ…きっと良い事がありますから。気を落とさないで下さい』
少女の肩が震える。
『あ?もしかして僕ってすっごく良いこと言いました?感動しました?』
「…誰が感動するって?」
『えっ?』
「自分の名前を女と間違えられてこんな姿にされた時点で全然良い事が起こってねーじゃねーかよ!」
『ひぃぃ!』
殴られるかと思った少年は頭の上を両手で覆った。
しかし、少女は殴る寸前で手をとめた。
「くっ…名前は俺の親に責任があるからな…女と間違ったのは仕方…ない事にしてやる」
『そ、そうですよね?』
「けどな?そこを突っ込む前にな…」
どうやら、少女の怒るポイントが違ったらしい。
少女の背景に再び火の手が…(以下省略)
こんな場面で次回へ続く。
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