α「踊り狂う両目の光り」
時計は午後9時を迎える。暗闇に囲まれた高校のグラウンド、中心に黒い少年と、赤い少年の二人の青年がいた。
「はぁ……はぁ……!」
彼らは、ただこんな夜遅くに夜遊びをしている訳ではない。
闘っていたのだ。
「レグ……! 悪く思うなよ! 俺は、俺は、俺は……! 負ける訳にはいかないんだよッ!」
その黒い少年の体はもう限界であった。服は、火のような物で焼かれ、中から少年のたくましい、サッカー部や、水泳部のような鍛えられた体が見えていた。それは、赤い少年も同様であった。
そのため、二人の間には随分な距離があった。
しかし、黒い少年はまだあきらめていなかった。いや、あきらめる必要がなかった。なぜならば、彼は勝とうとすれば、いつでも勝てる保証があった。
赤い少年も、あきらめてはいない。目が左が燃え上がる炎のような赤色が光り、右は奇妙な紫が光っていた。夜の風一つもしない静かな学校のグラウンドからは彼の光った目は透き通るように輝いていた。
炎は消える気配がなく、彼の動きに合わせて棚引いていた。赤と紫色の目をした赤い少年が走り出すと、左の赤色の目が強く、強く、光り…
黒い少年は赤い少年に逃げるように、一気に走り出す。彼が勝つには距離をとる必要があったからだ。
『灼熱の赤色の左目!!』
その言葉を発した時、赤い目の少年の目からなんと、火、炎が出てきたのだ。その炎は赤い目の少年の手をグローブのようにからまって動く。
黒い少年はあっけをとられて、一瞬、呆然とする。
――しまった、調子にのりすぎた……!
彼は、出来るだけ、逃げようと、走って、赤い少年と同様、なんらかの呪文のような言葉を言おうとする。
『完……!!』
しかし、黒い少年は間に合わなかった。赤い少年は手に纏った炎をボール状にして、投げ……同時に煙り玉のような物を投げる。
すると、どうだろうか。煙玉のようなものは地面に落ちた同時に破裂して、粉塵のようなものが飛び交う。黒い少年は感づき、驚く。
――これは……!
その時、すでに遅し。
急に聞こえる爆発音。炎が粉塵に発火し、粉塵爆発を起こしたのだ。(※よい子はマネしちゃ駄目だぞ!)
赤い少年は、自分にも移った火を目に吸収し、爆発自体はまぬがれたが、爆風で飛ばされ。
彼は、地面に叩き付けられたが、受け身をとって、大けがはさけた。
「…………。開沌、お前の敗因は能力のスペックの違いで相手を舐めすぎた事にあるな」
黒焦げになった、黒い少年は「ぐっ……」と、荒息を出すだけで、動きはしなかった。
少年の上にはゲームのHPゲージのような物がでてきて、そこには「0/100」と書かれていた。
『勝者、振火 レグ《ふれび れぐ》。敗北者にはペナルティが課せられます。混田 開沌さん、ペナルティ……ペナルティ……』
「い……やだぁ……! レグ、助け……」
赤い少年こと、振火 レグは、複雑そうな顔をしながら、後ろを振り向いた。
「すまない……開沌」
彼の後ろに蒼い光が黒い少年、混田 開沌に降り注いだ。
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