◇日本シリーズ第6戦 巨人4−2楽天
7回裏1死一塁、嶋を遊ゴロ併殺打に打ち取りガッツポーズする菅野(佐藤哲紀撮影)
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今季、日本球界の誰もできなかった偉業を、菅野が成し遂げた。1度も負けていなかった田中に投げ勝つこと。しかも、負けたら終わりの崖っぷちの一戦でやってのけたのだから、なおすごい。
「正直、すごいシチュエーション、厳しいところを任されたなと思った。弱気で心が折れそうなときもあったけど、とにかく『自分を信じてやるしかない。ここで勝ったらヒーローだ』と言い聞かせて頑張った」
気迫を前面に押し出し、全力で腕を振った。序盤はそれが気負いにつながり、はっきりとしたボール球も多かった。これまで常に冷静なマウンドさばきを見せていた菅野には珍しい姿だった。
微妙なコントロールを欠いた影響は2回に出た。1死から枡田を四球で歩かせ、松井にはスライダーを右翼線に運ばれるエンタイトル二塁打。嶋は三ゴロに打ち取ったが、絶対に与えたくなかった先制点を許した。さらに、続く聖沢のゴロを一塁ロペスがまさかのトンネル。四球がきっかけで失点し、味方守備に足を引っ張られる最悪の展開で2点を失った。
それでも気持ちを切らさなかった。「味方が点を取ってくれると信じて投げた」。3、4回を三者凡退に抑えると、5回に逆転してくれた。「さらに気が引き締まったし、『これ以上点をやらない』と強い気持ちで投げた」。3試合連続で2桁安打していた楽天打線を7回まで3安打に封じ込め、リードを守った。
今季はレギュラーシーズンで6敗、日本シリーズで1敗したが、連敗は一度としてなかった。前田健(広島)と田中という両リーグを代表する右腕には初対戦で敗れ、2度目の対決でリベンジに成功。投げるたびに力をつけ、投手としてのすごみを増していった。
この日の7イニングの感想を問われ、「あっという間に終わっちゃった。ということは楽しかったのかな」と振り返った。なんとも末恐ろしいルーキーだ。 (小林孝一郎)
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